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第38話 ある女子のトラブル


 ことり先生は、俺を紹介してくれた。


 「絢香あやかさん。お待たせしました。こちらは3年の飯塚君」


 絢香は俺を一瞥すると、すぐに先生の方を向いた。彼女は、身長はことり先生と同じくらいで小柄だ。でも、胸がすごく大きい。Hカップくらいあるのではないか。先生も大きいが、それ以上だ。そのせいで、ふくよかに見える。


 少し気が強そうだが、顔は童顔で可愛らしい。と、思う。


 話を聞いていると、今回の騒動は、この絢香という子と、クラスメイトのりくという男子生徒のトラブルに端を発しているようだった。


 そして、絢香の味方をする女子の多くが陸がいるイベントをボイコット。その結果、合唱会の練習に影響が出てしまっている。


 ことり先生もトラブルの詳細は把握していないようで、絢香に質問した。


 「それで、陸くんに何をされたの?」


 「ほんとひどいんです。これ見てください」


 画面を覗き込むと、クラスで使われているトークアプリのようだった。このアプリは、個人間トークなどもでき、動作が軽くスペックを問わないので、中高生に人気のアプリだ。俺のクラスでも使われているが、動作が軽すぎるが故の誤爆が起きやすく、しばしばトラブルの元となっている。


 絢香の画面を覗き込むと、陸が絢香を「あのデブがさ」と言っている発言が残されていた。


 そして、そのすぐ後に「やべ、誤爆」という陸の発言が残っている。取り消し操作をしたようだが、時すでに遅し。絢香はその直後にルームから退室し、デブ発言が残ってしまったようだ。


 まあ、女の子にこの言い方は、たしかに酷いと思うし、絢香が、いたたまれなくて部屋を出た気持ちも分かる。


 俺は絢香を見た。

 顔も可愛い方だと思うし、きっと、太っているというよりは胸が大きすぎるのだ。


 (あれだけあれば、挟めるんじゃないか……? 前俺も未体験の夢のプレイ)


 ……こほん。

 うんうん。俺目線では、絢香は悪くはないと思う。でも、まあ。感覚は人それぞれだからな。


 陸にとっては、太っていると感じたのであろう。


 絢香は続ける。


 「わたし、そんなことを皆んなの前で言われて、恥ずかしくて死にたいです。きっと、陸は、いつも陰口していたに決まってます。正直、もう授業も出たくないし、学校に来たくありません」


 絢香の言い分はもっともに思えた。

 これは、一歩間違うと、合唱会うんぬんの問題ではなくなってしまいそうだ。


 「絢香さん。陸くんとは、小学校からの付き合いなんだっけ?」


 「はい。それなのにこんなこと言うなんて。余計に悲しいです」


 幼馴染か。

 きっと、そうそうは切れない関係だよな。


 「それから、陸君とは話してみたの? 勘違いとか誤解とかかも知れないし……」


 ことり先生や。

 「あのデブ」発言が勘違い•誤解っていうのにはさすがに無理があると思うぞ。


 俺としては、「君はムチムチなだけで太ってはいないよ!!」と元気づけたいところだが、思春期の女子にトドメをさしてしまいそうなので、余計なことを言うのはやめておこう。


 それにしても……。トークの誤爆がキッカケで、絢香が退出し、現実でも話していない。非対面でトラブルが完結してしまっている。スマホ世代ならではの喧嘩だな。


 前俺の時代でも、チャットで似たようなトラブルはあったが、皆んなPCの前でやっていたし、即時性や現実との距離感は、ずいぶん違うと思う。


 まあ、その分、なにかやらかすと、長時間、晒されてしまうのだが。見られる前にアクションすることは可能だった。


 絢香の中では完結してしまっているし、相手の言い分もあるだろう。

  

 これは、陸にも事情を聞く必要がありそうだ。

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