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13 素寒貧


 城門が近づくにつれて、私の不安は大きくなっていった。

 バレないよね?

 ダニだってバレないよね?

 山賊の親玉という極悪人を間借りしているから余計に怖い。

 ダニだと見破られても山賊だと見抜かれても即アウトだもんな。


 私はドギマギしながら門番の元に向かった。


 この見上げるような城壁がすごい威圧感なのよ。

 もっとお花とか植えて、親しみやすい外観にしてくれよな。

 近寄りがたいだろうが。

 それで、いいんだけどね。


 よし、ちょっとおさらいしよう。

 私は旅の武芸者。

 武者修行の真っ最中。

 名前はダニエル。

 歳は30。

 そういう設定にした。

 身分証はないけど、ないものはどうしようもない。

 疑われたら、ダニモードで逃げればいいや。

 傍目には山賊が自首してきたように見えるだろう。


 門番は退屈なのか寝起きのトドみたいな顔であくびしている。

 優しそうな人で、えがったー。

 そいじゃ、オイラはちょっくら失礼しやすよー。

 あーい、お世話になっとりまーす。


 私は手刀を切って、横を通り抜けようとした。


「おい、お前!」


 ギクリ……。

 トドの人が顔を覗き込んでくる。


「『赤犬』の領袖に風貌が似ているな」


 ギクギク……ッ。

 あちゃー、面が割れていたか。

 このトドの人、ヌケてる顔して意外とよく見ているね。

 それとも、その顔は私を油断させるスキルか何かなのかな?


「フードを取って、顔をよく見せろ」


「山賊の領袖? それって、こんな顔っすか?」


 私は【眼球如意】を発動しながらフードを取った。

 右目は時計回りで、左目は反時計回りだ。

 ちなみに、あごもシャクレさせている。


「お、おおお。なんか、おおおお……。すごいな、お前……。こんな頭おかしそうな山賊の親玉がいるわけないか。よし、通れ。引き止めて悪かったな」


 おっし、通してくれた!

 こんなアホスキルでも役に立つときがあるんだな。


 城門をくぐり抜けると、石造りの綺麗な町が広がった。

 人間がいっぱいだ。

 活気を感じる町だけど、全身鎧の人とか馬に乗った紳士とか時代感が古いな。

 近代文明は見当たらない。

 別にいいけど。


 目の前を年頃の女の子たちが駆けていった。

 私の胸はズキリと痛む。

 こんな酒臭いおっさんより、私もあっちがいいなぁ。


【宿主支配】を使えば、すぐにでもボディーを交換できる。

 でもなぁ……。

 他人の人生を乗っ取ることになるから気軽にできることじゃない。


 寄生していい人間って限られているよな。

 山賊とか、死刑囚とかさ。

 どこかに美少女山賊とかいないものかねぇ。


 屋台から肉を焼く香ばしい匂いが流れてきた。

 腹がぐぅぅ、と情けない音を立てる。

 お腹がすいた。

 これは、ダニの欲求じゃないな。

 ガルススのほうが空腹みたいだ。

 めちゃ強な猫と一戦交えて、夜通し歩いたからなあ。

 エネルギー切れ寸前なんだろう。


 屋台のおっちゃんが焼き鳥みたいな串料理を扇のように広げてニカッと笑った。

 悪いね、おっちゃん。

 さっきトドに通行料をかっさらわれて、私はすっかり素寒貧なのさ。


 あー、腹減った。

 ダニのときのほうが食うに困らなかったな。

 皮肉な話だ。


 人間の社会で暮らすには金が要る。


「おっちゃん、パーっと稼ぐなら何がオススメ?」


「そりゃお前さん、冒険者だろうよ。家柄・学歴・人種不問。必要なのは力だけって世界だ。あんた、腕っ節が強そうだし、そこの冒険者ギルドで依頼受けてみなよ」


 冒険者か。

 魔物とか倒したり、ダンジョンに潜ったりするあの冒険者で間違いないだろうな。

 昨晩、山賊に応戦していたのも、たぶんそうだろう。


 おっちゃんは売り物にならないコゲ肉を私の口に放り込んでくれた。


「初依頼の前に寄って行きな。1本サービスするよ」


「助かるよ、おっちゃん」


 私は空腹の体を引きずって、冒険者ギルドなる建物を目指した。


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!

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