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不当防衛  作者: 西季幽司
第二章「二度あること」
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鄭成功②

 一旦、調布署に報告に戻った。

「な、何~!」田川と藤田祐樹ちゃん誘拐殺人事件との繋がりを示す証言が出て来たことを伝えると、野上は悲鳴を上げると、「慎重にな。上に報告して来るから、くれぐれも慎重に捜査を行え」と言って立ち上がった。そして、「モアイ、特に、あの人に注意しろ」と服部に釘を刺してから、早足で歩き去った。

 祓川のことだろう。注意しろと言われても、服部にはどうしようもない。

 野上への報告が終わると、上田、今村との情報交換だ。服部の仕事のようになっていた。野上動揺、田川が藤田祐樹ちゃん誘拐殺人事件に関与していたかもしれないと聞かされ、「本当か⁉」、「あの野郎~!」と驚いた様子だった。

 田川からの事情聴取は上田、今村が担当している。こちらが本筋だ。上田は空いた席から椅子を持って来させると、三人、車座になって会話を始めた。

「そうそう。包丁について、田川に聞いておいたぞ」と今村が言った。

 北城大祐のアパートから包丁が無くなっていたこと。田川の部屋の台所に包丁セットがあったが、全て揃っていたことから、包丁は大祐がアパートから持ち出した可能性があると祓川、服部は考えていた。

 田川が藤田祐樹ちゃん誘拐殺人事件に関与していたなら、復讐の為に大祐が包丁を持ち出したとしても不思議ではない。

「包丁って、新しいものを買っても、古いものは捨て難くありませんか? 刃物ですから。捨てられずに置いてある包丁って、どこの家庭にも一丁、二丁はあるでしょう。包丁セットはもらいもので、全然、使っていません。日頃は、あの古びた包丁を使っています。まあ、料理なんて、ほとんどしませんけど」田川はそう答えたと言う。

「確かに、日頃、料理をしていなくても、昔、買ったボロの包丁があっても不思議ではありませんね」服部が納得すると、「だがな、モアイよ。古い包丁がキッチンの上に出しっぱなしになっていたと言う説明は無理があるように思う。日頃、料理をしないのであれば、包丁は普通、棚か引き出しの中に仕舞ってあるのものだろう」と上田が言う。

「確かに。北城さんが咄嗟にキッチンにあった包丁を掴んで襲い掛かって来たという説明でしたね。包丁が引き出しの中にあったのだとしたら、引き出しから包丁を探し出すよりも、キッチンの上にあった包丁セットから一本、包丁を抜き出した方が簡単ですね」

「そうだ」

「やはり、包丁は北城さんが自宅から持って来たものだろう」

「自宅から包丁を持って、田川を訪ねたとすると、北城さんには、田川さんを殺害する意図があったと言うことになります」

「被害者は田川を殺そうとやって来て、返り討ちにあった・・・」

 そこまで言うと、三人、黙り込んでしまった。

 かつての借金のトラブルから、田川は北城とトラブルになった。その可能性を調べ始めた矢先に、今度は誘拐事件だ。

 田川は十七年前にスーパー売却のごたごたから、江川信二という人物を殺害、正当防衛が成立した。そして、七年後、藤田祐樹ちゃんを誘拐、まんまと身代金を騙し取った後で殺害した。今度はその父親を転落死に見せかけて殺害したかもしれない訳だ。連続殺人鬼。田川は正当防衛を装って、殺人を繰り広げている殺人鬼なのかもしれない。

 時間は複雑怪奇さを増して来ていた。

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