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 インポッシブル・フォー 4


 時は数時間前に遡る。



「ただいまー」


 なんとか家に帰りついた。これでやっとジャンヌから陸に戻れる。ゲッ! 玄関で嫌な奴に鉢合わせた。実用重視じゃないブーツが脱げなくて辟易してるとこ、後ろから足音。

 げげっ、ピンクボブのギャル。一個下の僕の義理の妹のももだ。僕は両親が居ないから遠縁の叔父さんの家の養子になってる。叔父さんは父さんの従兄弟だ。桃は幼い頃からテコンドーやっててやたら強く僕の天敵だ。普通血が繋がってない義妹ってエロゲームや小説ではメインヒロインだったりするが、それはないない。幼い頃から僕はずっと妹に虐げられてきた。新しい技を手にいれる度に実験台にされ、今でも桃がそばにいる時には股間を守る条件反射が形成されてしまってる。一度酷い目にあったからね。


「なんだよ。クソ兄貴。遅ぇじゃねーのかよ……え、あんた誰? もしかして兄貴の彼女? んな訳ねーか。あのインポホモヤローにこんな可愛い彼女なんかいる訳ねーか」


「僕は、インポでもホモでもないよ」

 

「え、クソ兄貴の声? もしかして兄貴?」


 ククッ。驚いとる。驚いとる。間抜けな表情してるなー。まあ、これだけで女装せざるを得なくなった元を取った気分だ。


 トゴッ!


「ぐえっ」


 即座に回し蹴りが僕の脇腹に刺さる。


「うん、この感触はクソ兄貴」


 蹴った感触で人を識別するんじゃねーよ。顔は可愛いのに凶暴過ぎる。


「ケヒヒヒヒヒッ。とうとう兄貴、あんまモテないからゲイロードに走ったのかよ。ウケる。死ぬー」


 桃は靴を履いて玄関から出て行った。僕はうずくまって動けない。いい蹴り過ぎるぜ。けど、うずくまってる人の隣をミニスカで通るんじゃねーよ。黒。黒だった。それよりも、い、息が出来ない……

 這ってリビングまで行くと、ソファに黒い縫いぐるみが座ってる。とぼけた顔の黒い熊。あいつの名前は確か『くまもん』。都道府県ゆるキャラの王者で、人を超えた敏捷性を持つという。うちの妹の大好物だ。ちなみに僕は苦悶中。くまもんと苦悶って一字違いだな。

 多分桃のだろう。八つ当たりに腹パンくれてやる。ん、カサって音がした。なんか入ってる。上から撫で撫でしてみると、綿の中にキュッキュとした感触の袋みたいなものが入ってる。片栗粉が入った袋みたいだな。頭に刑事ドラマとかでヌイの中に麻薬の袋が入ってるのを思い浮かべる。まさかな。確かに桃はDQNのような奴らとつるんでるけど、さすがにそれはないない。

 着替える前にコーヒーを入れて飲む。なんかお腹丸出しだから冷えてきたから。

 叔父さん叔母さんをこの格好で驚かすのも面白そうだな。その前にせっかくだから幾つか自撮りしとこ。くまもんを抱っこして極上に可愛い写真を何枚か撮った。あとついでに、アイドルの曲に合わせて踊ってるのも撮る。まあ、この衣裳はクリーニングに出して返すし、お風呂でメイクを取ったら二度とジャンヌになる事は無いからね。最後の決めポがと途中のキレがイマイチだな。もう少し動きを大きくしないと。


「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ」


 もっと腕の振りを大きく!


「あんた、ナニシテルノ?」


 げっ、黒猫のスパサラ。冷たい声。なんか恥ずかしい。けど、さすがだよ。僕を一発で認証した。


「ちょっと色々あってね」


「色々あったら女の子になるの? 相変わらずファンキーな生活してるみたいね。で、あたしが身を粉にしてカルマの動向を探ってるのに、あんた何してんのよ」


 何怒ってんだよ。


「え、じゃ一緒に踊る?」


 うん、猫ちゃんも一緒に踊ってたら絶対バズる。僕もアイドルになれるかも。って僕はどこに行こうとしてるんだよ。


「躍るわけないでしょ! もうっ。手伝ってくれないなら、少しは大人しくしててよ。あんたに何かあったらあたしが困るのよ。あんたの代わりなんか居ないんだから」


 あ、今、少しキュンってなった。僕には僕を必要としてる人? がいる。そんな事言われたのは初めてだ。

そりゃ僕だって大人しくしてたいよ。巻きこまれてるだけだ。


「何ウルウルしてんのよ。あんたほどの不幸体質はそうそう居ないって事よ。勘違いしないでよ。って、何してんのよ抱き着かないで、スリスリしないでー」


 我慢できず猫成分を吸収する。うん、モフモフスベスベ。このまま布団に引きずり込みたい。



 ピンポーン。


 誰だ? 宅急便か? しょうがないな。せっかく猫してるとこなのに。スパサラを放すと一目散に逃げてった。シャイな猫だな。僕はさすがにエロコスプレは恥ずかしいので、マントを巻いて玄関に行く。


「あの、お姉さん誰ですか?」


 玄関には派手な女の子。赤い髪。見た事ある。桃の友達だ。


「桃の姉ですぅ♡」


 うう、まだジャンヌ続行だよ。


「家の人ですね。桃がくまもん持って帰ってきてないですか?」


「んー、有るわよ」


「それ、貰っていいですか? 勝手に桃が持ってきて大変な事になってるんです」


 桃、くまもんは盗品なのか?


「もってきてもいいけどぉ。桃に聞かないとわかんないわ。ちょっと待ってて」


 桃にスマホしたけど、どうやら圏外っぽい。充電切れたのか?


「時間無いんです。桃に電話したんですか。出れるわけないですよ。早くくまもん下さい」


 なんでそんなにくまもんが欲しいのか? ゆるキャラ好きなのか?


「だけどぉ。桃に聞かないとー」


「その、桃が拉致られてるんですよ。早く早く持ってきてください」


「はいっ?」


 拉致、拉致って今言ったよね? なに家から出て数十分で拉致られてんだ? 僕なのか? 不幸なのか? 血はほぼ繋がってないのに家族だからか?

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