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2_30 悪役令嬢と出発前のゴチャゴチャ2

「アイオイさんが居るからちょっと本気出してみても良い?」

レンツ様がシーリカ様に尋ねられます。

「勿論ですとも!」

シーリカ様は牙を見せて笑われます。

「よし!」

レンツ様が力を籠めますと、体中に青黒い模様が浮かび上がります。

「凄まじい魔力ですね。リア様に負けないレベルです。」

シーリカ様はハァァアと息を吐かれます。

「では私も本気で行きましょう。」

シーリカ様が全身に魔力を込めると、眉間に3つ目の目が開きました。

「では参ります!」

シーリカ様の右手がアッパーのようにレンツ様に襲い掛かりますが、それをエシオン様同様に少し下がって避けられます。ただ爪の先から同時に魔力の刃が飛び出しており、それをレンツ様は剣で受け流されております。

「ぐっ!」

少し体制が揺らいだところに、シーリカ様の渾身の左手が上から叩き落とされます。

レンツ様は剣でガードされますが、衝撃で地面がめり込んでおります。

其の隙を逃さず、シーリカ様の回し蹴りで、レンツ様は後ろに飛ばされました。

「浅いか、グラヴィティ!」

シーリカ様の重力魔法でしょうか、魔眼の力かもしれませんが、目が光ると、レンツ様の周りの草がピタっと地面に着くようにへしゃげております。

「隙あり!」

体勢を崩しているレンツ様に渾身の右ストレートを放つシーリカ様ですが、レンツ様はその腕を取って、背負い投げの要領で地面に叩きつけられました。

ドゴン!と大きな音を立てて地面にめり込むシーリカ様でございます。

「うぐぐ、何と‥‥!」

「大丈夫そうだから受けてみたけど、割と大丈夫だった。そこそこダメージあるけどね。」

荒い息をついていらっしゃいますが、しっかり立っているレンツ様と、ふらふらして動けないシーリカ様でございます。

「レンツ様は素晴らしい動きですね。ゲーキでもA+だと思います。」

「シーリカ様、大丈夫でございますか?」

「ご心配無く、魔獣は頑丈ですからね。私くらいだと体が1/4程度くらいなら吹っ飛んでも休めばそのうち戻ります。」

「無茶苦茶だなぁ。」

レンツ様はあきれ顔でございます。

「まあ、取りあえず癒しておくね。」

アイオイ様の癒しの光でお二方の擦り傷はみるみる癒えていきます。

「ありがとうございます。では最後にアイオイ様も!」

「え!? 私も!?」

「エシオン様といい勝負されていたと聞き及んでおります。」

「多分リア様に近い感じだよ。技術はそこまでだけど、ただ聖女だから力無茶苦茶あったよね。」

「まあ正直今のほうが腕力ゴリラな気はするんだけど。」

アイオイ様は首をすくめられます。

「じゃあちょっとだけね。」

アイオイ様はそう仰いますと、魔人のような形態に変身されます。

角が生え、目が赤く光るアイオイ様はなかなか迫力満点でございます。

「取りあえず力比べする?」

アイオイ様は手を前に出されます。

「ほう、望むところです。」

シーリカ様はその手を掴み、手四つの状態になられます。

「じゃあ力入れてくよ。」

そうおっしゃった瞬間、アイオイ様から猛烈な魔力が噴出致しました。

「ぬううう!!!」

シーリカ様は歯茎が見えるほど食いしばっておられます。

「まだまだ!」

シーリカ様からも魔力が吹き上がると、手はじりじりとアイオイ様のほうに寄っていきます。

「私もまだまだ!」

アイオイ様もさらに魔力を出して身体強化を強めていきます。

岩の上ではございますが、小さくひび割れ始めております。

「力は互角‥‥ならば次はこれを受けれますか!?」

シーリカ様は腕を押さえながらアイオイ様にローキックを放たれます。

ただ、ゴオン!という鈍い音を立てましたが、アイオイ様は微動だにされておりません。

「なんと‥‥!」

「私魔力が一番集中してるの足なんだよね、受け身取ってね!」

アイオイ様が美しいまでのローキックを放つと、ドオン!という爆発音とともにシーリカ様は空中で4回転ほどして、なんとか地面にうまいこと着地されました。

「おおお、目が回る‥‥!」

「思った以上に破壊力が出たなぁ。これ以上魔力込めたらえらいことになりそう。」

アイオイ様は、必殺ローキックが出来てしまったと真面目な顔で悩んでいらっしゃいます。

「あのローやばくない?」

レンツ様はエシオン様にヒソヒソされます。

「全力で出したローキックでどうなるか検証したんだが、取りあえず普通の鎧は紙切れのようにちぎれ去ったぞ。その余波で城壁の一部が吹っ飛んだ。」

「うわぁ‥‥。」

アイオイ様の身体強化もなかなか極まっているようでございます。

現状ですらリア様の魔獣を倒した時の右ストレートの10倍ほどはエネルギーが込められているように見えます。

「でもこれでもゲーキだとまあそこそこ位なんでしょう?」

「そうでございますね。私もそこまで強い魔獣というわけではございません。決して弱いわけではないのですが、私でA程度です。ユーズゥはB+位ですね。」

「Sとかもおられる感じなんでしょうか?」

「私がデミフェンリルですが、父親がオリジナルフェンリルですので、S+ランク程度ですね。他にもちらほらは居るのですが、何分、年食ってる魔獣が多いので、若干ボケ始めているのも居たりしますね。フェンリルはボケたりはしないのでうちの父は現役バリバリで働いておりますね。管理外の知性のない魔獣掃討に出たりしております」

「どこも魔獣被害は大変なんだねぇ、ナーラックとお隣のファストロットあたりはヴィルさんの力で大半一掃したから落ち着いてはいるけれど。」

「魔獣が生まれて、一人前といいますか、人を害するようになるまではそこそこ時間がかかりますのでまだ来年の春頃まで問題ないかと。」

「ふむ、それは良い情報を聞きました。後ほどハノイ様にお伝えいたしましょう。」

「辺境領主だと治安維持も費用がバカにならないからねぇ、当分出ないならもう少し別のところに労働力を割きたくなるって言ってたよお館というか、ハノイ様。」

「世知辛い話でございますわね。アステアラカから賠償金をもらっておけばよろしかったかもしれません。」

「ヴィルさんもなかなかしたたかになってきたねぇ。」

「アイオイ様、恐らくですが、元々だった気も致します。」


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