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2_36 悪役令嬢推参

ところ変わってゲーキで一番の大国、ゲーキ本国首都にて。

「大いなるフェンガルの皆さまにおかれましては、ご機嫌うるわしう。また皆様をお迎えできましたこと、我らゲーキの誉でございます。」

「うむ。」

ゲーキの中でもライネイ・フロール侯爵と、派閥の面々が首を垂れる。

その中央に座しているのは、透明な羽を持つ無表情な男達3人。

中央の男以外はピクリとも動いていない。

「進捗を。」

「はっ、あの真珠以上の魔力含有濃度を持つものは未だ発見できておりません。人間どもの地でクリスタルなる似たような性質を持つものが発見されたとのことですが、未だ実用化には‥‥。」

「以上か?」

「はっ‥‥。大変申し訳ございません。」

「なれば此度の会合は以上とする。」

フェンガルの人たちは立ち上がろうとする。

「お‥‥お待ちください! 此方にあの真珠の持ち主が参っております。お話だけでも!」

ライネイは頭を下げる。

「手短に。」

ライネイはレムに目で合図をする。

レムは小さくうなずき、一歩前に出る。

「はっ!レム・ドンシャンク男爵と申します。あの真珠、紛れもなく元は白真珠であり、私物でございました。人類圏にてベルクートアブルより来られたと仰る方がものの数秒魔力を込めるだけで出来上がった代物でございます。」

「なんと!?」「数秒‥‥!?」

思わぬ情報にざわつくゲーキの面々。

フェンガルに提出するにあたり実物を見ていた者たちである。

「嘘ではないようだな。ではお主が騙されているだけだ。話は以上か?」

ただフェンガルの者は素っ気なく一刀両断する。

控えさせようとするライネイを越え、レムは尋ねる。

「なぜベルクートアブルではないと確信されておられるのですか? その理由だけお聞かせ願えませんか!?」

「ふむ。職務上必要と判断する。簡単なことだ。ベルクートアブルは完全に隔絶されている。我らですら接触どころか知覚すら出来ぬ。数千年、数万年前よりその様な状態とのことだ。今や存在しているのかすら私には分からぬ。」

「‥‥なんと‥‥!? いったい何故!?」

「我ら亜神にはそのお心を伺うこと等到底出来ぬ。そして私程度では。いずれにしてもそのような権利は与えられてない。」

「権利?」

「主らには関係のないこと。いずれにしてもそのクリスタルとやらを管理せよ。そしてあの真珠の1兆倍の魔力を溜めることが出来るものを作るのだ。事は急を要する。」

「その理由をお教えいただけませんか?」

ライネイはフェンガルの者に尋ねる。

「職務上不要と判断する。答えることは出来ぬ。ではまた。」

カクリ、と首が傾くと、そのままガラガラと崩れ、3人のフェンガルであったものは土塊と化す。

「‥‥ふぅ、せめて黄金なりに変わってくれれば掃除も楽なのではあるが。」

ライネイはため息をついて椅子に座る。

「あれが、フェンガル‥‥。」

レムは難しそうな顔をしている。

「そうだ。フェンガルの方も色々仰っていたが、そもそもゲーキとフェンガルですら生身の人間が超えれぬ魔力障壁がある。それを越えることが出来るのは無茶苦茶な魔力量を持つ者だけだ。その人たちが触れることすら不可能なベルクートアブル出身で、なおかつその中でもほぼ最高位の方が人類圏で遭難していたなんて、誰が信じるんだ。いやまあ、嘘はついていないのは分かるが‥‥。」

魔族同士は嘘が分かる。良くも悪くも腹を割った話し合いをせざるを得ない。

「レム、実際見てみてどうだった? ヴィルヘルミーナ様と比べて。」

ウロウは呆然とするレムを見て心配そうに声をかける。

「‥‥、わからん。ただ少なくともヴィルヘルミーナ様のほうが劣っていると感じたことはない。」

「マジか‥‥。」

「しかしレム、よくやったぞ。色んな情報が手に入った。」

「普通は処分を恐れて何も聞かないもんなんだよ。許可なくしゃべって殺されるとか普通らしいぞ。」

「マジで?」

ウロウの追加情報にレムは驚愕する。

「ああ、ドップネスの配下がそれで3人くらい塵になったらしいぞ。」

ライネイは嫌そうな顔をする。

どちらかというと敵だが、流石に思うところはあるのだろう。

「向こうのつながりのあるフェンガルと比べると比較的優しいが、調子に乗るなよ。」

「申し訳ございません。」

レムは頭を下げる。

「亜神か。ベルクートアブルの方々を神とするのであればそれに近しいものということか。魔神様といつもお呼びしているが、今度から呼称を変えるべきか。」

ライネイは顎を撫でながら思案する。

「ちなみにヴィルヘルミーナ嬢は数万年の眠りから覚めた可能性はあるか?」

「いや‥‥どうなのでしょう、我々より技術の発達した世界より来られたようではございましたが‥‥。」

「全くわからんということではないか。」

「面目次第も御座いません。」

と、そこにユーズゥが駆け寄ってくる。

「レム様、ああ、皆さまもおられましたか。緊急の知らせにて参上いたしました無礼ご容赦を。」

「ああ、もう堅苦しいのは終わった。なんだ? 急ぎの用事なのだろう?」

「はっ、それが‥‥、エプラスの攻撃にてアステアラカの港町は壊滅、またグランヴィディアにて大聖堂が破壊、後者にはヴィルヘルミーナ様が関与しているようで、ヴィルヘルミーナ様と従者のレンツ、またシーリカの部下はグランヴィディアを脱出し、ゲーキへ向かう道を探されているとのこと。また、その大聖堂の破壊にはグランヴィディアの大司祭メトスレがヴィルヘルミーナに襲い掛かったのが原因とのことで、セントロメア王子エシオンと、アステアラカ所属聖女アイオイ、そしてシーリカが対応に当たっているとのことです。レンツ、エシオン、アイオイ3名はヴィルヘルミーナ様により亜魔人と化している3名です。」

衝撃情報に全員フリーズ。

「え、戦争おっぱじめたの?」

ウロウはわなわなしている。

「その様です。おかげで魔道連絡網は破壊され、此方に情報が来るのが遅れました。」

カルネイルにレムが渡していた水晶はいまはノイズをまき散らすのみとなっていた。

いわゆる電波塔が無いと欠片も動かない。

「目的は?」

ライネイは片眉を上げてユーズゥを見る。

「一つ思いつくとすれば、アステアラカとゲーキの連絡を絶つのが目的かと。ゲーキの者ならばあの港が魔道連絡網の中継点なのは知っています。」

「つまり今から事態が急変するということだな。しかし連絡網が破壊されて何故その情報が?」

「それは‥‥。」

ユーズゥはひきつりながら後ろを振り返る。

と、そこには3人の人影が居た。

「初めまして、ライネイ・フロール侯爵。私の名前はヴィルヘルミーナ・ローゼンアイアンメイデン。ヴァンドゥーク・アイアンメイデン公爵が一人娘で御座います。」

「あとレンツと。」「ミタリナですぅぅぅ‥‥。」


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