インポッシブル ワン 3
「そりゃなにからなんまで丸見えよ。ってそれはどうでもいいわね。陸、なんか臭わない?」
まじか、僕が着替えてたのも見られたのか……父さんにも見られた事ないのに。
僕はマスクを外す。この前は風で貼り付いてたけど、今回は何で貼り付いてたんだろうか? どうも汗でピタッとなってたっぽい。
忘れようとしてるのに、臭いって言わないで欲しい。
「うう、仕方ないじゃない。ちょっと出たんだから」
なんで猫にまで虐めらるんだよ。できるだけ思い出したくないのに。
「ちょっと? ちょっとじゃないわよね? 盛大にぶっ放してたわよね。まあ、それはいいから。あなたは感じないのね。臭う。確かにこれ、神気よ。あ、神気って神様のオーラ的なものね。間違いないわ。この事件には違う神がかかわってるわね」
「神様がいたって、うんこの神様?」
そう、多分、やっちまったのは神様のせいだ。
「そんな神、いないわよ、多分。まあ、けど、うんこの神様はいないけど、うんこのような神様はたくさんいるわ」
うんこのような神様? ビジュアルを考えるだけで、気分悪くなる。それにしても、やたらうんこを連呼する猫だなー。キミ、女の子だよね?
「それにしても、うんこのようなって、嫌な形の神様だね」
「形じゃなくて、心よ。心がうんこのような奴らがいるのよ」
心がうんこって、どぎたないって事?
「ああ、悪い神様って意味ね。じゃ、さっきのって神様がかかわってたって事?」
確かにケイシは悪党だ。けど、あんな考え無しな事するほど馬鹿じゃないはず。もしかして、悪い神様にそそのかされたのか?
「間違いなく神、悪神が関わってるけど、誰かはわかんないわ」
神様がいたって事は、間違いなくスパサラ関係だろう。誰かって事は心当たりあるって事だし。そもそも僕は神社仏閣には近づいてないし、当然、神様に知り合いなんかいない。もしかして、スパサラ、神社に糞でもしたんだろうか? 猫だし。
「もしかしてスパサラってなんか罰当たりな事したの?」
「ちょっと、訳わかんないわ。あたし、神よ。罰当たる方じゃなくて、与える方よ。まあ、あたしは慈愛の女神だからそんな事しないけど」
「んー、訳わかんないなー」
「そうね、簡単に平たく言うと、あたしには敵もいる。だから、あんたにちょっかい出してくる奴もいるから気をつけてって事よ。けど、あんた格好よかったわよ。女の子守るために四人もぶっ倒すなんて」
四人? 適当だなー。一人は逃げたよ。
「いや、僕は何もしてないよ」
謙遜じゃなく、何もしてないのに、勝手に転んだりして、勝手に怪我してた。
「んーん、それがあなたの力よ。運も実力のうちって言うでしょ。運じゃなくてうんこ漏らしてたけど」
「もう、その話、止めようよ。スパサラもバラムツ食べる?」
「やーよ。勝手にうんこ漏らす魚とかシャレにならないわ」
「ほら、漏らしたっていっても全く僕悪くないじゃん」
「あんたが悪いなんて一言も言ってないわよ。だから、格好よかったって。スーパー状態になったあんたはほぼ無敵よ。全ての物事があなたの味方してくれるわ。けど、ポイントの残量は気をつけるのよ。あんなに酷い目にあったのに、あと150ポイントしかないわよ」
忘れてたけど、カウンターを見ると152しかない。一時期かなり増えたのに……いつも不幸な僕が更に不幸になったら何が起きるかわかんないから、変身は最低限にしないと。
「それより、あんた、さっきの女の子も多分惚れたわね。好きじゃない男の前でパンツ脱いだりはしないからさ」
好き嫌いの前に普通人はパンツ脱がないと思う。華さんって元気なだけの普通の女の子だと思ってたけど、もしかしたら少し変わってるのかも。
「いや、そんな訳ないよ。僕は男と見られてないんだよ。多分……」
僕は大きくないし、貧弱だから女の子と間違われる事もある。だから、同性のようなものと思われてたのかも。
「何言ってるのよ。パパのパンツと洗濯しないでって言うお年頃の娘が、あんたの漏らしたパンツを洗ってくれるのよ。好きに決まってるじゃん」
「ええ、そうなのかなー」
「男の子がモジモジしない! それより、あんたもうすぐ授業でしょ。どうすんの」
「んー、どうするも何も、パンツ無いし帰ってまた来ようかなー」
「バカな事言ってんじゃないわよ。あんた成績悪いんだから、授業は少しでも出なさいよ。しょうがないわねー。神であるあたしがあんたのパンツ家からとってきてあげるわよ。感謝しなさい」
なんで、僕の成績知ってるの? もしかしてストーカー?
「えー、ノーパンで授業受けるの? やだよ。それに一旦シャワー浴びたいし」
「贅沢言ってんじゃないわよ。ほら、とっとと教室に戻る」
スパサラは器用にドアを開けると出て行く。なんか気が乗らないけど、出るか授業。
「手を上げろ!」
教室に戻り、扉を開けると、ゴツイ男が立っていた。新しい先生? そんな訳ない。ミリタリーな服に多分防弾ジャケット。目出し帽で僕に手を向けてる。拳銃? 玩具? それが僕のおでこに当てられる。ひんやり冷たい。
「ひぃっ」
口から変な声が漏れて、即座に両手を上げていた。
インポッシブル・ワン クリア!
インポッシブル・ツー スタート!




