天才の私のデータは100%だ!!間違ってもそういうキャラのテンプレである「データを上回ったただと!?」などというセリフは一切ない!!
「くっくっく、全てがデータ通りですね」
そう言いながらその男、ズノーは観客席から試合を眺めていた。ズノーがいる闘技場では観客が歓声を上げながら真ん中で戦っている両者に熱狂していた。
ズノーは現在、この闘技場で行われるトーナメントに参加している。参加者は全員大した敵ではない。
「ふむ、完璧だな。データに狂いはないでしょう」
ズノーはいわゆるデータ系のキャラだ。何が起こっても「データ通り」と対応してしまう。こういうキャラは大抵、予想を遥かに上回る「データが上回っただと!?」というようなセリフがお決まりとなっている。
もちろんズノーは天才なので間違っても「データが上回っただと!?」というようなデータキャラにありがちなセリフを言うはずがない。
「データによるとこのシュジンコーというやつに気をつければ問題ないでしょう」
ただ一つ懸念事項シュジンコーという男だ。こいつは何だか秘めたる力を持っているような気がするが、問題はない。なぜならズノーのデータは確実だからだ。
「お、次の試合はシュジンコーですか」
そのシュジンコーの話をしているとその本人がフィールドに現れる。対戦相手は何だか弱そうな奴だ。
「試合開始!」
「うおおおおおおおお!!」
「はああああああ!!」
その勝負は一瞬で勝負が決まった。シュジンコーの圧勝だった。
「あそこまで瞬殺するとは...やはりデータ以上の何かを秘めている...?」
ズノーはそんなことを考えていた。だがそんなものがあったとしても、ズノーの勝利は揺るがなかった。
このトーナメントにはシュジンコー以外に強いやつがいないため徹底的にこのシュジンコーという男を調べ上げ弱点を探した。そして必ず勝てるという勝ち筋を見つけたので負けるはずがない。
「クックック、楽し見にしていてくださいよ?」
そう言いながらズノーはどこかへ向かった。その場所はシュジンコーの元だ。廊下を歩いているシュジンコーを見つけてズノーは声をかける。
「これはこれは、第一試合お疲れ様でした」
「あんたは...?」
「わたくしズノーと申します。このトーナメントの参加者でございます」
「ということはこれから当たるわけか」
「ええ、でも残念ながらあなたがわたくしに勝つのとは不可能でしょう」
そう言いながらズノーは不気味に笑みを浮かべる。
「そんなのやってみないと!」
「あなたの勝率は0%。データがそう物語っているのですよ」
「だったら、そのデータを超えてやるさ!」
「ええ、楽しみにしていますよ」
シュジンコーが去っていくのをズノーはその後ろ姿を見えなくなるまで眺めていた。シュジンコーと当たるのはもう少し先になるため、今から戦いが楽しみでしょうがなかった。
...だが。
「勝者!!マケル選手!!」
「はっ...?」
順調に勝ち進んだズノーはシュジンコーの試合を見て絶句した。対戦相手のマケルとかいう明らかにやられるだけのモブっぽいやつにシュジンコーがやられたのだ。
「...これは困りましたね...いや、予想通りですかね」
データを上回るどころかデータには無いことをされてしまったのだ。流石の展開にズノーは困惑する。
「予想通り」と強がってはいるが予想外な展開にその頭の中はパニック状態になっていた。だが、ここで間違っても「データがない」やら「データを上回る」などというデータキャラのやられセリフを言ってしまえばやってることは同じなのでそう強がるしかなかった。
「あの者の事を少し聞いておきましょうかね」
そう言って走ったズノーはシュジンコーを見つけると話しかけた
「...何しに来た?」
「無様でしたねえ」
「なんとでもいえ」
「でもそれほど、あの者がデータになかったという事ですね」
「...ああ」
「ま、せいぜいわたくしも頑張りますかねえ。せっかく見つけたライバルを潰すような空気の読めない奴を叩き潰すしたいので」
「...お前と戦えないのは残念だったが、また機会があるだろうさ」
「ええ」
シュジンコーは手を挙げて去っていく。またその後ろ姿をズノーはただ見ていただけだった。シュジンコーを見送ったズノーは「さて、どうしますかねえ...」とだけ呟いた。
「優勝は、ズノー選手!!!!!」
ズノーhs勇者を倒したマケルという男と戦った。その結果瞬殺だった。データ通り本当に強いというところはなく、なぜこんな奴がシュジンコーを倒せたのかすら謎なぐらいだ。
「優勝したズノー選手は選手のデータと取っていたとか」
「はあ」
「勝因はそこですか?」
ズノーは深呼吸をして、観客に向かってこう言った。
「...データなんてもうアテにしません」