6 スキル集め
ダニとして生きていくと決めた。
そうと決まれば、とことんスキル集めだ。
鷹から血をかすめ取った私は8本脚を広げて大空に飛び出した。
新スキル【滑空】――!!
スイーッ、と青い空に斜線を引いて、私は変な色の森に飛び込んだ。
でも、滑空というほど滑空できてないな。
パラシュートって感じ。
翼がないからスキルを活かしきれないらしい。
でも、これはこれで便利だな。
上から【遠視】を使えば獲物を見つけやすい。
効率的に吸血できそうだ。
枝の上で休む猿の親子を見つけた。
私は母猿の肩に落下し、自慢の牙を突き立てた。
もちろん【痛覚鈍化】は忘れてないぞ。
『スキル【木登り術】【樹上歩行】を獲得しました。』
オッケー、スキルゲット。
次だ、次。
私は【敏捷】で勢いをつけて再び滑空した。
食事だけを考えれば、同じ獲物からたっぷり血を抜き取るほうがいい。
でも、この体はすぐお腹がパンパンになるし、パンパンだと身動きひとつ取れなくなる不良品だ。
だから、少し吸ってスキルをゲットしたら、すぐ次の獲物を探す。
こうすれば、効率的にスキルを集められるって寸法だ。
私ゃ世界一頭のいいダニだねえ。
木の根元で大きなネズミを発見。
やたら目力が強いな、こいつ。
私は素早く噛みついて、血管を探り出した。
『スキル【威圧】を獲得しました。』
どうも大きな目は相手を威嚇するための武器らしい。
ネズミにガン飛ばされた猿の親子が悲鳴を上げて逃げていった。
使えそうだね、このスキル。
ハイ次々。
【木登り術】でバビューンと樹上に駆け上がると、空中に浮かんだ2つの目玉を見つけた。
なんだこりゃ。
目だけの魔物とか!?
こんなときは【解析】だ。
例のごとく、頭の中に文字が浮かんできて、
『分類名【カメレオン】』
『種族名【――――
私は直感的に右に跳んだ。
ほぼ同時に何もない空間に大きな口が現れた。
長い舌がさっきまで私がいたところを叩いて、口の奥に戻っていく。
カメレオンか。
こりゃすごい。
体が景色に完全に溶け込んでいる。
【解析】と【敏捷】がなかったら危なかった。
その擬態スキルはぜひとも欲しい。
爬虫類は専門外だけど、飲んで飲めない血でもあるまい。
【かまいたち】――!!
私はギリギリのところで舌攻撃を躱し、風の刃をお返しした。
バチュン!!
ちょん切れた舌が細枝に絡みつく。
カメレオンはのたうち回ってから下界に落ちていった。
舌さえあれば十分十分。
私は断面からあふれ出す鮮血に顔を突っ込んだ。
美味しく……ないな。
冷めたカレーの上澄みだけを舐めているみたい。
でも、我慢だ我慢。
透明化スキルとか最高じゃん。
いろんな悪さをやりたい放題だグヘヘ。
『スキル【眼球如意】を獲得しました。』
……あれ、透明化は?
眼球如意ってなんだ!?
『左右の目を別々に動かすことができる。』
なんじゃそりゃ!?
クッッソどうでもいいスキル来たなおい。
いつどこで何に使えるんだコレ。
睨めっこなら勝てそうだが。
爬虫類は専門じゃないからなぁ。
狙ったスキルを引けるとは限らないか。
残念。
◇
そんな感じで、たまーにハズレを引きつつ、私は来る日も来る日も血を吸いまくった。
『種族レベルが上がりました。【Lv.86>Lv.89】』
『スキル【かまいたち】がレベルアップしました。【Lv.7>Lv.8】』
レベルがポンポン上がっていくなぁ。
さっきなんて、ちょっと大きい石を登ったら【敏捷】がLv.7に上がった。
ゲームとかと同じで弱い種族ほど要求される経験値が少ないのかも。
ま、レベルが上がったところでしょせんダニはダニなんだけどね。
Lv.80でもLv.2のバッタに吹っ飛ばされたし。
強くなったと過信して、気を抜いちゃダメだ。
そういえば、【解析】だけはLv.2でストップしたままだな。
困ってないから別にいいけど。
……おぅ。
急に眠気が襲ってきたので、私は落ち葉の下に逃げ込んだ。
この感覚、フォルムチェンジの前兆だな。
今、【若虫】だから、いよいよ【成虫】だ。
もうすぐレベルも100になる。
100になったら種族進化で上位種族になったりするのだろうか。
進化を繰り返せば人間になれる未来もあるかもしれない。
わくわくしながら私はまどろみの向こうに沈んでいった。
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