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第十話

丹羽家の遺臣を吸収しようと試みた大谷軍だったが、すでに戸田勝成も江口正吉も、大聖寺城で丹羽長重と運命を共にしていた。

「残っているのは……南部無右衛門とかいう男と、永原松雲とかいう奴だけか」

吉継は眉間に皺を寄せた。どちらも腕は確かだが、この二人は致命的に馬が合わない。

「同じ隊に置いたら一晩で血を見るな……よし。永原松雲はワシが預かる。前田攻めに同行させよう」

金森・京極攻めに向かう大谷吉治の軍勢には、南部無右衛門を配すことに決まった。

「それではな、吉治」

そこに伝令がすっ飛んでくる。

「申し上げます!勝山城が織田秀雄に乗っ取られましたァ!」

「ああ、そう。吉治、仕事が増えたな。金森のついでに織田秀雄も始末しておくのだ」

「はい‥。」

大谷吉治、湯浅隆貞、南部無右衛門たちは織田秀雄を終わらせるために勝山城へ向かった。

夜明け前、勝山城下‥。

濃霧の中、南部無右衛門が鎖帷子を軋ませて低く言った。

「門の守備が甘い。たぶん内応者が中におる」

湯浅隆貞が目を細める。

「その割に見張りが多すぎる。釣りだな」

だが南部は笑った。

「釣りなら、食ってやればいいだけだ」

次の瞬間、無右衛門は、一気に霧の中へ突撃した。

「脳筋過ぎだろコイツ‥!」

湯浅は舌打ちしながらも続いた。

南部無右衛門、命令よりも、意志が先に動く。

城門に達した瞬間、閂が弾け飛んだ。

内通者の手引きで門が開いたのだ。

しかしその背後、堀の向こうで火が走った。

「燃やせッ!全員焼けッ!」

織田勢の火矢が雨のように降り注ぐ。

火の粉が鎧に映え、戦場は一瞬で紅に染まった。

無右衛門は咆哮を上げ、燃え上がる戦場を駆け抜けた。

鎧袖一触というやつである。槍の穂先が敵の兜を貫き、血が蒸気のように立つ。

湯浅が背後で叫んだ。

「無右衛門!止まるんじゃねぇぞ!」

二人はまるで双牙のように敵陣を切り裂いた。

本丸前‥。

織田秀雄は槍を手に、自ら馬上に立っていた。

「来たか、大谷共!俺はあの信長の‥!」

「ここの兵、弱すぎんだけど!」

南部が血を滴らせた笑みを浮かべる。

湯浅が敵の副将を一撃で倒すと、無右衛門がその隙に槍を投げた。

風を裂いた穂先が、織田秀雄の胸鎧を貫通した。

「がッ?!」

秀雄の体が崩れ、馬がいななき、血が地を打った。

湯浅が呟く。

「昔の名前で食ってるタイプだったな」

南部は無言で兜を脱ぎ、風に晒した。

その瞳には疲労よりも、奇妙な静けさがあった。


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