ヒロインエピソードSS 欲望のペン
「フッフッフッ。ついにこの時がきた。日頃の恨み晴らしてくれる!」
僕はつい呟いてしまう。ここはうちのリビング。叔父さんは仕事、叔母さんは買い物。そして、義妹の桃はリビングのソファで、ヨダレが垂れるか垂れないか溜めたまま寝汚くクークー言ってる。桃はテコンドーの練習でめっちゃ疲れたって言ってた。これは多分しばらく起きない。奴は事あるごとに僕にローキックを放ってくる。たまには金蹴りすら織り交ぜてくる。僕がコツカケのプロフェッショナルじゃなかったら多分数回は潰れてたはずだ。
僕の手にはカオスとのバトルの戦利品、『欲望のペン』が握られている。この神器は強力なのか微妙なのかなんとも言い難い力があり、これで対象に漢字一文字書くと、その欲望が増幅されるという力がある。そのエネルギーはカタルシスによるもの。僕がなんか達成感とかで『やったー』とか思ったり、これで文字を書かれた人が欲望を達成して『おっしゃー』ってなった時にその喜びの心の一部を吸収して力にしてるそうだ。さらにその一部がカルマに流れ込んでその力にもなってるってカルマが言ってた。あんまり使い過ぎると、またカルマが妖怪から神に格上げされる恐れがあるから使用は最低限に控えている。
クックックッ、なんて書こうかなー。
『愛』
それは無しだな。確かに桃は可愛い。遠縁とは言え僕とは大違いだ。いや、ラッキーマックスメイクをした僕のジャンヌには劣る。それはおいといて、コイツの愛情表現は暴力だと思われる。多分、『アイラブユーキック』とかいってローキックの連打から止めに金的くらうだけだろう。なんかいつも、痛みにのたうちまわる僕を見る目が慈愛に包まれているのが不気味だ。
『恋』
多分これもローキック……
『性』
これもローキックだろう。金的連打という恐ろしい未来が見える。タマヒュンものだ。
「ううん」
げっ、ヤバ。明らかに奴の眠りが浅くなってる。考えろ。なんか桃を辱める事が出来る漢字一文字!!
あ、目が開きそう。にしても睫毛長いなー。て、どうでもいい。取り敢えず書け!
「おい、てめー、何見てんだよ。お前、あたしの頭、触らなかったか? 夢で、お前があたしの額にチューしてて、キモっ」
桃は立ち上がる。やば、これはローキックのパターンだ。
ブッ!
大きな破裂音。桃からだ。その顔が一瞬で朱に染まる。あ、可愛い。この顔を見られただけで満足だ。
「桃さん、今のもしかして、おならですかー? 女の子なのにはしたない」
桃の額には『屁』の一文字。時間がなくてそれくらいしか思いつかなかった。
「もしかして、テメー『ブッ』」
「あ、おかわりですかぁ? トイレ行ったがいいんじゃないですかぁ?」
桃はズカズカと歩き去る。
「あー!! クソ兄貴! ブッコロス!」
あ、鏡を見に行ったのね。
「ブッで殺すのですかぁ。確かに笑い死にしそうだよ。ばーか!」
ああ、すっきりした。ざまぁ完了だ。では逃げるか。
そして、しばらく後には捕まってボコボコにされたけど、僕の心は晴れやかだった。
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