2:激爪!森に現れた影
『狩人のディポラティア【2:激爪!森に現れた影】』
ー風葉亭ー
(風花)「初めまして。狩人様。本日は、依頼を受けてほしくお呼びしました。優秀な狩人であるあなたを。」
嵐咲城にて、王と狩人。同じ目線での対話が始まる。
(ディポラティア)「狩人を呼ぶということは、対象がいるということだな。"獣"はどこにいる?」
「表大陸では最近、獣による被害が多く報告されています。本来いないはずの者達がなぜか…。」
獣。自然豊かな右大陸に生息する生物であるが、表大陸にて観測され始めた。
「それは右大陸でも話題だ。…元凶に、心当たりはあるんだがな。」
「獣は天空山を登った、森の奥にいます。ですが、気をつけてください。一匹、他とは様子が違うものがいると。」
「…"特異個体"だろう。俺は初めて見る。」
「その種は他とは何が?」
「生存本能が高い個体が、より強く凶暴に。長寿を生きる者達だ。…一ついいか?報酬はいらない。その代わり、特異個体は貰う。」
「構いませんよ。」
「感謝する。では、依頼を遂行したのち、また会おう。」
ー天空山ー
ーフオオオ…。ー
竹や木が生えるその奥から、身を刺激する風が吹く。
「獣の足跡。この先か。」
ーザッ…。ザッ…。ー
「…。これは…。」
森を進むディポラティアは、不可解な光景を見た。
「血が至る所に…。…。」
木や土。葉についた血の匂いを嗅ぐ。
「魔物に獣の匂いか。血以外の痕跡がない。辺りにいる全てを襲っているな。」
森の奥に進んでいく。
「あれか。」
ーグググ…!!!ー
森の奥。そこには辺りの木々をなぎ倒した、獣の姿があった。
(トランズ・キャットネス)「グアアア…!!!」
爪を立て、獲物を喰らっていたようだった。
「…邪魔をしたな。だがここは、お前がいるべき場所ではない。すでに生態系を崩している。人にとって、脅威になるのも時間の問題だ。」
ーズサン…!!!ー
ディポラティアは、背に背負っていた大槍を手にし、構えた。
強靭な肉体をも傷つける最高の切れ味。
「さぁ、依頼を終わらせよう。」
「グオオオオオオオオ…!!!!!」
自分の食事を邪魔され、"トラ"の進化である獣は咆哮を上げた。
ーーーーー
ーザン…!!!ドス…!!!ー
トランズの鋭く強靭な爪が、素早くかつ勢いよく振り下ろされる。
「速い動きだな。」
ースッ…。ザン…!ー
ディポラティアは極まった最小限の動きで、相手の攻撃を避けている。
しかも、攻撃をしながら。
「グググ…!!!」
トランズはこのまま終わる結果を想像し、更に怒りを増した。
「グオオオオオオ!!!!!」
近距離から放たれる轟音は、ディポラティアを怯ませた。
「ッ…。獣はこれが厄介だ…。命の終わりでも油断できない。それはお前達の強さだ。ただ…。」
トランズは、ディポラティアの周囲を爆速で動き回っている。
「…冷静でいい。足の設置が不安定だ。…すでに勝負はついている。」
ーバッ…!!!ー
トランズが勢いよく飛び込んできたが…。
ーザァァァァン…!!!!!ー
その下をくぐりながら、腹を引き裂いた。
「グオオオオ…」
ードスン…。ー
「特異個体。」
息絶えた、トランズの特異個体。
「"俺に流れる血のため"。…"喰らうか"。」
ディポラティアは槍を背に戻し、"トランズを喰らった"。
ー嵐咲城ー
「早かったですね。」
「あぁ。少し削れたが、国の者に渡しておいた。あとは好きにしろ。」
「…?よいのですか?」
「…以外にも早く、"力を得た"。だが、俺が望む効果はまだのようだ。少し多めに喰らったが、人間の胃では限界があるからな。あの程度でいい。」
「そうですか。あなたがいいというのなら、もらっておきますね。かなり巨大な個体と聞いていますが、剝製にでもしましょうか…。」
「でかい城には丁度いいだろう。奴の風貌とも、この城はあっている。…では、俺は帰る。」
「えぇ。ありがとうございました。」
「…そうだ、王よ。親切を期待したいのだが、いいか?…"ブラック・ロワ"は今でもあるか?」
「…?はい。ありますよ。」
「そうか。失礼する。」
表大陸での依頼を遂行したディポラティア。
彼は"身に流れる血"のため、"特異個体"を狙っている。
城を後にするディポラティアには、"新たな力"が目覚めているようだ。
現実でも獣にはお気を付けてください。




