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2_42 悪役令嬢の動向を知らない面々

アステアラカ首都アラタ、王城にて。

第一王子カルネイル・アステアラカ公爵と、その弟、カルトルージュ、カルファレン、そして首脳陣が一堂に会して頭を抱えていた。

「よりにもよって兄上が国王に就任する直前になってどうしてこんなことに‥‥。」

次男カルトルージュ侯爵はげっそりした顔でため息をつく。

「このままひっそり領地で農作業できると思っていたのに‥‥。」

「ルー兄。内々の集まりにしても本音が駄々洩れですよ。私も期末テストの予定を立てたりと忙しいのですよ。」

じっと睨むのは三男カルファレン侯爵。

「お前ら国防の危機だというのにそろいもそろって暢気すぎないか?」

カルネイルは眉間にしわを寄せる。

「本気の戦争など物語上の存在でしたからねぇ。急に言われてもというところはありますが。取りあえず備蓄の一部は避難所に既に送ってます。土木作業も必要でしょうから人手も多少ですが。」

カルトルージュははぁとため息をつく。

「今年は夏の冷害の予言が当たったおかげで備蓄も問題なくできている。ヴィルヘルミーナ嬢だったか? 占い師様様だな。」

「ルー。お前はヴィルヘルミーナ嬢を実際見ていないからそのような気楽なことが言えるのだ。見た目は可憐な絶世の美女だが、多分中身は戦神200人くらい詰め込んだ異次元生命体だぞ。」

「兄上がそこまでいうのは珍しいですね。」

「まあ命を救われているからな。」

「情報共有レベルが下がって此方まで情報が来たのはいいが、未だにかみ砕けていないが‥‥。」

カルファレンは眉間にしわを寄せる。

「まあ、傀儡政権とはいえ、自治領みたいな扱いなのだろう?」

カルファレンはラウンドの紫に目をやる。

「その通りです。」

ラウンドの紫は頭を下げる。

裏の立場は上だが、表立っては臣下の扱いである。そこにヴィルヘルミーナが混じったせいで上下関係がぐちゃぐちゃになっている。

「現在は共闘関係が近いかと。もしくは共にヴィルヘルミーナ様を神と仰ぐ臣下でも良いかと。」

目をキラキラさせながら言う紫に、他のラウンドのジジババが野次を送る。

「これじゃからミーハーは嫌じゃの。」

「ドツかれて目覚めるとかドMじゃな。」

「犬ッコロだから上下関係しっかりしとるんか? ん?」

「こんのボケ老人共が‥‥。」

紫のこめかみに血管が浮き上がる。

微妙に犬歯も伸びてきている。

「それはそうと港はどうなっている? 大聖女の派遣が必要と増援要請で送ったが、続報が来んが。」

カルネイルは部下に視線をやる。

「はっ、最新の情報では港町の市民の避難を開始、スカイドラゴンとクラーケンの襲撃に騎士団が当たっており、戦線を下げつつ迎え撃つ予定と聞いております。」

「ゲーキからの増援は?」

紫のに視線をやる。

「それが先ほど連絡を取ろうとしたのですが‥‥連絡がつかなくなっておりまして‥‥。ひょっとしたら魔道連絡網が破壊されている可能性が。」

「魔道連絡網とは、ゲーキとしていたアレか?」

「そうです。システム自体が港のほうに隠してありましたので、破壊されている可能性があります。」

「狙ってやっていたと思うか?」

カルネイルは首をひねる。

「いえ、流石にそれはないかと。ゲーキでも派閥以外のものは知らぬはずです。」

「素人質問だが、火事でダメになるのは不備ではないか?」

カルファレンは教師らしい発言をする。

「防火対策も可能な限りはやってたんですが‥‥。ただ、予備を置くほど安い代物ではないんですよ。そもそも稼働自体にどれだけ魔石が必要だと思ってるんですか。」

「魔力であれば例のクリスタルを流用するのはどうなのだ?」

カルファレンは興味津々である。

「技術的には可能かもしれませんが、安定性と安全性からはまだまだと聞いてます。」

紫は首を振る。

「接触による肉体・人格破壊の報告はありますが、近距離長時間でそれが起きないとも限りませんので判定には時間がかかるかと。例えば1年後に港町が知能のない魔物であふれかえる可能性がありますからね。」

「まあ、やむを得んか‥‥。」

「いや、それはいいから増援は?」

カルネイルはテーブルをとんとん叩きながら聞く。

どうも緊張感がない。やれることはやっているので急いで何かをせねばらなないわけではないのだが。だれも戦争というものを知らないのだ。

長い安寧の時間の間にゆるんでしまったのか。まあ、平和の代償だとおもうと悪くはないのではあろうが‥‥。

「アナログの方法でゲーキに連絡を送ってますのであと1日ほどお待ちいただければ‥‥。」

「はぁー。ままならぬ話だな。」


翌日、再度今後の方針を話し合うために紫と王族3人、ラウンドの中でも商人ギルドマスターのバーロット、赤の大司祭マルチア、そして紫の、での話し合いである。

バーロットとマルチアは指示に追われて昨日は登城出来ていなかったのでその話も含めてである。

「モンスター相手のスタンピードかと思ったら戦争だったとは。道理で勝手が違うと思った。」

はぁーとため息をつくバーロット。

「港は大変だったらしいですな。内陸も避難民を襲おうと北から降りてきた奴らが居たから蹴散らしておきましたぞ。確実に港をつぶしにかかってる気がするが。」

「そうですね。おかげさまで私の出番はあまりありませんでした。」

マルチアは首をすくめる。

「元Sランク冒険者としてどうだ? 先ほど違和感があったようなことを言っていたが。」

カルファレンは興味津々である。

「モンスターの統率が取れていないのが一番ですね。 普通こういう場合バラバラにしても統率が取れているようなものなのですが、どうもちぐはぐな動きをしています。」

「やはり誰かが操っていると考えて相違ないか?」

「そんなことができる人間がいればですけれど。」

紫をちらっと見る。

「10匹程度でしたら操る術はございますが。」

「いや、100は下らぬ数だったよな?」

バーロットはマルチアを見る。

「そうですね。被害や戦闘の具合を見る限りはおそらく 200程度かと。港を襲っているのが同時期であれば恐るべき能力ですね。とはいえ魔獣側も時々ふっと行動がばらけることがあったのでずっと見ているわけではないのでしょうが。いやはや 一体何があったのかと思っていましたが操っているのであれば納得の動きですな。」

マルチアは茶を飲みながらそう言う。

「ところで 港の様子はどうなのですか?  我々が首都から動くと こちらの防護がまずいので話しか聞けてはないのですけれど。」

「クラーケンが現れたとまでは聞いている。その後応援要請が来ていたので送ったのが着いた頃ではないか。明日明後日には続報が届くと思うが。」

「バーロットの耳にはいってるのはそこまでか。そのあとスカイドラゴンも現れたぞ。魔道連絡網だったか? あれがつぶれたのが痛いな。ここまで動きに差が出るとは‥‥。」

カルネイルは歯噛みする。

「この状態で龍族が飛び回ると叩き落される可能性があるので、獣人の中でも足の速いものに偵察に行かせていますので、夕には続報が来るかと。行きしなは町々で分かれ、帰りはバトンリレーのように一気に戻ってくる予定にしております。」

「最短だとそうなるか‥‥。港が無事であればよいのだが‥‥。」


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