第20話 ひさしぶりのナンパ
な、ナンパって今時の子もするのか?
でも、もう後には引けない。
ん十年ぶりのナンパだ。
きっと、神様も笑って許してくれるだろう。
よしっ。
なんて声をかけよう。
ヘーイ!! 彼女 とか。
そんな感じ?
今の俺の心拍数はきっと200くらいだと思う。
手汗も大量にかいている。
よ、よしいくぞ!!
……。
ちょっと、様子を見てからの方がいいかも?
右往左往して翔の方をみると、既に相手グループの中の1人と連絡先を交換しているようだった。
翔は、まるで「後でおこぼれやるからさ!!」とでも言いたげに、俺にウィンクをした。
すごいな。
俺は旧人類だから、無理みたいだ。
女の子は3人組で、2人は翔と笑いながら話している。
無理ー……。
凹んでいると、相手グループの1人の子が俺の横に座った。
顔を直視できないから分からないが、黒髪で前髪が揃っている。白と黒のセーラー服がよく似合っている。
「翔さん、すごいですね。わたし、ナンパされたの生まれて初めて。でも、ああいうノリは苦手かも」
「はは。あいつサッカーに真剣だし良い奴ですよ」
すると、その子は口に指を添えた。
「わたし、輪に入っていけなくて。よかったら、ナンパが終わるまで、一緒に時間潰ししませんか?」
俺はその子の方を見た。
真っ白な肌に、長いまつ毛。
瞳は真っ黒で、ピンクのリップをしている。
すごく可愛い子で、びっくりしてしまった、
「あ、あの。おれ光希っていいます。都護夜高校の……」
すると、その子は首を傾げた。
「あれっ。都護夜高校って確か共学じゃ」
やばい。
都護夜のことを知ってるっぽいぞ。
「あ、あの。俺ら女友達いないし、2人男子校みたいっていうか」
その子は目を細めた。
「ふぅーん。お友達のこと一生懸命庇ってて、可愛い♡。あ、わたし、雫っていいます。隣駅の神蘭女子一年の四宮 雫っていいます」
ど、どうしよう。
会話が続かない。
一年生ってことは、花鈴と同い年か。
前俺とは、親と子ほど歳が違う。
これくらいの子と下ネタ以外の共通の話題がない。そして、この子は、そういうの絶対無理そうだし。
やっぱ、無理。
翔の方を見ると、絶好調そうだった。サッカーの話をしている。
「もうすぐインターハイだからさ。絶対、観にきてよ!! ユキちゃんとマイちゃんが来てくれたら、絶対勝てると思うし」
すると、ユキちゃんらしき女の子がいった。
「絶対、観に行くっ!! さっき教えてもらった番号に連絡するね。んじゃあ、わたしらそろそろ帰るから。2人で続き食べてね」
雫たちは、もう帰るらしい。
俺のナンパは大失敗かあ。
すると、雫が言った。
「あの、わたし、ナンパされたの生まれて初めてなんです。きっと、もうないと思うし」
俺は声かけてないから、ナンパされていないと思うぞ? それに君ほど可愛ければ、今後、死ぬほどナンパされると思うし。
雫は続けた。
「だから、よければ、わたしとお友達になってくれませんか?」
雫はそういうと、紙切れを渡してきた。
紙を見ると、電話番号が書いてあった。
ナンパは失敗したが、どうやら生まれて初めての逆ナンパをされたらしい。




