表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

 インポッシブル ゼロ 3


「インポータント・インポッシブル」


 実験だ。とりあえず言ってみた。ああ、体に力がみなぎる。最高だ。全能感に包まれる。癖になりそう。


「おいっ! あんたなに無駄遣いしてんのよ!」


 けど、ほんとにそんなに運が良くなるのか? そうだ、裸の美少女でも目の前を通り過ぎたりしねーかなー。


「うるさい黒猫だな。猫じゃなくて、美少女だったらハッピーなのに」 


「ばっ、ばかっ。やばっ。変化の術が……」


 キモい猫だな。でっかくなって、でっかくなって……おっぱーい?


「あっち向いてなさいっ!」

 

 無理やり裸の美少女に頭を掴まれて後ろを向かされる。ラッキー!! 今、すっげーもの見えたぞ。最高だ!


「無駄遣いすんじゃないわよ! すぐ解除しなさい!」


「お、ああ。ミッション・コンプリート」


 浮かんでる数字が70幾つまで減ってた。減るのめっちゃ早いな。


「もうこっち見ていいわよ」


 振り返ると黒猫に戻ってる。残念。


「さっきのプリンプリンの美少女はどこ行ったの?」


「忘れなさい。思い出したらぶん殴る」


「わかった忘れるから。で、どういう事?」


「あっちがあたしの本体よ。目立つのやだから猫になってんの。ついてる状態ってねー、考えてる事が都合よく叶ったりするのよ。今、たまたまあたしの魔法がキャンセルされる条件を満たしたから戻ったのよ。あんた女の子の裸見たいとか思ったでしょ。むっつりか」


「しゃべる猫の方が目立つんじゃ?」


「大丈夫、阻害が効いてるから他の人には、あたしがにゃーにゃー言ってるようにしか聞こえないわ」


 それならもしかして僕って猫と話しているヤバい人? いや、猫好きな人はよく話しかけてるから大丈夫なはず。それかスマホをスピーカーにしてる人にも見える。

 けど、多分、さっきの僕の力は本物だ。死のうとまで思ってたのが、美少女を助けて、美少女の裸を見てそれどころじゃなくなった。多分変わる。僕の世界が。あ、そういえば。


「さっきの女の子大丈夫かなー。自殺してた訳だし」


「わかったわ。あたしがあいつがまた変な事しないか見張っとくわ。あんたはとりあえず家に帰りなさい。もう、力は使わないでね。またポイント溜めないと。あとで、家に行くから待ってなさい」


「うん、そうするよ」


 黒猫は走って去り、僕は家に帰る事にした。


 ◇◇◇◇◇


 コンコンッ。


 窓を何かが叩いている。僕は自分の部屋で宿題してたとこだ。カーテンを開けると黒猫が屋根の上にいる。窓を開けると入ってこようとする。


「待てよ。土足厳禁だよ」


「かー、細かい男だな。モテない訳だよ」


 僕は猫の足を準備してた濡れたタオルでふく。


「さっきの娘だけど、なんかぼーっとしてたけど家に帰ったわよ。多分大丈夫よ」


「良かった。それで、聞きたいけど、君の目的はなんなの?」


 ずっと疑問に思ってた事を口にする。


「んー、まだ言えないわね。当面の目的は、あんたに楽しく暮らしてもらう事よ。あと、心身共にもっと強くなってもらうわ。ビルの上から飛び降りたいって思わないくらいにね」


 心身共に強くはなってはいないけど、もう死にたいとは思わない。この黒猫がの目的はわかんないけど、悪い事じゃないとは思う。


「あと、ラックカウンター出しとくから、いつもは消しとくけど、ポイントが溜まった時とあんたが見たい時は出るようにしとくから」


 視界の右上くらいに青い数字が見える71だ。


「あ、あたしとあんたにしか見えないから安心して。消えろって念じたら消えるから」


 うん、消えた。要はこの数字の分、僕は強運状態になれるって事か。


「さっきさ、落ちてる時と、その後じゃ減ってるポイントが違う気がするんだけど」


「そりゃあんた、発現した奇跡の度合いで減り方も違うわよ」


 そうなのか。じゃ、予測して使う事は出来ないって事ね。その使う時の危機状況と減り方を見てコントロールするしかないって事か。


 ここは僕の部屋だけど、面倒見てもらってる身だ。この猫ちゃんをどうしよう。出来れば家で飼いたい。


「ねぇ、スパサラはどこに住んでるの?」


「はぁ、うっさいわねー。あたしはノラよノラ」


 なんで怒るんだろう。なんか気に障る事言ったかなー。


「それなら家に住まない? 僕は居候のようなものだから隠れて過ごしてもらう事にはなるけど」


「えっ、いいの? 良かったーあんたを選んで。あたしの社が無くなってからずっとホームレスだったのよ。けど、あたしが可愛いからって変な事したら容赦しないわよ」


 何言ってるんだろう。スパサラは可愛いけど、さすがに猫は恋愛対象じゃない。あ、そういえば、スパサラは変身してて正体は美少女だった……


「なに赤くなってんのよ。あんた、思い出したわね。忘れろって言ったでしょ。ま、さっきみたいな不幸はそうそう無いから大丈夫よ。それに、あたしって有能だから姿を消す事もできるのよ。今だってあんたにしか見えないわ」

  

 えっ、まじか。それが本当なら問題なさそうだ。


「じゃ、これからよろしくね。ま、おいおいいろいろ説明していくから」


 そして、僕は家に猫さまをお迎えした。僕にとって幸運の招き猫なのか、それとも不幸の黒猫なのか。ただ一つ確かなのは、これから毎日モフモフを楽しめるという事だ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ