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2_37 悪役令嬢達とかわいそうな人たち

「あああああヴィルヘルミーナ様!?!?!?。」

レムは喉がもげるかと思うくらいの悲鳴を上げ、そのまま土下座する。

「なんと! 此方がヴィルヘルミーナ様か‥‥。」

ウロウは急に平伏しだしたレムにドン引きして、自分もやるべきかどうか悩んでいる。

ライネイはじっとヴィルヘルミーナを見る。

「お初にお目にかかる。ゲーキで侯爵の位をいただいているライネイ・フロールという者だ。ヴィルヘルミーナ嬢のお話はレムから聞いている。」

「お恥ずかしい話ばかりではございますが。とはいえ身の立証も難しいでしょうということで、先ほどユーズゥ様にもう一つ小さめではございますが真珠をいただいております。」

ヴィルヘルミーナは小指の先程度の白い真珠を見せる。

「そして。こう。」

ぐっと手に魔力を込める。

「ぐっ‥‥!?」

ライネイは思わず戦闘態勢を取ろうとしてしまう。

純粋な魔力だけだが、その圧は見たことすらない。

「そして此方になっております。」

そこにはどこかで見たような禍々しい黒真珠が出来上がっていた。

「‥‥なるほど。ゲーキの者には不可能なその魔力。間違いなくフェンガル以上の方々と判断いたします。」

ライネイはヴィルヘルミーナを格上と認め、臣下の礼を取る。

「ライネイ様!?」

国王以外に見せないその礼をみてウロウは驚愕する。

「はっ、あ、ウロウでございます!」

ウロウも慌ててそれに習う。

「堅苦しい挨拶はこれくらいに致しましょう。ミタリナ様?」

「は! はいいぃぃ!!」

「皆様にお茶の手配をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「よろこんでぇぇぇ‥‥。」

残像を残して消えるミタリナ。

それを生暖かい目で見るレンツ。

「レンツ‥‥、一体道中何があったんだ? どうやってこちらまで来れた!?」

すっとレンツの横に移動してレムは小声で尋ねる。

「ああ、まあ、うん、あの、そうだね、いつも通りカナー‥‥。」

レンツは目をそらす。


時は先のぼってグランヴィディアの港町。


「おお、久しぶりの港! 潮の香りが現実を忘れさせてくれるね‥‥。」

はぁとため息をつくレンツ様。

道中暗殺者も現れずとても平和な道中ではございました。

ちなみに今我々は皆ミタリナ様と同じ顔をしております。

手配書が回っている可能性を鑑みた結果になってはいるのですが、直前に見たものがメトスレ様ですので、老人の顔を3つ続けるくらいなら、まだ顔が割れてない可能性の高いミタリナ様の顔で統一しようということになりました。

「ものすごく違和感があります。」

「わかるわかる。」

「私さほど違和感はございませんが。」

「顔と首の差っていうより、3姉妹というかそんな感じに見られてそうで。」

レンツ様は鍛えていらっしゃるわりには比較的線が細いですので、がっちりした妹という設定になりました。声も比較的中性的でございますので違和感もさほどないでしょうという判断で御座います。ご本人はとても嫌がっておりましたが安全を優先させていただきました。

「取りあえずは配下の者が小舟を用意しております、食品なども積んでいる手筈になっておりますのでまずは港へ向かいましょう。」

「少しだけあそこの肉串を‥‥。」

「ヴィルさん。急ぐよ。」

「ああ、かぐわしい香りが‥‥!」

「おなかすいてるのは分かってるけど諦めて。」

「冒険者の心得というやつでしょうか‥‥、世の中の厳しさを感じております。」

「冒険者っていうか逃亡犯が近いけどね。」


そのままレンツ様に引きずられるように波止場に到着いたしました。

「デルクマール、準備はできていますか?」

ミタリナ様は船頭達の中で一番立場が上のような人に話しかけられております。

「はっ、アステアラカまで、急ぎ、でですね。すべて完了しております。」

外洋を渡りきるにはやや小ぶりで、スピード特化のような形の船でございます。ただかなり頑丈なマストでは御座いますが。

「では参りましょう。」

「行くよヴィルさん。」

すっとレンツ様はエスコートして下さいます。

「助かります。」

全員が乗り込んだのを確認して、橋げたを外されます。

「ようしお前ら、全速前進! 離岸するぞ!」

「「おう!」」

何人かの男が帆に風魔法をぶつけられております。

「なるほど、それで帆が頑丈なのですね。」

「その通りでございます。ただ曳航レベルまでの出力をだすには我ら程度の魔力は必要ですが。」

「なるほど。道理で人の気配がしないと思っていた。」

レンツ様は周りを見回しておられます。

「流石でございますね。彼らはダゴンの一族でございます。」

パット見た限りでは普通の人との違いは分かりません。

「ゲーキでは魔人と魔獣の違いとは何と考えられておりますか?」

「物質生命体が魔人で、半精神生命体が魔獣でございましょうか。魔獣はもともと生殖以外にも魔力溜まりから発生することもあります。そういう非生殖発生を行うものは総じて魔獣と定義されておりますね。精霊の親戚でもあります。ただそれよりはかなり人類寄りですが。」

「案外シンプルな話なのですね。」


其の儘かなりのハイスピードで外洋までたどり着きました。

「そろそろか。」

船乗りの一人が海に飛び込まれます。

そしてしばらくすると、ゴゴゴゴ、という音とともに巨大なカメが現れました。

背中の甲羅には潜水艦を上下で半分に切った上側みたいなのがくっついております。

「おおお! すっご!」

レンツ様は驚いていらっしゃいます。

「こいつが俺らの愛するニューデットちゃんだ。」

『あむ あむ。』

亀は声帯がございませんので、喉を鳴らす音で反応していらっしゃるようでございます。

全長2~30m程度で、目玉が3つある亀でございます。くりくりしている目がかわいらしいですわね。

「見た目が凶悪過ぎてコメントしづらいんだけど。」

「さようでしょうか。かわいらしくありませんか?」

「いやぁ‥‥。」

レンツ様は言い淀んでおられます。


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