第3話 『尋問』
マウル王都の中央区画にある国防基地。その離れにある諜報部指令所に、一人の青年将校が足を踏み入れた。
すれ違う人間の挨拶に軽く手を上げて答えつつ、彼は奥へと進んでいく。
地上階最奥にある長官室の前まで来た将校は、その呼び鈴を鳴らした。
長官室の扉が開くと、そこにはまだあどけなさの残る、さらに年若い兵が敬礼をして将校を待っていた。
「長官は?」
将校の真正面からの質問に、兵が少し言葉を詰まらせて答える。
「『尋問』……です。
なんでも特殊任務に向かった『壊滅部隊』の斥候が不手際を起こしたとか……。」
将校は大きくため息をつくと、部屋の隅に置かれた五十クランほどの獅子の像に歩みよった。
彼はその口を探り、奥にあった鎖の輪を口の外へと引っ張る。
鎖がある程度引きずり出されたところで抵抗があった。
その抵抗に呼応するかのように、反対側の壁一面に立てかけられた書棚がゆっくりと回転していく。
十分に通り抜けられる程度の隙間が開いたところで、将校はその隙間へと入ろうとした。
そこに少年兵がおどおどと口を開く。
「あの……長官は相当に気が立ってました。
下手をすると、少佐もとばっちりを受けかねませんよ……。」
少佐と呼ばれた将校は苦笑いを見せながら、言葉を返すこともなく隙間の向こうの階段を降りていく。
薄暗い地下室の奥からは、怒号と鞭の音、そして男の悲鳴がわんわんと鳴り響いていた。




