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無理なく始める節約生活!  作者: 琥珀 大和
従兄弟のFPは有能だった!
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甘くないぞ、出産育児休暇①

俺こと三木光太郎は、昨年に結婚した妻の遥香との間に子どもができて浮かれていた。


「これで俺もパパになるんだぁ。」


夫婦揃って子ども好きで、正月や盆に帰省する時には親戚の子供たちともよく遊んでいた。


自分たちにも早く子どもが誕生しないかと、毎晩子作りに励んでいたのがようやく実を結んだのだ。


そして・・・


「あらためて、おめでとうございます。やはり双子ですね。」


妊娠五週目のエコー検査から、何となく二つの胎嚢らしきものが見えるといわれていた。


そして、八週目にそれが確定的となったのだ。


夫婦揃って喜び実家へと報告に行くと、待っていたのは現実的な母親の言葉だった。


「双子・・・マジか!?」


「マジですよ、ユキさん。」


遥香は俺の母親をユキさんと呼ぶ。


実は俺たちはもともとご近所さんで、親同士も仲がめちゃくちゃ良かった。


父親同士が小学校からの同級生で、今もゴルフと飲み仲間という間柄。さらに母親同士は趣味が同じでいつも一緒に遊び歩いている。


まあ、俺たち夫婦にとっては小姑問題も起こらないだろうと安心しているのだが、人生の大先輩としてあまりにもリアルな話を持ち出されることになった。


「あんたたち、これからちゃんと生活していけるの?」


「え?生活やっていけるのかって、俺たち共働きだよ。双子だからって、そこまで厳しくないんじゃ・・・」


妊娠が発覚してからは、いろいろと考えることがあった。


ただ、双子とわかったのは今日のエコー検査が初めてだったのだ。


確かに、ひとりとふたりでは育児の手間も費用も異なるのだろうけど・・・


「甘ーいっ!育児をナメんじゃないわよ!!」


母の剣幕に俺は黙るしかなかった。


「ユキさん、勉強不足な私たちのために教えてくれますか?」


妻の遥香は冷静だった。


何となく、妊娠がわかってから急に大人びた気がしていたのだけれど、母親としての自覚ができたってところだろうか。


いやいや、他人事じゃないな。俺もしっかりしなきゃ。


「ちょ、ちょっと待って。車の中にメモ帳があるから取ってくる!」


そう。


俺はいつもメモ書きをして後から理解が追いついていない所を補填する。不器用といわれるかもしれないけど、そうやって受験も就職もクリアできた。


まあ、とはいっても、三流大学卒に中小企業就職だけどね。


「待ちなさい。私の話も実体験でしかないし、最近のこととはズレがあるかもしれないから。」


「え?」


「ジェネレーション・ギャップってやつよ。私があんたを育てた時代とはいろいろと変わってるし、テレビとかでやってる情報もどれが正しいかわからないでしょう。」


「じゃあ、どうしたらいいの?」


「自分で調べなさいって言いたいところだけど、それで間違った知識をつけちゃうと怖いし・・・ああ、そうだ!良い人がいるじゃない。」


「良い人?」


「ほら、私の甥─あなたからすれば従兄弟の隆人よ。」


隆人─森本隆人


小さい頃によく遊んでもらった従兄弟の兄ちゃんだ。


俺とは十歳くらい年の差があって、確か国立大卒で一部上場企業に就職したエリートだった。


「隆人兄ちゃんって、何の仕事してるんだっけ?」


流石に就職先の業種までは知らない。


「あの子、今は独立して事務所を開いてるわよ。」


「事務所?」


「そうよ。ファイナンシャル・プランナーと社会保険労務士、あと中小企業診断士だったかな。企業や資産家向けにコンサルティングをやっていたはず。それに、一緒に起業したパートナーが、司法書士や行政書士の資格を持っていたんじゃないかな。」


「え、それって、俺みたいなの相手してくれるの?」


企業や資産家向けのコンサルティングって、俺みたいな庶民とは全然分野が違う気がする。


「ん~、その辺は詳しく話を聞いてみてからね。あの子のやっている事なんて、私もよくわかんないし。」


なんてテキトー。


というか、昔はともかく、今の俺なんて相手してくれるのだろうか。


一抹の不安を抱きながらも、俺は隆人兄ちゃんの連絡先を受け取った。




「はい。森本です。」


「あ、えっと、三木光太郎といいます。隆人兄ちゃん?」


隆人兄ちゃんの携帯に電話してみると、久しぶりに聞く渋い声が帰ってきた。


「ん?ああ、光太郎か。正月以来だな。」


今年の正月に帰省した時に、すれ違いだが挨拶だけしていたのを思い出す。因みに、帰省といっても同じ市内に住んでいるので、車で30分とかからない。


「元気にしてる?」


「ああ、俺は元気だ。そっちは?」


「元気だよ。それと子どもができた。」


「お~、そうか。おめでとう。何か祝いをやらないとな。」


「それなんだけど、家計についての相談とかしてもらえないかなと思って。」


断られるんじゃないかと思ってドキドキした。


普段は仕事の話なんかしないけど、隆人兄ちゃんはかなりやり手だと親戚筋でも有名だそうだ。


「ああ、かまわないぞ。子どもができたなら、いろいろと考えないといけないだろうしな。そうだな、平日に休み取れるんだっけ?」


幸いなことに、俺も遥香も土日に出勤することがあり、平日に振替休日をとることがあった。


「来週の水曜日なら妻も休みだけど。」


「わかった。午後一なら空いてるから、事務所に来てもらえるか?」


住所を聞くと、県内でも一番利用客の多いターミナル駅の近くだった。しかも駐車場まであるらしい。


「それじゃあ、次の水曜日によろしくお願いします。」


「ああ。念のために去年の源泉徴収票と直近三ヶ月分の給与明細、それと加入している保険の証券を夫婦ふたり分とも持って来てくれないか。」


「保険って、車とかも?」


「ああ、全部だ。」


「わかった。」


ちょうどいい。


保険って無駄金を払うこともあるって母さんにも言われていたことだし、このタイミングでプロに見てもらうことにしよう。



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