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黒き森の狼 ~ある狩人の日記より~  作者: 十万里淳平
第9章 -黒き森-
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第5話 共闘

 爆発が集中した辺りの壁は粉々に吹き飛び、小屋は半壊。

 ブランがフローレンスを守っていた一角だけが辛うじて被害を免れている程度。


 そんな中で彼女を守っていた魔獣の身体には、木々の破片が体のあちこちに突き刺さっている。


 身を挺して、ブランはフローレンスを爆破の破片から守っていたのだ。


 一方では、千切れた丸太や漆喰の塗られた厚い板、屋根板などの瓦礫の中から、ゲシノクが怒りの表情ではいずり出てくる。


「き、き、貴様ら! ボクを殺す気か!?

『障壁』がなかったら死ぬところだったぞ!!」


 そんな怒号などどこ吹く風で、ヒュウガとシヴァは巨人の動向を見定めた。


「ダメか?」


「当然だな。」


 シヴァの言葉にヒュウガが答える。


 ヒュウガは既に遺跡の巨人がどのようなものなのかを知っている。


 こんなチンケな爆発など物ともしないだろう、とヒュウガは確信していた。


 事実、爆発の中心にいたはずの巨人は、鈍いながらも動きは先ほどと露ほども変わっていない。


「ありゃ全く効いてねぇな。

 あの爆弾に意味はあったのかい?」


「意味はある。

 これで動き回れる空間が増えた。

 攻めるにしても避けるにしても、十分な広さが欲しいだろう?」


「違いねぇ。」


 ヒュウガが身を、ゆるり……と揺らがせた。


「先に行く。」


 その一言を残し、ヒュウガは一陣の風になって、巨人に挑みかかっていく。


「おっと、抜け駆けかい?」


 それを同じ速度で追うシヴァ。


 猛攻が始まった。


 拳脚を乱れ飛ばし、巨人の全身に打撃を叩きこむヒュウガ。

 また一方のシヴァは、目にも止まらぬ剣技をもって、全身を斬り裂いていく。


 対する鈍重な巨人の攻撃は二人になんなく躱され、猛攻は留まる事を知らない。


 それでもなお、ゲシノクの顔には余裕の笑みが浮かんでいる。


 数分後、肩で息をする二人があった。


「くそっ……どうなってやがる!?」


 忌々しそうにシヴァがつぶやいた。


「斬っても斬ってもロクに手ごたえがねぇ……。

 まるで蜂蜜でも斬ってるような手ごたえだ。」


 見れば、当の巨人は先の爆発でできた穴に足を取られて、立ち上がろうともがいている。


 その隙を突いて、シヴァのつぶやきにヒュウガもまたつぶやきで答えた。


「流体金属……。」


「なんだそりゃ?」


「ダチに聞いたことがある。

 世の中にゃ水みたいな金属があるってのをな。

 あの巨人はなにかそういうものでできてるんだろう。

 俺の打撃もまるで手ごたえがねぇ……。」


「どうするよ……このままじゃ、コッチはジリ貧になる一方だ。」


 シヴァの言葉を受けたヒュウガの横顔に、一筋の汗が伝う。


 その汗が顔から流れ落ちようかと言う一瞬、ゴオッというつむじ風のような声が轟いた。


「弱点は胴体中央!」


 その場にいた全員が声の主を探し、その方角へを顔を向けると、そこには満月を背に受けた何者かが、高い杉の木の天辺にすっくと立っていた。


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