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2_39 悪役令嬢とアステアラカの矜持

「ギルマス! 騎士団長! このままではじり貧です! Aランク冒険者も3割が戦線離脱しています!」

港の仮設指令所にて青い顔をする偉い人たち。

「これが噂に聞くスタンピードか? 小説の話だとはばかり思っていたが実際起こると目も当てられませんな。本国からの増援は?」

「早くてもあと2日はかかるとのこと。」

「アステアラカが半壊しますな。」

ギルドマスターは天を仰ぐ。

「誰でもできる悲観的な予想は良いからどうするかを考えよう。港は諦める。民を北に避難させ、山岳の細くなっているところで向かい撃つ。そして時間を稼いで、反撃のタイミングをうかがう。これ以外にあるか?」

騎士団長は眉間にしわを寄せてそう言う。

「それしかないでしょう。いずれにしても既に避難は概ね済んでます。」

「お主の性格はクソだが仕事は流石だな。」

「お貴族様に褒められると尻がかゆくなりますわ。」

ギルマスはおどけた様子で首をすくめる。

「塗り薬でも塗っておけ。不衛生だ。では私は時間を稼ぎに前に出るとするか。」

「万が一の時はあとはお任せを。」

「無事帰ってきたら貴様の奥歯をへし折ってやる。」

「歯医者を予約しておきますよ。ご武運を。」

騎士団長は部下から巨大な大剣を受け取り、出て行った。

「さて、我々も殿を務めますかね。」

ギルマスも細身の剣を取り出す。


「何匹ほどいる感じでございます?」

「100匹は下りませんね。どこからこんなに魔獣を‥‥。」

ミタリナ様は眉間にしわを寄せられております。

「港大丈夫かなぁ、爆発だんだん減ってきてるんだけど‥‥。」

強化した視力で見るアステアラカ港は半壊を通り越して既に全壊に近い状態でございます。

市街地も2割程度が炎に包まれております。

「あと1時間程で到着いたしますが、いかが致しますか?」

「接岸に邪魔ですので、先に大半掃除しておきましょう。ただアステアラカの方々もかなり前に出てきていらっしゃるようですので限定的になりますが。」

右手に魔力を籠めます。

「滅びよ。」

グランヴィディアで使ったビームを上空と海中に向けて打ち込みます。

案外使い勝手の良い魔法でございます。

空を飛んでいたスカイドラゴンの殆どは消しとび、海中のクラーケンは直撃したものは消滅し、その余波を食らったものは吹き飛んでいきました。

「あまり近くは狙えませんので6割くらいでございましょうか。」

「え‥‥、ええ‥‥!?」

ミタリナ様は顎が外れるのではないかというくらい大きな口を開けていらっしゃいます。

「「ええぇ‥‥。」」

ダゴンの方々も同じような感じでございます。

「あ、これはあれですわね。私何かやってしまいましたか? という例のあれですわね。以前どこかで読んだことがございます。」

「何かも何も大破壊だね。衝撃波で大波できてるけれど、ああ、でもギリギリ港までは消波ブロックのおかげでたどり着いてないみたい。」

レンツ様は強化した視力で見回していらっしゃいます。

「魔獣はちょっと恐慌状態になってるね、あ、その隙に人間側が押し返してるみたい。お、大技みたいなの出た。」

「もう一発くらいいっておきますか。滅びよ。」

逃げまどっているスカイドラゴンの大半を塵に変えました。陸地から遠ざかっているのでとても狙いやすう御座います。

「あれ、ミタリナ様?」

「あばばば‥‥。」

ミタリナ様は泡を吹いて倒れられております。

「これ大丈夫?」

レンツ様が肩をたたいておりますが、反応に乏しいです。

「多分えげつない魔力の余波で一時的にスタン状態になってるんだと思う。2発目は油断してたからモロに食らったんだろう。俺ら魔獣は魔力に弱いんだよ。」

ダゴンの船長みたいな方はミタリナ様を簡易ベッドに寝かせながらそう仰います。

「多分ひと段落かな、第二波が来ないとも限らないけれど‥‥。」

レンツ様はじーっと遠くを見ていらっしゃいます。

「もう1発くらい打ち込んでおきますか?」

「いや、消波ブロックが1発目の衝撃で半壊してるからこれ以上はやめといた方がいいかも。多分人をかなり巻き込むことになるね。」

「では現地の方々にお任せいたしましょう。いずれにしても時を置かず到着いたしますでしょう。あとは此方に誤爆されないように魔力障壁は張ったままに致しましょうか。」

「魔力消費は大丈夫?」

「1時間程度でしたら問題なく。」

「じゃあお願いするね。」


一方アステアラカ港町

「副団長、今のはいったい‥‥。」

空が2回光ったかと思うと、魔獣の大半が吹き飛び、海も吹き飛んでいた。

とっさにだれかが叫んだおかげで誰も海にのまれずにいた。

残った魔獣は統率を失っているようで、あとは掃討戦に移行するように伝えている。

あと少し早ければ、と、団長から託された大剣を握りながら歯噛みをする。

「わからん。わからんが叩くなら今だ。先ほどの統率の取れた動きはもうない。隊の三分の一を念のため北に向かわせろ。ギルドの奴らが殿を務めてくれてはいるが、半壊していないとも限らん。」

「承知しました。」

「俺は残りの魔獣をしばいてくる。今から俺が団長で、お前が副団長だ。お前は此処に残って全体指示を出せ。終わりの合図はお前に任せる。」

「承知しました。」

「弔い合戦だ。クソ野郎ども。」

陸に上がったクラーケン等、動きののろい魔獣でしかない。

多少離れたところで稲妻の魔法が通る。

空のスカイドラゴンが厄介だったが、謎の光で全滅してくれている。

元副団長は剣を掲げる。

「仲間たちよ! 今こそ再起の時! 勇気を持ち、力を合わせ、敵を討ち滅すぞ! 我々は、この地を守るために戦い、そして、勝利を手にするのだ! アステアラカの剣を掲げよ!」

「「うおおおおおお!!!!」」


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