表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒き森の狼 ~ある狩人の日記より~  作者: 十万里淳平
第4章 -収穫祭-
20/63

第2話 噂

「へぇ! ソチラがヒュウガの客人かい?

 でも水臭いねぇ……言ってくれりゃ服なんざ十着ぐらい用意してやったのに……。」


 そう声を上げたのは、恰幅の良い女性のライザ。


 農村であるナティカの村では、一番面倒見の良いおかみさんだと評判だ。


 だが、同時に口が軽いことでも有名で、その点からヒュウガは協力者としてダニエラを選んだのだ。


 その口の堅い女性に頼んでも、あちこちで噂は広がっている。

 村という小さなコミュニティでは、余所者の噂はあっという間に広がってしまうものなのだろう。


「ま、来てくれたなら特別扱いはナシだ。

 炊き出しの人手が欲しかったから、ソッチに回ってくれるかい?」


「解りました。よろしく。」


 静かに、そして上品に頭を下げるフローレンス。


 そんな彼女を見たライザは、ヒュウガにこっそり耳打ちした。


「あの、訳アリだね?」


 そんなライザの言葉に、ヒュウガは囁き声で答えた。


「まあな。だが悪い奴じゃねぇよ。

 その点は俺が請け負う。」


 村娘に案内されて広場に作られた調理場に向かうフローレンス。

 その背中を見送りながら、ライザはさらにヒュウガへ言った。


「あまりゴチャゴチャは言いたくないが……。

 揉め事はゴメンだよ?」


「そんなことはねぇさ。

 いざって時は、俺が何とかする。」


「アンタがそう言うなら信じるけどさ。

 正直よそ者が歩き回られるのは怖くてね……。」


「春には出ていくことになってる。

 冬の雪ン中、放り出すわけにもいかんしな。」


 フローレンスは早速その手際の良さを発揮しているようだ。


 調理場では多くの娘の手が止まり、彼女の一挙手一投足に目を丸くしている。


 そんな様子を遠目で見たライザはヒュウガに一言こう言った。


「ナルホド。

 助かるって点では間違いなさそうだね。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ