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 フルムーン・インサニティ 4


「頼む。娘の命だけは助けてくれ」


 豪華なリビングに縛られて転がってるイケオジ。志織パパかな? その横には髪が長いから多分女の人、志織ママかな? が縛られて転がってる。俺は扉の隙間から中をうかがってる。


「だから、それはお前次第だって言ってんだよ」


 白いマスク。確かあれってアイスホッケーのキーパーがしてるマスク。なんかマスクかぶりでやだなー。そのホッケーマスクは、口にガムテープで後ろ手に縛られた志織にサバイバルナイフを首にあてている。その足下にはなんかの破片。さっきの割れた音はそれか。まじか、さっきから十数秒しか経ってないんじゃないか? プロだ。間違いなくプロだ。部屋に入った志織の口にガムテープを貼り、瞬間で縛る。かなり練習しないと無理だ。あと、壁際にホッケーマスクが二人。なんか壁についた額縁がついた扉の中の金庫をいじってる。まじか、あれって金持ちの家にあるという絵の裏に隠された金庫だよな。こんなベタな事する人いるんだな。


 バルコニーへのガラス戸が空いていて、強風でカーテンが暴れている。外に縄ばしごみたいなのが見えるな。ホッケーマスクたちは外から入って来たのか。強盗って奴か? しょぼいなー。拳銃を持ったテロリストの次がナイフ持った強盗……もしかして箸休めなのか? 


「おら、早く言わねーと。かわいいお嬢ちゃんが、ミンチに変わっちまうぞ」


 志織を脅してる男が、荒々しく髪をつかんでバルコニーへと引っ張っていく。それの一割、特にデカいとこは俺のもんだ。手荒く扱うな!


「わかった。コードは6427だ」


「残念でしたー。遅すぎましたー。はいバンジー」


 男はナイフを捨て、志織を軽々を持ち上げると、躊躇いなくフェンスの外に押しだしやがった。くそヤロー!


「志織ーーーーっ!」


 叫ぶイケオジの隣を駆け抜ける。


「インポータント・インポッシブル! 待てー! 俺のおっぱい!」


 力が解放された状態からさらに解放する。心の叫びが漏れちまった。バルコニーの床を蹴って宙に躍り出る。もう落下は超越してる。風を操り加速しながら、志織を風で受け止め、追いついて、手の拘束を外し、ゆっくりとガムテープを外してやる。志織はぎゅっと目を閉じてる。そしてお姫様抱っこして風に乗り上昇する。


「え、なに、なにが起こってるの」


「また、拾ったから更に一割だな」


「え、陸くん? 夢?」


 志織がぎゅーっとしがみついてくる。柔らかすぎる!! けど、至福の時間はここまでだ。バルコニーに戻り着地して、志織を床に降ろす。


「はぁ? なんなんだー?」


 志織を放り投げた外道はナイフを拾いバルコニーから部屋に戻ると、イケオジにナイフを向ける。ほう、中々の胆力だな。あとの二人もナイフを手に、一人は俺を牽制、もう一人は床に伸びてるオバにナイフを向けている。


「来るな! 来たらコイツらをぶっ殺す」


 んー、なんか飛び道具になるものないかなー。あ、汁粉。まあ、これでいいか。


「ぶっ殺す? それはお前らも殺される覚悟があるって事だよな。てめーらは俺を怒らせた! 食らえ! シルコスプラッシュ!」


 風の加速を得て、高速で缶を開けた汁粉をぶちまける。それはものの見事に風で三分割され、男共の顔に命中する。そのホッケーマスクが仇になったな。


「うがっ!」「うごっ!」「げぼっ!」


 男共はナイフを放り出し、マスクを外そうと悶える事しばし、力尽き動かなくなる。マスクの呼吸口から入った汁粉が気管を塞いだんだろう。けど、さすがに殺人者になるつもりはない。


「志織、動けるか? 両親を解放しろ」


 俺は落ちてた縄で、男共を後ろ手に縛り、しばった奴から踏んづけて汁粉を吐き出させ蘇生してやる。そして口をガムテープしてやる。三人目の時にはパパが手伝ってくれた。ママはねんねしたままだ。


「おじさんは、警察を呼んでくれ。志織、楽しいランチだった。またな、アディオース!」


 俺はバルコニーから再び大空の覇者になった。



 人気が無いとこに着地し、マスクを外し人混みに紛れる。ああ、またやってしまった。なにが楽しいランチだよ。皮肉すぎるだろ。それにさらに一割ってなにをもらうつもりだったんだよ。お尻?


 後悔にさいなまれながら、スクランブル交差点を渡る。視線? 遠くからこっちに誰かが歩いてくる。変態? 紛う事なき変態だ。お巡りさんもっと仕事しろよ。

 180を超えてるくらいの細マッチョの男。僕のマスクに似たベネチアンマスク。網タイツに際どく脚線美をみせつけるバニーガール姿。バニーカチューシャまでしてやがる。多分、僕の後ろに知り合いでもいるんだろう。目を合わせないようにしよう。


「はぁい。君が幸運の神の使徒だね。私の計画を幾つも台無しにしてくれたね。ありがとう。たーっぷりとサービスしてあげるわよ」


 キョロキョロ見渡すが、変態が見てるのは僕。嫌だ変態と会話してる変態だとは思われたくない。呆然としてる僕に男は背を向けてやたら早いスキップで人混みを上手く避けながら消えて行った。


「あんた、大丈夫っ!」


 足下のスパサラを抱え上げる。


「もしかして、アレって……」


「そうよ、性愛の神『カルマ』よ」


 良かった。僕のパートナーは可愛い猫ちゃんで。


「あんたなにすんのよ。やだ、頬ずりしないで。あたしこれでも嫁入り前なのよ」


「ぬこー、ぬこー、ぬこー」

  

 そして、猫を十分に吸って、家では反省会だった。ポイント減ってるよ。あと百切ってる。

 

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