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第57話 ちょっとイヤかも


 (結局、1人になってるし)

 俺がトボトボと歩いていると、雫からメッセージが届いた。


 「さっきはありがとう。でも、ママに鼻の下のばしてるのは、ちょっとイヤかも」


 ……どうやら、俺の下心は、すっかりバレていたらしい。


 「いや、美人なお母さんだし、雫も同じように美しい女性に成長するんだろうなぁって。だったら、その姿も見てみたいっていうか」


 すると、雫の反応がなくなった。


 やば。ひかれてる。

 ……弁明にしても、キザすぎたかな。


 ピピピピ


 5分ほどして雫から返信がきた。

 なぜか、ハートのスタンプが送られてきて、メッセージが続いていた。


 「それって、ママの歳になるまで、一緒にいてくれるってこと? だったら、もしフラれても大丈夫っていうか」


 「そんなつもりじゃ……」


 それに、フラれ?

 俺が雫を振るってことか?

 いや、それは自意識過剰か。


 その後、パタリと返信がなくなった。


 自分からメッセージしてきて、なんなんだよ。

 女子、意味わからなすぎ。


 

 「ただいまー」


 家に帰ると、夕食の匂いがした。

 エプロン姿の母さんに声をかけられた。


 「光希。遅かったわねぇ。夕食は?」


 「いや……、あ、やっぱなんでもない。先に風呂入ってきていい?」


 腹が減ってる訳ではないが、せっかく作ってくれたんだもんな。もう一度、夕食を食べることにした。


 「よかった」


 その声で、ふと顔を上げると、花梨と目が合った。もしこれが、ラブコメとかだったら。


 メインヒロインは花鈴なんだろうか。


 たしかに、花鈴は可愛くて優しいもんなあ。

 俺に呪いをかけようとしていること以外は。


 意外にも花鈴は怒ってなかった。

 そのかわり、不安そうに下から覗き込んできた。


 「もう、帰ってきてくれないかもって。ボク、不安になっちゃったよ?」


 「ここ、俺の家だから、いなくならないし」


 すると、花鈴はニコッとした。


 「ボク、先に夕食いただいちゃったから、シャワー浴びてくるね」


 花鈴は先に食べたらしく、夕食は母さんと2人だった。

 

 夕食を食べながら、今日あったことを話すことにした。俺は雫と話したことや、柚乃に待ち伏せされたこと、言いたいこと言われて放置されたことを話した。

  

 「でさ、柚乃、言いたいこと言っていなくなりやがったんだよ」


 母さんは俺の話を聞き終わると、ため息をついた。


 「はぁ。光希、アンタほんとに……」


 「どういう意味?」


 母さんは、花鈴がいつも座っている席を見て言った。


 「花鈴ちゃんも苦労するわね」


 そういうと母さんは話を続けた。


 「ちなみに、あなたは、その2人がどんな気持ちだと思う?」


 俺は咳払いした。


 「ん。たぶん、雫は俺のこと好きかな。だって、家に寄って行かない? って誘われたんだぜ? 柚乃は良くわからん。情緒不安定なんだと思う」


 母さんは更に特大のため息をついた。


 「あなた、やっぱり人の気持ちに疎いわね。それは逆よ。あなたに好かれたいのは、柚乃ちゃんの方。その、雫ちゃん? の方は、辛うじて嫌われてはいないっていう感じね」


 「え? そうなんだ……」


 母さんは今度は俺に微笑みかけた。


 「わたしはアナタの味方だけど、花鈴ちゃんも大好きなの。だから、3人のこと、ちゃんと考えてあげなね」


 俺は頷くと食事を続けた。

 前俺の母さんも、きっと色々と心配してくれてたんだろうな、と思う。


 もっと、母さんと色々話しておけば良かった。


 俺は、旅行に連れて行ったり、高いものをプレゼントしたり。そういった目に見えるものが親孝行だと思っていたけれど、こうして話を沢山するだけでも、良かったんだと思う。


 夕食を終えてベッドにいると、花鈴がもぞもぞと潜り込んできた。


 花鈴は毛布から顔を出すと、口をすぼめて、両手を開いて前に出した。


 どうやら、ハグとキスを求めているらしい。

 

 花鈴を抱きしめてキスをした。

 すると、花鈴は陽だまりの猫のように目を細めて、俺に背を向けた。


 「お前、怒ってないの?」


 「そりゃあ、ちょっとは怒っているけれど、ボクにとっては……光希の幸せが一番かな」


 「花鈴……」


 俺は、花鈴を後ろから抱きしめた。


 「まあ、でも。魔女を振り回した呪いで不能にはなるけどね」


 さすが魔女。

 言ってることとやってることが矛盾しまくりだ。


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