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3 サバの味噌煮


 ぎゃはああああああ!??

 空から巨大な口が降ってくる。

 私は全力でジャンプした。

 くちばし山脈から飛び降りて、羽毛の大平原を突っ走る。

 短い脚を死に物狂いで動かして、逃げろ逃げろ!

 私、逃げろッ!

 食われる前に全力猛ダッシュだ。


 けっこう速く動けているつもりだけど、しょせんはダニだ。

 とろとろしているうちに、ドンと強い衝撃。

 ふくろうの死体が大きく揺れて、私は羽毛の弾力に弾き飛ばされ浮遊感を味わった。

 そのまま、500メートルくらい落下する。

 ダニの500メートルだ。

 実際には50センチくらいだろうけど。


 こてっ。


 背中から落っこちた。

 痛くはない。

 体重がダニレベルで助かった。

 人間なら潰れているところだ。


 木の根に隠れてから、何が起きたのか【遠視】で見てみる。

 一言で言えば、猫だ。

 でも、山みたいにデカイ。

 そして、尻尾の先に鎌がついている。

 あれでふくろうを仕留めたんだな。


【遠視】で【解析】できるかな?

 むーん……。

 少し読み込みに時間はかかったけど、頭の中に文字が浮かんできた。


『分類名【山猫】』

『種族名【鎌尾猫シックルテール】』

『種族レベル【Lv.7】』


 やっぱ猫か。

 迫力は巨大な虎だけど、人間目線では普通に猫サイズなんだろうな。

 ふくろうの首筋に噛み付いて振り回している。

 あーあー、血が飛び散っているじゃないか。

 もったいないなあ。


 我が物顔で立ち去ろうとするシックルテール。

 振り落とされた上に踏み潰される兄弟たちを見て、私はなんだか悔しくなってきた。

 兄弟たちの仇討ちだ。

 というか、単純にまだ腹ペコだ。

 お前の血、もらい受ける!


 私は悠然と歩くシックルテールに飛び移った。

 もっもふもな体を這い上がり、お腹の柔らかそうな部分に狙いを絞る。

 そして、こうだ!


 ブス――!!


 牙を突き立てると、【傷口拡大】でまたたく間に私の半身は皮膚の中に食い込んだ。

 血管は……ここだ!

 弾力のある壁を貫くと、ドバドバと血があふれ出してきた。


 くー、たまらん。

 この美味しそうな香り。

 今度こそ腹いっぱい飲ませてもらうとしよう。

 ふくろうがハンバーグだとしたら、シックルテールはサバの味噌煮って感じだな。

 私はフィッシュよりミートだ。

 でも、これはこれで美味しいな。


『種族レベルが上がりました。【Lv.16>Lv.27】』

『スキル【かまいたち】【敏捷】【魔爪】を獲得しました。』


 ほーん、かまいたちか。

 カッコイイな。

 ふくろうを仕留めたスキルだとしたら、強そうだ。

 ダニにも天敵はいるだろうからね。

 強そうなスキルは大歓迎だ。


 ……んおっ??


 急に天地がひっくり返った。

 スキル【振動感知】でシックルテールの様子を探ってみる。


 ふむ……。

 振動だけでいろんな情報が読み取れるね。

 どうやら、地面に寝転がって腹を上にしているみたいだ。

 何をやっているんだろう?


 意識を集中してみると、シックルテールの動きが手に取るようにイメージできた。

 お腹を気にしているみたいだ。

 ちょうど私が噛みついている辺りを。


 なんだぁ?

 もしかして、痛いのか?

 私の牙はすべてを切り裂くからね。

 どうだね、自慢の牙の味は?

 苦しかろうて。

 私の兄弟たちを踏み潰した報いを受けさせてやろう。

 ついでに、怖い病気を媒介してやるから覚悟しろ。


 私は犬派だ。

 もっと苦しめ猫助がァ!

 調子に乗って牙を押し込んでいると、一段と強い揺れが私を襲った。

 乗っていた飛行機が落ちたみたいな衝撃だった。

 それが何度も何度も繰り返される。


 あれ、これヤバくない?

 掻いてないコレ!?

 実はただかゆいだけで、掻きむしってない!?

 爪でガリガリって……!!


 皮膚に埋もれている上半身はともかく、だ。

 私の下半身は外に出ちゃっている。

 もし引っ掻かれでもしたら、あわわ……!

 私の下半身はミンチになるに違いない。


 離脱だ!

 と思ったけど、あれ、あれ!?

 牙のギザギザが引っかかって抜けない。


 いっそ【かまいたち】で肉を切って奥に入り込むとか!?

 でも、血に呑まれて息ができなくなったら終わりだ。

 私はサバの味噌煮まみれで死にたくないぞ。

 どうしよ!?

 どどど、どうしよ……!?


 と散々慌てふためいた後で気づいた。

 そういえば、便利なスキルを最初から持っていたことに。


【痛覚鈍化】――。


 アホだな、私。

 最初からコレを使ってかゆみを感じないようにすべきだった。

 蚊でもやっていることだ。

 蚊以下だな、私は。

 ダニだもんな。


 はい、【痛覚鈍化】。

 スキルを発動すると、シックルテールは嘘みたいに大人しくなった。

 気を取り直して、のんびり味噌風味を堪能させてもらうとしますか。


 ……ところで、この悪い夢。

 いつになったら覚めるんだ?

 覚めるよ、な?


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!

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よろしくお願いします!

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