【番外編:シトリーの前日譚 2】
今回はかなり短めです。
ある日、人魚の国の王宮にてパーティーが開かれるらしいと人魚たちが噂し、盛り上がっていた。
人魚の国には人間社会のような明確な階級というものは無い為、パーティーには基本的に誰でも参加して良いということになっている。
人魚乙女たちはどんな装飾品を付けようか、髪飾りは何色にしようかなど楽しそうに会話しながら白い人魚の隣を通り過ぎる。
「いいな…パーティー行ってみたいなぁ。」
白い人魚の呟きを通り過ぎた人魚たちは聞き逃さなかった。
「何ですって?あなたみたいな真っ白な人魚が来たらパーティーが台無しになるじゃない!やめてよね。それにあなた、まだ名前も付けてもらってない癖にパーティーに参加したいだなんて女王様に不敬だわ。身の程を弁えなさいよ!」
躑躅色や藍色、若草色の人魚たちは白い人魚を睨み付ける。
白い人魚は何も言い返せず、逃げ出した。
クスクス笑う声が遠のいて行く。
"どうして自分は鮮やかな色を持たないのだろう"
"何故、女性でも男性でも無い中途半端な体なのだろう"
生まれたときに周りと違うと認識した瞬間からずっと考えてきたことだった。
生まれたときから蔑まれ、疎まれ、居場所の無い自分はこれからどうしていけば良いのか。
しかし、白い人魚はある意味達観していた。
何故なら白い人魚は女性体とも男性体とも言えない無性な体なので、長くは生きられないからだ。
白い人魚は生まれてもう10年になる。
人魚は生まれたときは5歳くらいの体なので、白い人魚は今の年齢で15歳くらい。
20歳まで生きられたら御の字だが、ほとんど0%に近い確率だ。
「私は一生、孤独のまま死ぬのかな…」
白い人魚の呟きは、今度は誰にも聞かれること無く小さな泡となって消えていった。
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