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第三話
濃霧の関ヶ原。
当然、大谷吉継の姿はなかった。ついに戦場へは現れず。西軍はひとつ、確かに要を欠いていた。
石田三成は歯を食いしばる。
「吉継……貴公なくとも、豊臣のためこの戦、必ず勝つ!」
しかし、その穴を埋めるように狂風が吹き荒れた。
島津義弘。
彼は少数の兵を率い、前に出ては突撃!
「ヤバい!一回撤退!」
「やっぱ突撃!」
敵の喉笛を裂き、引いては再び突撃。
徳川の本陣近くをかすめ、血煙と馬蹄を残して消えるその戦いぶりは、まるで嵐が渓谷を荒れ狂うようであった。
井伊直政も追撃を試みるが、ことごとく返り血を浴びて退く。
一方、西軍の布陣も崩れはしなかった。吉川広家は動かない。小早川秀秋は逡巡を繰り返し、裏切りの刃を振るうことなく一日を終える。
三成はその間、必死に兵を繋ぎ止めた。
やがて正午を過ぎ、両軍とも決め手を欠いたまま、戦は泥沼となった。
最後に、再び島津の乱入。
義弘は徳川本陣を目がけて突進、家康の御旗を蹂躙する。家康も馬を立てて睨むが、島津の鬼火のごとき一撃に、ついに退勢を悟る。
「ここまでか……」
夕方になると両軍はともに退いた。
三成はなお生きていた。敗れもせず、勝ちもせず、ただ戦場を血の匂いで染め上げたまま。
徳川と石田。
二人の覇は決せぬまま、関ヶ原は夜に沈む。
その後、膠着の時代へと滑り込んでゆくのである。




