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 インポッシブル ワン 1


「おい、何やってんだよ。お前もこいよ犯罪者」


 金髪が僕の腕を引いて連れていく。『1Pアップ』視界の隅のカウンターの横に文字がポップして数字が上がる。犯罪者呼ばわりで、幸運が一溜まったのか。

 僕が犯罪者と呼ばれてるのは、最近捕まった凶悪婦女暴行犯と僕が『宮野みやの りく』という同姓同名だったからだ。相変わらずツイてない。

 うう、こいつらとはできるだけ関わりたくないのに……

 金髪の名前はケイシ。いつも僕に絡んでくる。コイツらは自由で、今は数人集まって机の上で刺身を食べてる。学校で何やってんだ? 頭大丈夫なのか?


「コイツら根性ないから、食わねーんだよ陸ちゃーん。お前の格好いいとこ見せてくれよ」


 机の上には皿に乗った刺身。赤い身と白い身。マグロ、脂が乗ったマグロに見える。


「ちょっとー、あんたたちなにやってんのよ」


 有名女子高生配信者のはなさんが腰に手を当ててケイシを睨み上げている。


「関係ねーだろ。お前はひっこんでろ。俺は陸ちゃんにご馳走してやってんだぜ」


「虐めてる訳じゃないの?」


「虐めるわけねーだろ。ていうかのその逆だろ」


「ならいいけど、あんたら変な事ほどほどにしときなさいよ」


「うっせーよ。陸、これ通販で買った大トロと白トロだ。こいつら貧乏舌で食いたくねーんだってよ」


 とか言いながらケイシは箸で赤いトロと白いトロを一切れづつ食べる。トロってマグロだよね。白トロってなんだろう。白いマグロなんて聞いた事がない。


「うんめーっ。おら、あとはお前にやるよ。食え、さっさと食え休み時間終わるだろ」


 訳がわからない。なんで休み時間に刺身食わないといかんのか? けど、ここで断ったら面倒くさそう。ケイシが食べたから毒じゃないはず。さすがに人に毒を食わせたら警察ざたになるはず。ケイシが使った箸って、なんかやだけど、ツッコむとうるさいから諦めて手にしてトロに醤油をつけて食べる。なにこれ、うまっ。口の中で溶ける。なんでケイシの取り巻きたちはこれ食べなかったんだろう? 


「おら、急いで食えよ」


「あ、うん、ありがとう」


 いつもは拷問のような事してくるのに今日はどうしたんだろう。この前なんて、ジンジャーエールって言われて、ペットボトルに入ったおしっこ飲まされそうになった。臭いでわかってなんとか助かったけど。

 もしかしてケイシ、改心していい人に生まれ変わったのか?

 次は白トロを口に入れる。なんだコレ、あっま。甘くて口の中でとろける。こんな美味しいお刺身初めて食べた。『30Pアップ』え、なんで?


「全部食えよ」


「う、うん。いいの?」


「いいから食えよ!」


 美味しいから残りも美味しくいただいた。なぜか取り巻きは、そしてケイシもニヤニヤ笑っている。ポイントがどんどん上がるし、なんか怪しいけどケイシも食べたし、変な味もしなかったし。

 チャイムが鳴り僕らは席につき授業が始まった。


 ◇◇◇◇◇


 昼休み、学食でご飯を食べた後に、またケイシたちに捕まって、隣の倉庫に引っ張られて行く。『10Pアップ』なんか全員ニヤニヤしてて気持ち悪い。さっきから体調が良くない。なんかお腹に違和感がある。


「お前体調大丈夫か?」


 え、ケイシが僕の心配? 天変地異の前触れなのか?


「お前が食ったのはバラムツなんだよ。バラムツって魚の脂は人間には消化でねーから、オートでうんこ漏らす魚なんだよ」


 バラムツ、ネットでみた事がある。なんかろうそくの蝋のような脂が多い魚で、食べたら無意識にうんこを漏らすというヤバすぎる魚だ。それをみた時に真っ先にケイシたちに食べさせたいと思ってたけど、まさか僕が食べる事になるとは……けど、その魚って毒なんじゃないのか? 犯罪じゃないのか? 


「ほらほら、出せよ。出したいんだろ」


 取り巻きの一人が僕の腹を押してくる。


「ううっ」


 お腹は痛くないのになんかシクシクする。ヤバい。これは前兆だ。間違いなくなんか出そうだ。


バタン!


 扉が開いて誰か入ってきた。女の子。


「あんたたちなにやってんのよ」


 華さんだ。勇気あるな。部屋の中は僕以外ケイシを含めて四人。身の危険を感じないんだろうか? 


「おい、いいとこ来たな。お前最近調子のりすぎだろ。そうだ。生配信しよーぜ。美少女配信者とうんこ漏らした陰キャのファック。こりゃバズりまくるぜ」


 はぁ? 何言ってるんだ。こいつ本気か? さすがにそんな事したら犯罪者だよ。

 取り巻き二人が華さんの両腕を押さえている。


「ちょっ……」


 一人が華さんの口を押さえる。


「うぐっ」


 後ろから誰かが抱きついてくる。両腕が動かない。ケイシがニヤニヤしながら僕の前に立つ。

 

「ほらほら、出しちまいなよー」


 ボコッ!


「うぐぅ」


 僕は激痛で前のめりになる。殴りやがった。モロにみぞおちに入った。痛い。痛い。涙がでてくる。泣いてたまるか。『50Pアップ』


 ぷっ。ぴぴぴぴーーーーっ!


 出た。出てしまった。『300Pアップ』


「くっせー。くっせー。コイツうんこ漏らしやがった」


 ケイシが鼻を摘まむジェスチャーしてる。なんで、なんでこんな目に。コイツらだけならまだしも、華さんもいるのに。


「ほーら、陸ちゃーん。お漏らししちゃダメでちゅよー。おしめかえましゃーねー」


 ケイシが僕のズボンを脱がそうとする。抵抗するけどコイツらに力で僕は敵わない。嫌だ。見られたくない。見られるくらいなら死んだ方がマシだ。





【インポッシブル・ワン! 可愛い女の子に泣きながらうんこ漏らしたのを曝されそうになる。しかもこのあと公開無修正エロ生配信が待ってる。ここから人生どう逆転するのか!?】



 

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