インポッシブル ツー 3
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
「お前、今、なんて言った?」
目出し帽兄貴が聞いてくる。俺様はポケットから仮面を出してつける。
「動くなっつってんだろ! 次は撃つ。その仮面を取れ。オメー、頭おかしいのか?」
「ふっ、断る。ヒーローは顔を隠すものだ」
「何がヒーローだ。このイカレヤローが。撃つぞ! いいんだな?」
「撃つ撃つ、うるさいなー。言う前に撃て。そうか撃てないのかチキンヤローがっ」
「ぶっ殺す!」
ガチン!
撃鉄が当たる音がする。
「なっ、何っ! 不発弾かっ! ついてる野郎だな。また、撃つぞ。脱いで命乞いしやがれ!」
兄貴の銃口が俺に向いている。無害だと思ってもなんか気分悪いな。あと、華さんの方もなんとかしないとな。
「脱げ脱げうるさい奴だな。あいにくだが俺は男の前で脱ぐ趣味は無い。お前が綺麗な女性だったら少しは考えてやるがな」
「ムカつく奴だな。それなら望み通り脳みそぶちまけろ」
俺は兄貴の銃口に人差し指を突っ込む。格好いいから一度やってみたいと思ってた。
銃を俺に向ける兄貴。手を銃の形にして銃口に指を入れてる俺。俺たちはお互いににらみ合い、辺りは水を打ったかのように静まり返る。
「銃を捨てろ。俺のハンドガンがお前をロックオンした」
「おいっ、なんのつもりだ?」
「こうやると銃が暴発するって漫画で言ってたのを思い出してな」
銃口って熱いのかと思ってたが、ケイシを撃ってから時間経ってるからか冷たい。これで兄貴の銃は無力化した。チョロいな。
「げひゃひゃひゃ! おめーバカかっ! 漫画なんか鵜呑みにしてんじゃねーよ。そんな事しても弾は飛び出すし、指はぐちゃぐちゃになるぜ!」
そうなのか? 漫画に欺されたのか?
ガチン!
兄貴はトリガーを引くが、乾いた音しかしない。ポンコツな銃だな。
「なんだと!? また不発弾? んな訳ねーな。壊れたのか?」
「いや、指を突っ込んだから、撃てないんだろう。試しにまだ撃ってみろよ」
「そんな訳ねーだろ。連続で不発弾なんかあり得ない。銃が壊れやがった。おい、おめーら、なんか変だ。女とじゃれてないで、コイツを撃ち殺せ!」
俺が指を離すのと兄貴が銃を捨てるのは同時だった。少し遅かったら、指が折れてたかもな。兄貴は僕に向かって鋭い蹴りを繰り出すが、そこには俺はいない。華さんたちの方へ向かおうとしてた。伸びた足が僕の前に差しだされてる。引っ張れって事か?
ガゴン!
兄貴は簡単に倒れ、床にしたたかに頭を打ち付けている。ザコなのか?
「あおっ! お前、何しやがった?」
何をしたもなにも、ほぼ自分でコケてるだろ。
「銃が壊れたって、兄貴ー、壊れにくいのがリボルバーのいいとこじゃねーんですか?」
「うるせー。ガラクタ掴まされたんだろう。あとで、文句言ってやる。ソイツはおかしい。早く撃ち殺せ」
頭を押さえながら兄貴はフラフラ立ち上がる。華さんから離れた子分二人が俺に銃口を向ける。よし、華さんから離れたな。
「あとで文句言う? 寝言は寝て言うんだな。お前らにあとは無い。仲良く一生ブタ箱に入るんだからな。頭悪い奴らだな。人質を盾にすれば少しは勝機があったのに。守る者がいない分、これからは本気を出せる」
二人に向かってゆっくりと歩を進める。
「人質もなにも、お前は丸腰だろ。撃つぞ、動くなっ」
子分Aが銃口を震わせながら上ずった声を出す。
「お前はヌーブか? プロは言う前に撃て。しっかり狙えよ」
俺は自分の仮面の額を差す。ヌーブ。新人とか素人とかいう意味のカッコいい言葉だ。いつか使いたいと思ってた。こいつら人を殺す覚悟が足りないな。俺はビルからダイブした時に、恐怖は克服した。
ズキューーーーン!
子分のトリガーが動いた瞬間に少し頭を横に動かしながら横を向く。
チィン。チュン、チュン、チュン。
「ぐぅおわーーーーっ!」
兄貴がうめき声を上げる。命中だ。
額を押されたような感触。金属の仮面を掠めた弾丸は跳弾となり、引っ張りハンティングして、見事に兄貴の足にめり込んだ。
「今のはケイシの痛みだ。思い知れ」
「なにっ!? 何が起こった?」
狼狽する子分たち。
「妖術か? 魔法か?」
ズキューーーーン!
また軽く横を向く。いい命中精度だ。兄貴よりこいつらの方が優秀だろ。
チュイーン。チュン。チュン。チュン。チュン。
「ごっはーーーーっ!」
子分Bが尻をおさえて倒れる。跳弾を尻にめり込ませてやった。これで、しばらく自分でうんこできない体になっただろう。
「これは、大便を粗相した。俺様の分!」
俺は拳を構え子分Aをぶん殴る。子分Aはビビって逃げようとしてたから、良く吹っ飛ぶ。大きなモーションを描き、頭から落ち動かなくなる。死んじゃいねーよな。
「そして、これは、お前らが恐怖を与えた。可憐な女子たちの分だっ! 悪は滅んだ。ミッション・コンプリート!」
危ねー。ポイント残り一桁。
ズキューーーーン!!
え、下半身が熱い。触れた手が真っ赤だ。
「なんじゃこりゃーーーーっ!」
僕は膝から崩れ落ちる。
「り、陸くん……」
華さんがこっちを見てる。お腹に手を当てて。そこから染みるように赤くなる。撃たれたのか?
「キャー」「イヤー」「おいっ!」「どうなってんだ!」
クラスメイトたちが叫びまくる。もう、危機は逃れたはず。、
「おめーも道連れだ……」
なんとか振り返ると倒れた兄貴の手には拳銃が。壊れてなかったのか?
バリン! ガシャン!
窓が割れる音。そして、ゴトゴトと何かが落ちる音。
ブッシューーーーッ!
射出音と共に視界が真っ白に染まる。平衡感覚がなくなって、顔に激痛がはしる。床にぶつけたのか……




