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2_36 悪役令嬢一行 方針決定

「これはいったいどういうことですかな?」

グランヴィディアの騎士団長は開口一番そういう。

「なぜ大聖堂のスタッフが大半昏睡しており、ご本尊のあった建物はほぼ全壊、メトスレ大司教は不在で、セントロメアの王子とアステアラカの聖女様と、要人の方がおられるというのは私の理解の範疇を超えております。とりあえず皆様は私たちの敵に回る予定はございますか?」

「いや、全くない。なんなら剣を預けよう。」

セントロメアという小国とはいえ王子が剣を預けるというのは大事である。

「いえ、それだけ聞ければ十分です。メトスレ様の甥御様が無体なことはなさるまい。」

こわもての騎士団長は真面目そうな顔をして頷くが、顔が怖いのでかなりの圧力である。

「アイオイ様、でしたかな。一度遠征でお世話になったことがございます。毒トレントの折に。」

「そうでしたか‥‥。」

確かに昨年か一昨年に毒トレントが大量発生して、花粉で相当なデバフがかかっていた遠征に同行した記憶はあったが、正直被害が大きすぎていっぱいいっぱいだったので兵士一人一人の顔は覚えていない。

「まずは王城でお話を聞かせていただければと思います。皆、失礼の無いように。」

「「はっ!」」

「アイオイ殿。」

エシオンはアイオイに手を差し伸べる。

「シーリカ殿、この服を一まとめにしておいてもらえまいか?」

「これは?」

騎士団長は首をひねる

「証拠品です。」

「なるほど。」

「承知いたしました。どなたか目の細かい袋か革袋はお持ちですか?」

「布ならいくらか御座います。」

平服する大聖堂のスタッフがおずおずと声を上げる。

「では案内を。」

「はっ‥‥。」

シーリカはスタッフを連れて消える。

「一人ついていけ。」

「はっ。」

そのあとを兵士の一人が追う。

「‥‥後ほど詳しく話を伺いましょう。」

「勿論だ。だが長くなる。出来れば上層部に話を通したいが、国王の耳に入れるかはそれから判断してほしい。」

エシオンは静かに頷く。

「承知しました。」


「皆様は無事でございましょうか。」

「まあ、俺たちよりは多分安全だと思うよ。いっても王子と聖女とアステアラカの重鎮扱いだし。」

現在われわれは崖の下の小道を歩いております。

周囲には人の気配はございません。獣道でございますね。

「シーリカ様がおられますので大丈夫だと思います! 完全変化しますとそんじょそこらの敵では止めることはできません!」

フンスと鼻息荒く目をキラキラさせているのはミタリナ様。シーリカ様のいとことのことでございました。

「確かにシーリカさん、アイオイさんのローキックで吹っ飛んでたけどダメージ殆ど無さそうだったもんね。」

「力を見るだけのつもりだったのでございましょう。」

「ヴィルさんからみて強そう?」

「そうでございますね。ただ本気を出したメトスレ様相手だと難しいかもしれません。」

「そんなにだったのですか!?」

ミタリナ様は驚かれております。

「クリスタルと命を直結して燃やし尽くす外道の業でございますね。瞬間的な強さでいえば見たことないレベルでございました。そして、恐らく連結を無理に絶ったので一気に命を使い切ってしまったのでしょう。」

「‥‥あのクリスタルってやっぱり危険なのかな?」

レンツ様はとぼとぼと歩きながら難しい顔をされております。

「危険な使い方が出来る、という方が正しいかと思われます。包丁も使いようではございましょう。ただその幅が広すぎる場合は制限をかけるべき、という考え方も御座いますが‥‥。」

「ナーラックで祠が吹っ飛んだのって、多分あのクリスタルのせいだよね。」

「可能性はございますね。ため込み過ぎた魔力が暴走したのであればあり得る話だと思います。その場合本来のクリスタルのサイズがどれほど大きいものだったのか、どれだけの魔力をため込んでいたのかを考えますとなかなか空恐ろしい話ではございますが。」

「ヴィルさんが恐ろしいとかいうくらいだからえげつない話なんだろうね‥‥。」

「正直私もクリスタルの運用については現状のアステアラカ等の技術力では真面に使えるとは思えないところではございますが‥‥。逆に言うとその頃からガイドラインをキッチリ決めておくと後々良いという考え方も御座いますわね。」

「皆さますごいあたまよいのですね!」

ミタリナ様の後ろに見えないはずのしっぽがブンブン揺れている幻が見えるようでございます。

「私は護衛任務ばかりで、まだ体を先に鍛えろといわれておりまして難しいことはわかりません!」

「そ‥‥そっか。まあ、時間があるからゆっくりやるといいと思うよ。」

「はい! あと100年くらい鍛えてから学問を治める方に移行しようと思います!」

「気の長い話だなぁ‥‥。」

「まあ、心配しても詮無い話でございます。」

「‥‥、ヴィルさんなんか悩んでる?」

「悩む‥‥と申しますか、懸念事項といいますか。フェンガルの急進派が神とみなしているベルクートアブル、世界を破壊するつもり、という単語がかみ砕きかねております。」

「急進派と穏健派って言ってたね。フェンガルが二分している理由が、クリスタル関係だとするなら魔力に関わる話‥‥、ならば人魔戦争をもう一度起こすつもりなのが急進派?」

「‥‥もう二度と起こさないために人類を滅ぼそうとしているのではないでしょうか。」

「あ、なるほど。それなら筋は通るね。こっちはたまったもんじゃないけど。」

「しかし滅ぼすといっても広大でございます。並大抵の力ではどうしようもないでしょう。あのクリスタルですら山脈を消し飛ばす程度でございますので、世界ごととなると比較にならないサイズが必要になるでしょう。あとは‥‥。」

「そうです! ゲーキはどうなるのでしょうか!? 一緒に吹き飛ばされるのでは!?」

はっとミタリナ様は目を開かれております。

「まあ、いまの話はすべて仮定でございます。全く別の考えがあるのかもしれません。クリスタルを何のために使うか‥‥。フェンガルとベルクートアブルの間も簡単に行き来はできない感じでございますし、フェンガル自体もそもそもに場所が不明でございますね。」

「ゲーキの者もフェンガルの使者としか会話できず、行き来は出来ていないと聞いております。」

「とりあえずその使者をひっ捕まえるのが一番早いかなー。」

「レンツ様!?」

ミタリナ様は驚愕されております。

「それしかございませんわね。とりあえずはアステアラカからゲーキに向かう方法を模索いたしましょう。」

「まずはそこからかぁ。」


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