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第十五話
前田家を倒し越中・能登・加賀・越前・飛騨の五国を束ねた男。今や北陸の王である。
だが、戦のたびに体は削れ、薬湯の香りが軍議の香となっていた。
京極攻め‥。
次なる標的をそう定めた矢先、ひとりの女が現れた。
浅井三姉妹のひとり、京極お初。
「……大谷殿、あなたの軍略、天下に鳴り響いております」
深く礼をした彼女の声は、絹糸のように細くも、明確な意志を持っていた。
吉継は唇の端で微笑んだ。
「……だが今は咳しか鳴らん。‥ヴォエエ‥」
その返しにお初は一瞬だけ息を呑み、やがて微笑で応えた。
笑みの裏には、女の計算があった。
両者は密かに盟約を交わす。
大谷家と京極家‥。繋がれた細い絆。
吉継はその夜、灯明を前に独り呟いた。
「あの瞳に誠が宿るか、あるいは裏切りが潜むか……」
燃え尽きる灯の光が、彼の顔の片側を紅く染めた。




