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黒き森の狼 ~ある狩人の日記より~  作者: 十万里淳平
第7章 -斥候-
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第1話 罠

 雪降り積もる森の中を、カーキ色のコートを身に纏った男たちが四人進んでいた。


 積雪はまだ足首ぐらいまでしかないものの、足取りを重くするのには十分な量だと言えるだろう。


「けっ! このクソ寒い中、国境越えろたぁどういうこった!?」


 四人の内、一人が悪態を吐く。


 顔を見れば、他の三人も一様に苦虫を嚙み潰したような表情だ。


「しょうがねぇだろ。

 あの長官殿に逆らったら、散々拷問受けて首が刎ねられるんだからよ。」


「それにしたって、妙に急かしてたぜ?

 この先の洞窟に何があるんだ?」


 一人が地図を広げて紙の上に描かれた洞窟の辺りを眺め始める。


 別の一人がうんざり顔で全員に向けて口を開いた。


「なんでもよ、財宝があるんだとよ。」


「「「マジかよ!?」」」


『財宝』という言葉を聞いた瞬間、うんざり顔の男を除いた三人の目の色が変わる。


 三者三様、それぞれが下卑た笑みを見せ、思い思いに欲望を口にし始めた。


「金が入ったら、まずは酒だな!

 水みてぇなビールはもううんざりだ!」


「博打もやり放題だぜ?

 大穴にドカンと賭けてみるのも面白れぇじゃねぇか!」


「やっぱ女だよ、女!

 普通じゃ手の出ねぇ高い女買おうぜ、なぁ!」


 飲む・打つ・買うの三拍子を見事に唄い上げる三人に、残る一人が呆れ顔で諭す。


「あのよぉ……その財宝は、みんな長官殿の懐に飛び込むんだぜ?

 俺たちゃおこぼれにもあずかれるはずぁねぇんだぞ?」


 盛り上がっていた三人の耳にその言葉が届いた瞬間、一斉に口が止まり、恨みがましい視線が向けられてきた。


「わかってんだよ、んなこたぁよぉ!

 ちったぁ夢ぐらい見てもいいだろうが!」


 一人が癇癪をおこし、再びずかずかと雪道を歩き始めた。


 だが、十歩を数えないうちに、その姿は一気に中空へと舞い上がる。

 片足を蔓に取られた形で宙吊りになった男を見た残る三人は、慌てて周りを見回し始めた。


「お、おい! 助けろよ!!」


 宙づりの男が大声で叫ぶ。


 そんな男をしり目に、残る三人はひとしきり周りを警戒した後、めいめい剣を抜き放って蔓を切ろうと刃を叩きつけた。


 だが、何回か繰り返しても、蔓を奇麗に切ることができない。


「クソっ! 妙に頑丈だぞ!?」


 全員に焦りが広がったその時、一本の矢が宙吊りの男の眉間を撃ち貫いた。

 深々と刺さった矢柄から、血が一滴、二滴と流れ落ちる。


 驚きと恐怖の表情を張り付かせて、三人は慌てて草むらの中へと逃げ込んだ。


「ぎゃぁっ!」


「うぎぃっ!!」


 二人分の悲鳴が音のない森の中に響く。

 見れば、トラ挟みが足を喰い千切らんほどの勢いで二人の足に喰らい付いていた。


 声のあった茂みに向け、弩弓の矢が次々と打ち込まれる。


 矢の雨が止んだ時、草むらに潜んだ一人は喉を、もう一人は胴体を三箇所射抜かれて絶命していた。


 離れた場所に逃げ込んだ一人は、青ざめた顔でガタガタ震えだす。

 消えた仲間の悲鳴から、命が奪われたことを察したのだろう。


 さくり……と、新雪を踏む音が聞こえた。

 恐怖にひきつった男の目がそちらへと向けられる。


 そこには男を威嚇するかのように、ユキヒョウが牙をむき、唸り声をあげていた。


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