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黒き森の狼 ~ある狩人の日記より~  作者: 十万里淳平
第4章 -収穫祭-
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第5話 ゴウ・スメラギ

「おっ? 来たな。」


 集会所の前にいたヒュウガの客人。

 それは立派な黄金の鬣を持つ獅子の獣人けものびとだった。


 おおよその統計ではあるが、この世界における獣人の割合は全人口に対して三割ほどと見積もられている。

 その中においても獅子の獣人は大体数%と言われているため、ケインがああ言うのも無理からぬ話なのだ。


 その獅子を前にして、ヒュウガは呆れた口調で声をかける。


「何だよオヤジさん。

 わざわざ会いに来たのか?」


「なに、風の噂でお前さんが近くに住んでると聞いたんだよ。

 それでちょいと寄り道をな。」


 微笑みながら言葉を返す獅子。


 そんな彼が、ヒュウガについてきたフローレンスに気が付いた。

 それと同時に、獅子の目がグッと細くなり、どことなく潤んだ風をみせる。


「立派になったなぁ……家を持ち、伴侶を持ち……。

 あとは子を儲けるだけだ。夜は頑張れよ?」


「何を言ってるんだよ。

 コイツぁ客人だ。俺ぁともかく、先方に失礼だろうが。」


「違うのか?」


「そう言ってるだろ?」


「何だ、つまらん。

 昔からお前はそうだ。何か気の利いたことをしたかと思えば、下らん事実で白けさせる。

 少しは相手に調子を合わせて冗談の一つも……。」


「そろそろ紹介して欲しい。」


 口を尖らせて抗議する獅子を見たフローレンスがヒュウガに話しかける。

 ヒュウガはため息をついて、フローレンスに獅子を紹介した。


「このオヤジが、さっき言ってた俺の師匠さ。

 名前は……。」


「ゴウ・スメラギだ。

 よろしくな、お嬢さん。」


 そう名乗った獅子は、手を差し出してニッコリ微笑んだ。

 だが、その名を聞いたフローレンスは、握手をしつつも目の奥には警戒の色を見せている。


 それに気づいたヒュウガはフローレンスに声をかけた。


「そろそろ向こうに戻った方がいいぜ?

 やる事は多いんだろ?」


「夕食までまだ間がある。それまで炊き出しは手が空くはず。

 それより私は、貴方の師匠が気になるから。」


 穏やかな輝きの中に鋭い光を隠し、フローレンスはゴウの顔を見ている。


 そんな光に気付いているのかいないのか、獅子は屈託なく笑顔で答えた。


「嬉しいねぇ、こんな美人に気にかけてもらえるとは。

 どうだ? ヒュウガ。

 いっそ娶って、所帯を持つのもいいだろうに?」


「だから先方に失礼だって言ってるだろ。

 それより中に入ろうぜ。

 少しばかり風が冷たくなってきやがった。」


 ヒュウガはそう言うと、集会所の扉を開く。


 その中には数人の村人がストーブを囲んで談笑していたが、入ってきたゴウの風貌にギョッとした表情を見せて、静かに小屋を出ていった。


「儂はそんなに怖いかね?」


 そんな村人たちを見たゴウは、どことなく落胆した様子でボソリとつぶやいた。


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