第十四話
富山城へ到達した大谷吉治たち。城を守る三善一守は前田軍大敗を知り、降伏した。
「よし、ハイエナ完了!父上と合流するぞ」
七尾へ向かった大谷吉治だったが、生き急いでいる吉継は前田軍の追撃しにいっていた。
能登島沖で海戦中の両軍だが、こんな海戦したのこのときが初めてであった。
海が荒れ狂い、白波が砕け散る。
小舟が数隻、互いに弓矢と火矢を打ち合い、松の油を塗った矢が海面に落ちては、炎の筋を引いた。
「これが……海戦か」
吉継は海風に酔いかけていた。
「陸の戦とはやはり違う……敵も味方も波に呑まれる」
舷側から、甲冑を濡らした伝令が駆け寄る。
「申し上げます!敵船3隻を焼き討ちに成功しましたァ!しかし波が荒れておりまァす!」
遠く、黒煙の向こうに一際大きな船影が見えた。
炎の雨が海を染め、吉継の乗る船も火に包まれた。
「鎮火!早くしろ!」
「舵が効かん!」
吉継は静かに立ち上がり、燃え盛る船板を見つめた。
「……面白いじゃないか、初めての海戦で地獄を味わえるとはな」
そして振り返る。
「全軍、撤退線を開け! 燃えるワシの船を囮にして、敵を包囲せよ!」
その命令が伝わるや、吉継の周囲の海が生き物のように蠢いた。
味方の小舟が左右に散り、炎を背にして敵を取り囲む。
風下にいた敵船は、燃え移るのを恐れ慌てて退いた。
その時、南部無右衛門の船が突風に乗って滑るように近づいた。
縄を投げる兵たち。
「吉継様!」
次の瞬間、敵の大船が突進してきた。
舳先の金具が吉継の船腹を貫き、木片が飛び散る。
火と煙の中、吉継の姿がかき消えた。
海が静まるころ、漂流していた一艘の小舟が浜に打ち上げられた。
「……さみ‥」
寒すぎて震える吉継。
前田利長の軍勢、生死不明‥。




