10:空中庭園:スカイアワー
『狩人のディポラティア【10:空中庭園:スカイアワー】』
ディポラティア達を乗せた右大陸管理組織の方舟は上昇を続け、雲へ入った。
―ボファ…!!!―
(ミア)「雲の中…。」
―ファァァ…!!!―
雲を越えた瞬間見えたのは、宙に浮かぶ都市であった。
(ミラーデイン)「そのまま前へ。着陸だ。…ここが"スカイアワー"。右大陸発展の地だ。」
空中庭園:スカイアワー。
右大陸初期の技術は地で作られ、次第にそれらは、空へと登っていった。
この地こそ現時代の、右大陸技術の結晶なのである。
「さぁ、本部へと行こうか。」
―空中庭園:スカイアワー―
天空の中、雲糸にて浮かぶその大地。
かつて空を支配していた、"空蜘蛛:アマノムラクモ"。
突如空から降ってきた彼の死体を使い、空への橋をかけたのだ。
「ムデナ・パンドラ討伐について、話し合おう。狩人ディポラティア。」
「勝負を仕掛けるのは、もうすぐだ。」
「獣を喰らい、バハムートを支配すると言ったな。肉体の調子はどうだ?」
「良好だ。…痛みを伴うが確実に、奴の声が消えかかっている。」
ディポラティアの肉体を蝕んでいた呪いは、
今や他の獣達と調和し薄れている。
「あと一体程度と言ったところか…。武器も着実に、完成へと近付いている。」
「俺達は獣を探す。…天空にも、生態系はある。」
「…”狙いに行くのか?”あれを…。」
「いつか倒す者が必要だろう。」
天空にもまた、強大な獣が潜んでいる。
「準備を続けてくれ。決行した時、"人々の解放"は任せる…。」
「受けよう。…狩人狩りはこちらで処置をする。」
「任せた。…長い戦いで疲れが出ている。皆一度、休むとするよ。」
カメザメ、狩人狩り、ジフレッド。
強力な者達との戦いを、一日で繰り広げたディポラティア達。
「それがいい。」
―シュイーン…。―
自動扉の前。
ディポラティアは立ち止まり、ミラーデインに振り向く。
「…ミラーデイン。狩人狩りだが、"ムデナに買われた"狩人ではないかと思うんだ。」
「…。そうなると、状況を把握されている可能性があるな…。だが奴の性格だ。きっと離れず待つのだろう。"自身の理想郷"のために。」
―バッ…!―
左腕を上げ、手を振り、本部をあとにした。
ー雪山:アインサント(頂上)ー
―ズズ…!―
通信を繋げる男がいる。
(???)「通信が出来ない…。信号が切れている…。」
―ズズ…!―
別の相手に通信をかける。
(狩人狩り:ダライン)「俺だ。"ダライン"だ。気付いたか?スレインの信号が切れた。」
(???)「あぁ。知ってる。あいつ、獲物を見つけたって言ってたろ?」
―ドン…!―
相手の場所は分からないが、何かに当たっている事は音で分かる。
「俺らを待てば、殺れてたろ!!!」
「少し落ち着け。…手がかりがない訳ではない。」
「…?」
「俺の場所まで来い。我々も、空へ行くぞ。"グレイン"。」
(狩人狩り:グレイン)「ッフ…。なら舞うか…。」
―グググ…!!!バサァ…!ギャオオオオオオオン!!!―
ノイズに混ざって鳴き声が伝わる。
―ブツ…!―
「ハァ…。どいつも騒がしいな。」
―グググ…!バサァ…!―
「待っていろ…。ディポラティア…。」
不穏な二頭の影は、空へ羽ばたいた。
―次の日―
―ピカァァァ…!―
眩しい太陽光が、朝を届けに来た。
ホテルの前、ディポラティアは集合をかけていた。
「休めたか?」
(ハザキ)「私達はそれほど、疲弊していなかったからな。」
「うむ。」
(サン)「特に変わりなく。」
(ミア)「腕、大丈夫?」
「えぇ。治りましたよ。やはり、あなたの腕がいいのでしょうね。」
「物を作ったのなんて、数年振りだ。…素材が良かったのさ。」
管理組織から素材を貰い、オメガを修復していたサン。
離れてなおその腕には、技術が染み込んでいたのだ。
(ルナ)「次はどこに?」
「草原へ行く。山の上にある廃墟に、獲物はいる。」
「廃墟があるのか?」
「獣の研究施設だった。…だがある日、天空を舞う獣に襲撃され壊滅。以来、そいつの巣へと化してしまった。」
(ルナ)「獣が、人の進化に適応してるんだね。」
「そうだな。人工物を利用する者もいる。それに昔と比べた時、獣の動きに変化があると、学者達や老狩人達は言う。他者の動きを見て変化するのは、獣も同じだ。…旅の終わりも近い。相手の上を行き、進化し続けるぞ。」
―バッ…!!!―
手を固め、前へ突き出すディポラティア。
気持ちを鼓舞し、歩みを進めよう。
早くも旅は、佳境なのだから。




