表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/60

第33話 いざ、雨宮神社へ。

 

 早速、指名された神社に向かうことになった。

 道すがら、花鈴が状況を説明してくれた。


 「光希、あの子は桜良さくらといってボクの中学のクラスメートで神社の娘なんだ。あと、教会の娘の藍紗あいしゃという子と3人で、日々、魔女と神々の聖戦を繰りひろげていた」


 へぇ。 

 ラグナロクみたいで、ちょっとかっこいいかも。


 「ふーん。聖戦ってどんなことをしてたの?」


 花鈴は口元を綻ばせ、得意そうに言った。


 「ふふっ。日々、一緒に体育で柔軟体操をしたり、水泳で競争をしたり、お弁当を一緒に食べたりだ!!」 

 

 魔女のラグナロクは随分と平和的だな。

 中学時代の花鈴に、昼ごはん食べてくれる友達が居たようでよかった。


 「あぁ、要は、お友達なのね」


 「ちがうっ。魔女が神の陣営と通じることなどないっ!!」


 どうやら、親友らしい。


 「それで、花鈴はなんで神社を怖がってるの?」


 「そ、それは……」


 花鈴はあまり言いたがらなかったが、どうやら、神社の娘に騙されて、しばらくの間、巫女修行をさせられていたらしい。


 しかも、その後は、巫女修行がご両親にバレて、年単位のお小遣い抜きになった、ということだった。


 花鈴は口を尖らせて話している。


 「あ、あいつら酷いんだぞ。書類にサインしたら、複写式の三枚綴りになっていてだな、二枚目が入信願い、三枚目が巫女修行申込書だったんだぞっ!! 魔女を騙して入信させるとか人でなしすぎる。お、思い出しただけでも武者震いが……」


 武者震いというより、恐怖に震える子猫のように見えるのだが。


 「それは災難だったな」


 「そ、そうなの。それなのに、桜良は笑顔で、あなたのためになれて嬉しい、とか言っているのだぞ? もはや、意思疎通不可。鬼や悪魔より恐ろしい……」


 それはそれは……。


 雨宮神社につくと、鳥居の外に可愛らしい女の子がいた。花鈴の話など、にわかには信じられないような、優しそうな子だ。


 その子はこちらに駆けてくると、花鈴に抱きついた。


 「かりんーっ。会いたかったよぉ♡ なんで、何千回もメッセージ送ってるのに。いつも無視するのさ」


 どうやら、相手は花鈴を大好きらしい。

 当の花鈴は逃げ回っている。


 花鈴は俺の背中に隠れた。


 「神の手先めっ。と、鳥居はぜーったいに通らぬからな」


 って、ほんと、どんだけ怖い目にあったんだか。


 桜良は言った。


 「大丈夫♡、今日は神社の外での修行だよ。なので、女の子2人は、これを着てね。名付けて、対魔特選装備:深淵の巫女服」


 なんだか厨二病な名前の服だな。

 魔女が対魔してどうすんの、という気もするし。


 「桜良さん、俺は飯塚光希っていいます。この巫女服、なにか特別な力があるんですか? 見た目は普通の服ですが」


 桜良さんは目を細めるながら、俺のことを値踏みするように見た。


 「ふぅん。貴方が光希さんですね。たしかに、呪いでがんじ絡めだわ。祓ってしまってもいいのだけれど、それも貴方のためにならなそうですね」


 桜良は、15歳とは思えない身体……いや、佇まいで、大人びている。


 「呪い?」


 たしか、前に花鈴も同じようなことを言っていたな。


 「呪いというより、鎖に近いかしら。さしあたりは、花鈴が居れば大丈夫そうですね」


 桜良はウィンクした。

 そして、俺の襟元を嗅ぐような仕草をすると、丁寧にお辞儀をして挨拶してくれた。


 「花鈴がお世話になってます。えっと、これは、ただの巫女服ですね。まぁ、深淵とかそれっぽい名前をつけておけば、花鈴が興味をもってくれるので」


 花鈴の方を見ると、巫女服を眺めて、なにかぶつぶつ言っていた。


 「深淵の……ほほぅ。いかにも魔女っぽい衣服だ。試着してその術式を盗むのも、また一興」


 巫女服に興味津々なご様子だ。

 たしかに花鈴はちょろい。


 すると桜良さんは、俺の手を握ってきた。

 花鈴が目をまん丸にする。


 「桜良、光希にさわるなっ」


 「わたし、この人気に入っちゃった♡ 結婚しちゃおうかな。ね、光希さん。どう? わたしのこと欲しくない?」


 桜良と目が合う。


 黒髪で奥二重の少女。

 花鈴と同い年とは思えない、たわわに実ったバスト。ぷるんとして、少しあつぼったい唇。顔は可愛いというより、大人びていて美しい。

 

 初対面の美人にプロポーズされるとか、男としては夢のシチュエーションだ。


 「ダメっ!! 光希も鼻の下のばすな」


 花鈴は半べそだった。

 その様子をみて、冗談っぽい表情で桜良はいった。


 「冗談のつもりだったけど、この人、良い匂いだし。光希さんと結婚すれば、花鈴とも親族かあ。結構いいかも♡」


 花鈴はプルプルしている。


 「光希の浮気ものっ。よりによって巫女に手を出すなんて、チン先をぶっ飛ばしてやるんだからああ」


 いや、浮気も何も、桜良さんとは初対面なのだが。それに、吹っ飛ばしたら、いずれ、お前も困るのでは?


 まあ、それはさておき。


 「桜良さん、花鈴で遊んでないで、そろそろ話を先に進めてくれませんか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ