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【番外編:ジルの物語 4】

次回でジルの物語は終わる予定です。


父であるロザラム公爵に呼び出されてから1ヶ月経っても、ローズ暗殺の知らせを聞かなくなった。


あれから公爵は部屋に引きこもり何やらブツブツ独り言を言っている。




またしばらく日が過ぎて、どうやらローズ暗殺は失敗に終わったらしいということが分かった。


ジルは焦ったが、公爵が大丈夫だと言ったのを信じた。



その間もローズへの憎しみは消えることの無い炎となってジルの体を焼け尽くしていた。




ある日、メイドたちが部屋の外で騒がしいのでジルは何事かと怒鳴りつけた。


すると、一人のメイドが青ざめた顔で震えたながら報告する。



「お、王妃陛下が王太子様を、お生みになられました…」



憎らしいあの女がアイトレア様との子供を生んだ…。



ジルは再び足元が崩れ落ちる感覚に陥った。


王太子が生まれてしまったらもう終わりだ。


いくら公爵でもローズと王太子の二人を同時に暗殺するなんてリスクが高すぎる。




しかし、それでも公爵は口元を歪めながら笑っている。


そして、ジルに赤黒い液体が入ったグラスを渡してきた。


「ジル、これを飲みなさい。稀少な"人魚の血"だよ。この血には"不老長寿の力"があるんだ。順応すれば、お前も類稀なる能力と不老長寿が手に入る。そうすれば、ローズも子供もお前の手で亡き者にすることが出来るじゃないか。」



ジルは赤黒い液体をじっと見つめた。


何故だか恐ろしくて震えが止まらない。


「憎いんだろう?ローズのことが憎くて仕方ないんだろう?この血を飲めば全て解決する。…さぁ、飲むんだ。」



震える手で公爵からグラスを受け取る。


これを飲めばジルから愛しいアイトレアを奪い、厚顔にも王妃の座についているあの女をこの手で始末することが出来る。


ジルはゆっくりグラスを傾け、液体を飲み干した。



「…っ!ぐっ、うぅ…!!」


心臓をわし掴みにされたような感覚に陥り、立っていられなくなる。


全身が心臓になったかのように激しい鼓動が体を支配する。



「すぐは苦しいだろうが、順応していけば段々と体が楽になり、力が湧いてくるようになる。ジル、お前は由緒正しきロザラム家の者なんだ。必ず順応するさ。」


公爵の言葉が遠い。


しかし公爵の言う通り、ある程度まで行くと苦しさが少しずつ治まり、体の底から力が漲るように熱くなった。


「お父、様…?(わたくし)は…」


「おぉ、素晴らしい!お前も順応するとは、さすが我が一族の娘だ。これでお前も不老長寿を手に入れたんだ。もう何も怖くなど無いぞ。これでローズも始末出来るじゃないか!」



公爵が喜んでいることにジルは嬉しくなった。


公爵に、父に素晴らしいと褒めてもらえることが何より嬉しかった。



そして、父は"プレゼント"までくれる。


生まれて初めての父からのプレゼントだ!


それは豪華な細工が施された"短剣"だった。



渡された短剣はずっしりと重く、これであの女を切り裂くことが出来ると笑いが止まらなかった。



早く、早くあの女の元へ行きたい、と眠れない日々が続いた。


読んで頂きありがとうございます!


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