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 インポッシブル フォー 1


【インポッシブル・アペタイザー(前菜) アーケード内に全裸で放り出された! 人間としての尊厳を失わず、且つ警察に捕まる事なく無事に帰宅出来るのか? 捕まると退学になっちゃうぞ!!】



「これ、だれのかわかんないのか?」


「とりあえず開けてみるか」


 闇の中、男たちの声がする。良かった。助かった。さすがに長時間縮こまってるとしんどい。何も見えない中、ラックカウンターが地味に上がっていってるのがムカついた。328ポイント。命がかかってないからか、貯まりが悪いなー。


 ガチャ。


 やっとトランクが開いた。待ち望んだ光が見える。眩しい。

『400ポイントアップ』

 え、400ポイント?


「助け……」


「うわ、人入ってたぞ!」

 

「全裸だ、全裸! 変態だ!」


 僕が助けを求めるより早く男たちが騒ぎ始める。まず目に入ったのは天井。あ、アーケードだ。見覚えがあるハンバーガーショップが視界に入る。げっ、という事はここは市街地のド真ん中。ド真ん中にあるホテルの前。とりあえず目と股間に手を当てて立ち上がる。これはやるしかない。やりたくないけど、魔法の言葉か呪詛なのかわからないあの言葉を紡ぐ。


「インポータント・インポッシブル!!」


 嫌な言葉だ。だってインポ二連打だよ。めっちゃEDの人みたいだ。確かにブツは小さいけど、ちゃんと使用可だ。

 体に力が漲る。万能。俺様は今無敵だ! 見せてやるぜ華麗な逆転劇!



 時は遡る二時間前。


 僕は今日も鳥の糞の集中攻撃をくらい、馴染みの銭湯へとやってきた。なんとここのコインロッカーには着替え一式置いている。そして風呂を楽しみ、洗い髪をドライヤーで乾かしてる時に事件が起こった。


 ジリリリリリリリッ!


 火災警報だ。


「火事だ、火事だ!」


 誰かが騒いでる。まずい、火事、不運な僕は巻き込まれたら死ぬ。巻き込まれなくても死ぬ。慌てて裸足で外に出ると、店員さんがめっちゃ謝ってる。


「すみません、子供のイタズラでした」


 なんだよ。ひどいなー。慌てて銭湯から出てきた人達が帰って行く。裸なのは僕だけだよ。もっと落ち着かないとね。


 ゴウッ!


 音がするほどの強風。目になんか入りそうになって顔を覆ったら、腰に巻いてたタオルが吹っ飛んでった。やば、飛び過ぎだろタオル。


「でさー」


「やーねー」


 なんと、女子高生の人グループがこっちに向かってる。なんか隠れるもの隠れるもの。あった。空いたトランク。僕は小さいし体が柔らかいからあれの影に隠れれば凌げるだろう。トランクにかけより中に身を踊らせたら焦ってたからか勢い余って横に倒れる。


 がちゃり!


 え、閉まった。動いても動いても開かない。しかも丸まってるから顎が固定されて声も出せない。体を震わせて存在をアピールしようとするが、少ししたらバテた。僕は頭脳系だから体力は皆無だ。


「おい、忘れ物だぞ」


「なんだよ。重いな。何はいってんだ?」


 抱えられて移動させられてる。けど、体力を使い過ぎて動けない。この振動、バスの中か? そう言えば外国人観光客っぽい一団がいたからその荷物も間違えられたのかも? 

 やるべきか? いや、このまま待ってたら大丈夫だろう。多分ホテルで開けられて助けて貰える。しっかり話をしたら状況を理解して貰えるだろう。そう思ってたが甘かった。僕は僕の不幸を舐めすぎてた……



「さーてどうしようかな?」


 仮面がないのは寂しいな。一瞬両手の親指と人差し指で輪をつくってひっくり返して顔に当てて、手を仮面にしようかと思ったけど止める。それしたら下が丸見えだ。人々が遠巻きに見ている。やば、スマホでも撮られている。なんとか着衣を手にしなければ。アーケードの真ん中にステージがある。その脇にテント。うん、あれって多分控室代わりのものだろう。あそこには服がある。


「風よ我が意に従え!」


 群衆の間を風に乗り駆け抜ける。今までで最速だろう。もはや俺は幸運使いと言うより風使いと言っても過言じゃないんでは? テントの中に入る。多分一般市民には一瞬風でテントが捲れたくらいにしか見えなかっただろう。


「消えた?」「どこだ?」「そばに居るはず?」「妖怪?」


 外からどよめきが聞こえる。なんとか窮地は脱したな。あとはここからどうやって帰るかだな。テントの中は無人。さすが俺様。いつでもタイミングバッチリだ。なんかやたら香水のような甘い香りがするな。お、服がある。げ、女もの。


「しおりちゃーん。準備できたー?」


 げっ、誰か入ってこようとしてる。ここは『しおり』という人が着替えようとしてたのか? また『しおり』か? 金持ち眼鏡の志織とは別人だよな? とにかく、今の状況はすこぶるよくない。これじゃ俺は女子更衣室に全裸で入った変態でしかない。とりあえず、返事するか。声を裏返す。


「えー、まだー。まってよぉ♡」


「何、キャラじゃない甘い声出してんのよ。なんかあったみたいだけど、押してるから急いで」


「はーい♡」


 よし、さすが俺様。初めてやったが、アイドルボイスも完璧だな。しょうがない。着るしかないか。


 水着……


 ビキニ……


 終わったな……



 

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