16:王座君臨
『狩人のディポラティア【16:王座君臨】』
ー王の玉座ー
玉座にいる。
長年の宿敵が。
(狩人:ディポラティア)「ムデナ・パンドラ!!!」
(ムデナ・パンドラ)「騒がしいな。俺の城が壊れる。まぁ気にならんが。なぁ、狩人。お前も少しは変わったか?」
「お前を殺せるほどにな。」
「バハムートの開花が起きたようだな。それでよい。」
「俺を消すことが目的だろう。」
「だがお前は生きてみせた。それでこそ、"理想郷"を目指す糧となる。」
「理想郷…。何のために目指す…?全てを破壊し、それでもまだ、破壊を続けていくというのか。」
「夢の始まりは単純だ。子は親を選べない。それが例え、強い血であってもな。」
「親もまた、子供を選べない。違うか?それは本来両者にとって、喜ばしいことのはずだ。だがお前は愛されなかったようだな。もしくはお前が、愛さなかったのか?…本当の出来事は分からないが、どちらが悪かったかなど、もはや関係がない。お前は人を超えてしまった。」
「ッフ。俺が獣ということか?それでいいさ。」
ーバッ…!ー
玉座からムデナが立つ。黄金に輝く右手を胸に当てた。
ーバキバキ!!!ー
すると肉体が宝石で纏われ、鎧となった。
「…お前。」
「お前が思っている通りだ。…来い。俺たちは命を奪って先に進める。」
ーサッ…!バキバキ!!!ー
ムデナは手を動かした。その手の動きに反応し、鋭い宝石が生えた。
「俺はこの地の支配者!バハムートを消滅させ、世界に旅立つ!!!」
「お前が奪ったもの、全て取り戻す!」
ーーーーー
ーバッ…!!!ー
ムデナは両手を向けて広げた。その指先から宝石が生成され…。
ードドドドドド!!!ー
「…!!!」
ーグググ!!!ー
カメザメの甲羅で宝石を受ける。
「ほぉ?それがお前の獣か。」
「まだ多くいるぞ…!」
ーガコン…!!!ダダダ!!!ー
発射した鱗は、宝石を打ち砕く。
「発射比べはやめだ。」
ーバキバキ!!!ー
ムデナは、下から上に手を動かし、宝石の壁を作った。
ーバッ…!!!ー
走りながら、ディポラティアを囲うように壁を作り始める。
「回りくどいな、ムデナ!貴様も流れているのか?もしくは手に入れたのか?"狩人の血を"!!!獣だろう、その力!」
ーバキン!バキン!ー
トランズへと変化し壁を破壊しながら、ムデナの姿を探す。
「知っているのか。だが正確に言うのなら、"原初の血"だ。それは全ての生物の源。血を手に入れるのに、時間はかかったがな。」
ーバン!!!ー
壁を破壊し、ムデナを見つけた。
だがムデナは、首を掴むかのように待っていた。
宝石は長く伸び、トランズの首を巻き込み固定した。
「ッグ!!!」
ーバキバキ!!!ー
より一層、宝石の密度が上がり、首が締まる。
「足もつかないとはな。…そのまま死ね。」
ーバキン!!!グググ!!!ー
宝石を砕き、ジフレッドへと変化する。
ーヒョオオオオオ!!!ー
「ッ!!!」
ムデナはブレスを受けた。
宝石を纏っているため、全身が固まり動けないだけで済んだ。
だがその隙を、狩人は逃がさない。
ーグググ!!!ー
グリセスと変化し、ムデナを掴む。今度はこちら側が。
そして天井を突き破り、外に出る。
ードゴン!!!フォオオオオオ!!!ー
「いくぞ…!纏った屑石ごと粉砕してやる!!!」
高高度。減速することなく、突き破った天井穴めがけて突撃した。
ードゴオオオオオオオンンン!!!!!ー
爆発のような音と衝撃が、城中に広がる。
ーボコボコオオオ…。ー
砂煙が立ち込める中…。
「ハァ…。死んだか…?」
ーバキバキ…。ー
粉々に砕けた宝石を、踏む音がする。姿も影となり見える。
「ディポラティア…!」
ーグググ…!!!ー
その影は形を変え、巨大化していく。
「獣化か。俺も準備を…。」
ーバサァ…!!!ー
(フェンクス・パンドラ:ムデナ・パンドラ)「グオオオオオオオ!!!!!
…お前も出てこい!」
ードスン…!ー
散り散りになったカーテンを破り、もう一体の巨大な影が現れた。
(生物兵器:ヌル・バハムート)「ギャオオオオオオオオ!!!!!」
「なんだこれは…!」
生物なのか分からないそれは、大量のケーブルが体中に繋がっている。
いくつもの兵器が、肉体の一部となっているのだ。
「どうだ?"フェンクスは俺が喰らった"。だが、バハムートの血筋だ。腐らせ、捨てるのは勿体ない。だから造ったのだ!世界を滅ぼす兵器を!!!勿論、"コア"も最高品質だ。」
生物兵器の胸は、黒ガラスのように透けて見えた。
「ケイジーノ!!!」
「死してなお、奴の肉体には血が流れる!!!」
ケイジーノにもケーブルが繋がれている。
血を循環させているようだ。
巨大で強大な影が二体。
解き放たれては、かつての竜大戦を、世界に引き起こすだろう。
ーサァ…。ー
眼帯を外し、獲物を捉える。
そして家族を見る。
「眼帯はもう必要ない。今、見せてやる…。」




