表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/60

第48話 秘密の勉強会。

イラストをつけました。

左が七瀬、右が花鈴です

  挿絵(By みてみん)


 今日は俺の部屋に花鈴と七瀬がいる。

 小さき者と黒き者の魔女の勉強会らしい。


 俺は部外者なのだが、なにせ花鈴と同居なので、おれはその様子を眺めている。


 なにげに花鈴は面倒見が良いらしく、七瀬に色々と教えている。


 花鈴も魔法書の原文は読めないようだ。だが、最近は魔女の世界もテクノロジーの恩恵をうけているらしく、「魔女っ子アプリ」とかいうものがあるらしい。


 2人はこのアプリで魔法書を翻訳している。

 そして、AI英語のように、発音のチェックもしてくれるらしい。


 魔女の魔法書は一子相伝のため、アプリ自体に魔法は記憶されないよう配慮されている。中には、魔女っ子SNSや、バイト募集、魔力トレーニングゲームなどが入っている。


 ほんと、便利な世の中だ。


 七瀬は、アプリのゲームで遊んでいる。魔力感覚が研ぎ澄まされるらしい。


 手を止めると七瀬は言った。


 「花鈴ちゃん。ハイスコア更新したよ!!」


 「おおっ。って、まだまだボクには及ばないけど。どれ、んじゃあ、眼を使って光希をみてみて」


 七瀬がこっちを真剣な眼差しで見ている。

 美少女にそんなに見つめられると、なんかドキドキしてしまう。


 七瀬は何やら興奮した様子でいった。


 「花鈴ちゃん。光希の周りに鎖が見えるよっ。ん。赤いのと青いの。赤と青の鎖でがんじがらめになってる!!」


 は?

 前は赤い鎖だけだった気がするのだが。


 「花鈴、青い鎖って……何?」


 俺が問うと、花鈴は横を向いて、鳴らない口笛を吹いた。


 七瀬は言った。


 「青いのって、花鈴ちゃんのだよね? なんで?」


 「ボ、ボクしらない……」


 なにやら悪さをされてるのか?


 「花鈴。言わないと絶交だよ?」


 花鈴は泣きそうな顔になった。


 「ちゅ、ちゅうしたから……君にボクの鎖が届くようになった」


 「目的は?」


 「……」


 「目的は?」   


 「光希をこの世界に縛り付けるため……。だって、赤い鎖が切れたら、光希がいなくなっちゃう……、だから、だから……うぅ」


 花鈴は泣いてしまった。

 どうやら、2本目の鎖で保険をかけてくれてるらしい。


 ほんと、天使みたいな子。

 自己評価より一万倍は良い子だ。

 

 俺は花鈴の頭を撫でた。  


 「花鈴。ありがとう」


 「あのね。もし、もし、赤い鎖が切れちゃったら、ボクはまだ未熟者で力不足だから。ボクの寿命を贄にしてでも、光希をこの世界に留まらせるから」


 「……そこまでしなくていいよ」


 俺はやり直しの人だ。

 花鈴の寿命の方が、ずっと大切だ。


 ……それにしても、愛されてるなぁ。


 おれも花鈴に、きちんと気持ちを伝えた方がいいのかな。でも、まだ紫乃のこと忘れられてないし。どうすればいいのか分からない。


 すると、七瀬がパンと柏手を打った。


 「じゃあ、わたしもできるようになったら、鎖3本になるし。不完全な鎖でも、2本あれば支えられるんじゃないかな?」


 花鈴は頷いた。


 「うん。だから七瀬に魔法を教えてる。でも、もう一年ない。本気で取り組まないと間に合わない……」


 七瀬は魔法書をパラパラとめくった。


 「あ、これかな。留世りゅうせの秘術。……えと、術者の技量が足りない場合には、命を対価に捧げることで術を維持できる……。光希の魂を、この世に留める必要があるって、どういうこと? 光希は違うとこから来たの?」


 花鈴が言ってるのはマジなのか。


 俺は一年経ったら、どうなるのか。

 よく分からないが、少なくとも良い感じではないのだろう。


 だから、花鈴は魔術を使ってくれている。


 ちゃんと伝えとかないと。


 「あのな。2人とも。気持ちは嬉しいけど、自分の命を削るとか絶対やめてな。おれは、今2人といれて楽しいし十分だから」


 花鈴はふくれた。


 「イヤだ。光希いなくなったら、どうせボクも死ぬし」


 本を読んでいた七瀬は何かを発見したらしい。本を読み上げる。


 「留世の秘術……対象の魂を使用者と同じ世界に留める。術の効果中、対象は使用者以外と性行為ができない。なにこれ。ずるいっ」


 性行為できない……なにやら後半の効能が物騒すぎるんだが。

 

 七瀬は人差し指で俺を指した。


 「わたし気づいたんだけど、この魔術をつかえるようになっても、術を完成させるには、光希とキスしないといけないんじゃない?」


 たしかに。

 そんな感じはする。


 花鈴は、それは断固拒否らしい。


 不意に花鈴に頬に触れられ振り向くと、またキスをされた。花鈴は、七瀬に見せつけるように、露骨に舌を入れてくる。


 そして、好き勝手して唇をはなした。


 「……はぁはぁ。この通り、ボクと光希は既にそういう仲だし。七瀬が入り込む余地ないし」


 七瀬は唇をアヒルのようにすぼめた。


 「アタシだって……」

 七瀬も俺に抱きつこうとした


 「ちょっと、やめ……」

 俺が制止しようとすると、ドアが空いた。



 ……母さんだった。


 バタン。


 母さんはそのまま無表情でドアを閉めた。


 「………」


 「………」


 「………」


 …………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ