表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狩人のディポラティア  作者: 深緑蒼水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/18

9:この身に流れる者

『狩人のディポラティア【9:この身に流れる者】』


月光が照らす頂き。


「喰らうか…。」


―グシャ…。グシャ…。―


「ッグ…!!!」


―ボタボタ…!!!―

ディポラティアは血を吐いた。


「全身が痛む…。だが、確実に感じるぞ…。獣達を得る事に、声が遠くなっている。」


彼の中には何かがいる。

”それ”の抵抗で、全身が痛むのだ。

ーーーーー

―バチバチ…。―


空洞の中。

石を椅子とし、燃える木々を中心に皆は集まった。


(ブラックソード)「喰らい終わったのか?」

「あぁ。…お前達の傷は大丈夫か?」

「あなたの傷が、一番深いので。」

「サンはどうだ?」

「大丈夫。…体が燃えた力。昔と同じだ…。感覚も全て…。」

(ハザキ)「化身の力が、残っていたのか?」

「だが、風の化身に火を起こす力はない。サン。お前が今操れるのは、火だ。…サン旅の話を聞いてから、思っていたことがある。"化身の力に、何故耐えていられたのか"。」

(皆)「…!」


疑問には思わなかった。

耐えられた結果を見たのだから。


(ルナ)「…魔人と同じ。」


魔人は人と魔物を歪に合わせた存在。

人という母体は、同じである。

であれば、魔物の力で寿命が短くなる人の体が、

化身の力に耐えられる訳がないのだ。


「今にしよう。」


―スル…。―


眼帯を外した。そこにはやはり、竜の目。

"邪眼"のようなものがある。


「この身に流れる血。…"俺達の家系"に流れる者についてだ。」


ディポラティアは話し始める。それは何十年前の出来事。


「これは"邪眼"だ。…かつて右大陸に君臨していた、"獣の王"と呼ばれる存在がいた。"何かが原因"となり、王率いる竜の軍勢と、狩人達は戦った。血と火が広がる、大戦だった。…そんな王を倒し喰らったのが、"俺達の叔父"になる。」


それは、右大陸で起きた大戦の話。

何かの原因により、竜と狩人達は争った。


(サン)「…!」

「獣の力をもたない狩人だった。孤高であり最強の。」


何者も喰らわず、常に一人で任務をこなしていた狩人。

サン達の叔父。


「…獣の王。そして、今なお流れる者。名を、"竜神:バハムート"。俺達には奴の血が遺伝し、流れている。」


かつて右大陸に君臨していた最強の獣。

ディポラティア達には、そんなバハムートの血が流れている。


(サン)「だから…。」

「バハムートの血が、膨大な化身の力と調和していたのでしょうか…?」

「強大な者同士、ぶつかり合っていたのだと思う。だから無事でいられた。それに、竜の血が体に染み込んだのも、元々竜の血あっての事だろう。でなければ、その時点で命が危うい。」


化身と竜神の力はぶつかり合った。

そのため本来肉体へとくるダメージを、抑えられていたようだ。

そして竜。魔物が危険というのなら、竜もまた同じであろう。

運命か幸運か。

サンが辿った道は全て、奇跡の正解であったのだ。


(サン)「…。この命に奇跡を感じる…。」

(ハザキ)「バハムートの力は使えないという訳か。そのため、他の獣を喰らう。」

「獣との関係に友情などない。…バハムートを喰らった叔父も、扱えなかったそうだ。ただ大戦によって、重症を負っていたからかもしれない。」

(ミア)「獣の力は遺伝するの?」

「いや、バハムート以外で聞いたことはない。奴は死んだ今なお血として流れ、俺達を呪っている。」


死してなお消えないその意志の恨み。

それは、ディポラティア達の肉体で蠢いている。


「妹ケイジーノにも…?」

「確かに、バハムートの血が流れている。妹だが、"あの生物兵器"の、コアだと思う。その役目をしているようだった。」


ムデナ・パンドラは大戦の歴史を知り、その血筋を探していた。

そしてあの日、サンの前へ現れた。


―ブボボボボボボ…!!!―


右大陸管理組織の舟だろうか。風を切る音が聞こえる。


「大戦については俺も詳しくは知らない。全て、言葉を見聞きした程度だ。」

「兄さん。最後に一つ、聞いてもいい?」

「なんだ?」

「"母さん"は…。」


ディポラティアは沈黙していた。

サンも皆も、気付いてはいるのだろう。


「…。きっと俺より強い血が、流れていんだと思う…。」


ディポラティア達の母。

彼女もまた、獣との戦いをしていたのだ。


「奴らが降りてくる。…会いに行くとしよう。」

ーーーーー

巨大な方舟が着地している。

その船から降り、歩いてくる者の姿が。


―スタッ…。スタッ…。―


(右大陸管理組織代表:ミラーデイン)「私は"ミラーデイン"。"右大陸管理組織:ミランシェ"の代表だ。」

「代表自ら会いに来るとはな。」

「我が大陸優秀の、狩人のためだ。…ムデナ・パンドラ討伐は、やれると見込んでいいな?」

「あぁ。…ジフレッドは喰らってある。」

「承知した。ミランシェは約束しよう。"獣を討つ、最強の武器を作ると"。」


特異個体の素材を使用した、最強の特効武器。

ディポラティアが密かにやっていたこと。


「狩人狩り、拘束しました!変身はおろか、脱出不可能です!」


狩人狩り:スレインは、鉄製の頑丈な拘束具で縛られている。

遠く離れた位置でも、鼻を刺激する麻痺性の花粉が飛んでくる。

"鉄鼠:デス・ローリング"。"痺れ花:シビレソウ"。

頑丈な鉄に強力な麻痺花粉を塗った、凶暴な獣さえも縛り付ける拘束具だ。


「では行こうか。…君とは話したいことがある。方舟に乗りたまえ。」


―ブボボボボ…!!!―

方舟は煙と火を吹き出し、宙に浮き始めた。


「ついて来てもらおう。"空の地"へと共に。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ