第3話 侵入
「『壊滅部隊』、総勢二十六名!
欠員ございません!」
点呼役の男がやる気満々の声を張り上げて、『欠員なし』の結果を報告する。
今回の『遠征』の部隊は、ゲシノク、隊長のグロス、副隊長のシヴァ、そして二十六名の部隊員で構成されている。
道中、一人も逃げ出すことなく、同時に粛清もされることがなかったのは、結構稀有なことでもある。
それを聞いたシヴァが、ノンビリをした口調で口を開いた。
「さて……ココからですかなぁ……、」
目の前には有刺鉄線の張られた杭が何本も立てられている。
マウル王国とカーライル帝国との境界線だ。
ゲシノクはそれを見て、全体に指示を出す。
「もっと南だな。そこに鉄線が切られた個所があるはずだ。」
行軍が南へと続く。
しばらく行ったところで、ゲシノクの言った通り、それと解らないように鉄線が切られている箇所が見つかった。
軍隊が進むには小さいが、個人で進む分には問題ない。その程度の切り口が、そこには存在している。
恐らく帝国側に張られた鉄線にも、同様に切られた箇所があるのだろう。
「よし、俺が先行する。その後に続いて、一人ずつ進め。」
グロスが野太い声を響かせて切れ目をくぐった。
続いてゲシノクが。それに倣って部隊員たちも、周りに気を付けながら続々と切れ目をくぐっていく。
たっぷり三十分はかかっただろう。
最後にシヴァが帝国側に到着し、再び点呼が行なわれた。
「静かだねぇ……。」
点呼の声が響く森の中、シヴァがボソリと呟いた。
「何が言いたい?」
ゲシノクが神経質そうな声でシヴァに尋ねた。
「いえ、ね。
金貨の件を考えてるんでさぁ。」
「それがどうした。」
シヴァののんびりした声を聞き、ゲシノクがイライラした声でさらに尋ね直す。
「何でも金貨は狩人が寄こしたモンなんでしょう?
だったらその狩人は、俺たちみたいなのをお宝に近付けさせやしねぇだろうと思うんですよ。
こっからは多分……順風満帆とはいかんでしょうなぁ。」
ゲシノクの頬がピクピクと痙攣した。
怒り、焦り、恐れ……その顔は内面を隠しきれない。
対するシヴァの声はどことなく楽しそうな響きがあった。
その二人の会話に、やはりグロスが割って入る。
「長官殿。二十六名、欠員なしとの事です。」
ゲシノクはできる限り気にしなかった体で総員に号令をかけた。
「よし、二列縦隊で進軍!
斥候が進んだ地点まで進め!」




