第32話 冥府の瞳。
花鈴は俺の方をみると言った。
「光希。3人の魔女について調べたことがあるっていってたよな?」
花鈴。おまえ、どんどん口が悪くなるな……。
「あぁ。なんでも、赤、青、黒がいるって。黒は確か、死者を見渡す冥府の眼だとか」
「うん。黒は死霊術が得意なんだ。まぁ、品がない術……、こほん。その多くは代々引き継がれるんだけど、稀に、傍流の血筋に継承者が現れる」
「七瀬がそうだっていうの?」
「さあね。でも、その特徴の一つとして、霊感が異様に強いんだ。毎日、霊が見えるって異常。でも……傍流だと、術を継承していない。だから、力が暴走して不幸になったりする。……仕方ない。お節介してあげる。ほれ」
花鈴は、七瀬に紙を渡した。
「なにこれ? ……神社? 花鈴ついてきてくれるんでしょ?」
俺が覗き込むと、紙には「雨宮神社」と書いてあった。
神社?
あれ。神は魔女の敵じゃなかったっけ?
「いやじゃ。ボクは絶対にいかない。あ、あいつら、笑顔で洗脳するから怖いの……」
花鈴は震え出した。なにかトラウマでもあるのだろうか。膝を抱えると震える声で続けた。
「あそこには、本物がいるんだ。ひ、ひぃ……、と、とにかく。きっと相談に乗ってくれるから、行ってみるといい」
ふーん。
まあ、どうでもいいが、俺のピアノの練習は?
すると、花鈴のスマホがなった。
花鈴は、おそるおそる出たが、その指は震えている。
俺らにも会話の内容が聞こえきた。
「やほぉ。花鈴ちゃん。そろそろ何か困ってるんじゃない?」
意外にも、電話の相手は可愛らしい声だった。
「桜良。おまえ、やたら勘が良いな……。か、勘互いしないでよねっ!! 神の陣営に加わった覚えなんてないんだからっ!!」
花鈴よ。
お前はどこのツンデレ娘だ。
「わかるよ♡ 親友だし♡」
どうやら、電話の相手は花鈴の親友らしい。
桜良さんは続ける。
「んで、そこの子の面倒を見れば良いの?」
花鈴はキョロキョロしている。
「こやつ、霊が見えるようで。って、どこかから見てるのか?! まあ、いい。この子に力の制御方法を教えてやってくれないか?」
「んー。花鈴ちゃんも来るならいいよ♡」
「ひ、ひぃ。いやじゃ。いやじゃあ。ボクは死ぬまで、あの鳥居はくぐりたくない……」
「ふーん。じゃあ、お願い聞いてあげないっ。あ、それと、そこの男の子もつれてきなね」
どうやら、俺も行くことになってるらしい。
「ぼ、ボクはいかないぞ!!」
花鈴は抵抗しているが、なんだか小声だ。
よっぽど、電話の相手が怖いのだろう。
すると、電話の相手は言った。
「ふぅーん。じゃあ、お母様に花鈴が見つかったって言っちゃおうかなぁ」
見たかった?
こいつ、誰かに探されてるのか?
「や、やめてぇ……。おに、あくま。良心が痛まないの?」
「鬼でも悪魔でもないよ。巫女さんです♡ それに、なんで心が痛むの? 正しい事してるのに、痛む訳ないじゃん。んじゃあ、これから来なね」
そういうと、電話は一方的に切れた。
「だからイヤなんだぁ!! あ、あいつら怖いの。こわいよぉ。七瀬っ。ボク、いきたくないっ」
花鈴は泣いている。