報復人事
株式会社エヌマヤ 社長 長尾マヤ
シノンが出て行って1週間がたった。娘たちにはシノンの実家に行ってもらった。
二人は、ニヤニヤしながら「たまには、いいんじゃない?」と言って出かけた。
伏見とは次の日に打ち合わせで会ったので軽く経緯を話した。
伏見は申し訳なさそうに
「私も、自分の進退を考えようと思っているの」と言われた。
「伏見さんまで抜けられると、ダクト社厳しいですよ?」
自分が社長であることを忘れ本音が漏れた。
伏見は笑いながら
「長尾さんにお仕事振らないんでしょ?残念ながらそう判断した時点でこの支社がアジアでシェアを維持することは厳しいわ」
そして続ける
「菊川社長の道標は進んでいるけれど、本社のノルマまでは厳しい数字でしょ?」と痛いところを指摘された。
「はい、そうですね。伏見さんも確認されていると思いますが、口から水がでるライオン支社に抜かれています。」
タカセが社長になってから、もう一つのお仕事を少しずつ無視するように指示をだした。見事にノルマの数字と乖離していく。本社からは何度か指摘されているが、今の所は無視をしている。
「このままだと、私は引退というよりも更迭されそうだわ。あなたのお守りができてないってね」
伏見は肩をすくめながら言った。
そして、少し真面目なトーンで
「私の後は、きっと本社から来るわよ。あなたのお守りが。気をつけなさい。」
「はい、ご忠告ありがとうございます」タカセは小さくお辞儀をして伏見が退室するのを見送った。
それから、数週間後アジアシェアのトップは口から水がでるライオン支社になった。
今まで日本支社は最重要拠点としての地位が確立されていたがトップが移行したため、拠点も変更となった。支社としての降格処分だった。
コンコンコン、タカセの部屋にノックの音が響く
「はい、どうぞ」入室を許可するとマヤが入ってきた。
「菊川社長、お久しぶりです。」マヤはいつもの挨拶をする。
タカセは笑いながら
「あー実は、元社長ですね」恥ずかしそうに言った。
マヤはそのことを思い出したようで
「うわっすみません。えっといつでしたっけ?」
「降格ですか、そうですね。日本支社がトップから落ちた一週間後ぐらいですね」
対応早いですね…。マヤは思わずつぶやいた。
「報復人事なんてそんな感じですよ」タカセは、軽口を言った。
「でも、大丈夫なんですか?道標」
「あ~、道標だけは生き延びるみたいです」タカセは苦笑いをする。
「伏見副社長は更迭、私は副社長に降格ですよ。新社長は本社からCOOのタン氏がリモートで指揮するらしいです」
タカセは憑き物が落ちたように本来のやわらかい雰囲気を醸し出していた。
マヤはそんなタカセを見て安心したように話を進める
「で、本当にわが社に『転職』するんですか?」
マヤはおどけたように聞く。
タカセは笑いながら
「はい、呼び出しておいて申し訳ないですが。御社にご縁があれば…。」
タカセとの打ち合わせという名の面接という名の確認を終えたマヤは
「あっ菊川副社長に大丈夫って言ったけど。あの子がいるわ」
マヤは今宮がプンプン怒っている様子を想像した。
「まっ適当にごまかそ~」と言って今宮の好きなたい焼きを買って社に戻った。
ダクト日本支社 新社長 ジョージ・タン
ダクト日本支社 前社長 菊川タカセ を 副社長に降格とする。
ダクト日本支社 前副社長 伏見レイコ を 更迭処分とする。
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