2_28 悪役令嬢カチコミ決心の巻
「そういえば、エプラスより刺客が送られてきたのですが、シーリカ様はご存じでございますでしょうか?」
「先ほどそのような話を耳に致しました。丁度部下からも詳細な話が来ており、取り急ぎレム様に確認を取っております。ただ、エプラスに関しては、別の貴族が背後に居まして、此方の派閥とはあまり仲が良くなく、情報がやや乏しいところでございまして‥‥。いわゆる開戦派といいますか、人類をもう少し間引きたいと思っている派閥ですね。」
「と言いますと?」
「ゲーキではやはり全体的な魔力増加をかなり危惧しております。現状では人類は相手になりませんが、このペースで魔力量が増えると差が縮んでいく可能性があります。その前に人類の数をもう少し制限したいと思っている派閥ですね。実際は上の許可は下りませんので、鎖国するにとどめているようですが‥‥。ただ少しきな臭い動きも聞いております。どうもフェンガルから何かしらの情報を得ているとか‥‥。」
「フェンガルのほうも一枚岩では無いのでございますか?」
「正直此方に来るフェンガルの方はかなり無機質といいますか、四角四面の回答しかされませんので何とも。ただどうも別窓口が向こうにはあるようです。機密のようで詳しくは分からなかったのですが。」
「フェンガルの方々の思惑は何だと思います?」
「そもそもあの方々に欲というものがあるかも私にはわかりかねます。あまり同じ生物と会話をしているとは思えず‥‥、とはいえ私も後ろで控えていただけでそのやり取りを遠くから見ているだけではあったのですが。」
「フェンガル自体も謎だらけですわね‥‥。だれかフェンガルに行かれたことのあるかはございませんの?」
「ゲーキでは誰も。ひょっとしたら国王レベルでしたら内密に訪問している可能性はありますが‥‥。」
「直接行くことは難しい場所なのでしょうか?」
「空間自体がねじ曲がっているようでして。恐らくどこかには存在しているのでしょうが、その道自体は魔力で隠蔽されており、生半可な魔力では通り抜けることは不可能と言われております。」
「私なら行けますかしら?」
「‥‥恐らくは。前例が無いので絶対とは申せませんが‥‥。まさか、フェンガルへ行かれるおつもりですか?」
「まだ未定です。ですが、リア様に危害を加え得る存在を看過するわけにはいきません。」
「まあ、可能かどうかは置いておいて、敵対しているのは間違いないでしょうね。暗部の長が出てきても多分返り討ちにはできると思いますが。」
「世の中絶対はないのです。私も力を封印されたときユーズゥ様に危ないところまで追い込まれておりました。」
「‥‥!」
「ハルカ様にも慢心するなと言われております。とはいえ、ハルカ様のような感知能力や隠密の力もございません。なので結局は先手必滅でやらざるを得ないと思っております。」
「ヴィルヘルミーナ様の憂いを晴らすよう主人にも申し付けられております。」
「ありがとうございます。いずれにしても一度ゲーキに向かう必要がある気が致します。となればアステアラカに向かうところからでございましょうか。」
「ヴィルヘルミーナ様のパスポートは申請しております。恐らくそろそろ認可は下りるかと思います。大変失礼にはなるのですが、現地での協力者枠といいますか、なんといいますか‥‥。」
「奴隷のような立場なのでしょう。特に私は気に致しません。」
「力不足大変申し訳ございません。」
「いえ、色々と苦労を掛けます。」
「ヴィルヘルミーナ様‥‥。」
シーリカ様は涙を流しながら震えられております。
「さて、話も長くなりました。皆様が起きる前に帰りましょう。」
「はっ。ただ帰りは上りですので日が昇るまでに間に合いますでしょうか‥‥。」
「シーリカ様。」
「は、はい?」
「お手を。」
「はいっ!」
反射なのでしょうか、手をさっと出されたシーリカ様の手を握ります。
「では急ぎますね。」
「え? 急ぐとは、え、ああぁぁぁぁあ!?」
シーリカ様に合わせると間に合いませんので、引っ張ってダッシュで帰りましょう。
「アステアラカに向かうのか?」
朝食会場で開口一番ハノイ様に聞かれました。
「どうしてそれを?」
「何となくな。」
ハノイ様は首をすくめられます。
「僻地だと連絡も取りにくいだろうし、性格からしてやられっぱなしも性に合わないだろう?」
「比較的平穏を目指しているつもりではございましたが、確かにその様な性分だった気も致しますわね。」
「平和に物事が終わった記憶が全くないがな。」
「不運なめぐりあわせというやつでございましょうか。」
お互いに苦笑いたします。
「えー、ヴィルまたいっちゃうの?」
リア様はしょんぼりされております。
最近、エプラスからのお友達(隷属の呪い付き)が増えて楽しそうに運動()をされており上機嫌でございました。
ハルカ様にとてもよく教育()されており、現在はかいがいしくエーリカ様の部下とともにリア様のお世話をしたりされております。
「私もやりたくないことに目を向けなければならない日が来たということでございましょうか。」
帰れるのか、帰れないのか。
そして、私が何者かという事を含め。
「そっか、じゃあ、待ってるね!」
リア様は笑顔を向けてくださいます。
「ええ。もちろんでございます。それまでリア様も、立派な令嬢としてだけでなく、人間としてさらに研鑽をおつみになられることを期待しております。」
「任せて! ヴィルの一番弟子だからね!」
「そうでございますね。」
「じゃあ我々もアステアラカまで送っていこう。アイオイ様も戻るからついでだ。」
エシオン様はそう仰います。
「道中またよろしくね!」
アイオイ様も笑顔を向けてくださいます。
「ありがとうございます。ただ、エプラスの刺客が来る可能性もございますが‥‥。」
「ナーラックは私が守っとくよー。」
ハルカ様はぐっと指を立てられます。
「レンツ君はどうする?」
ハルカ様の言葉にレンツ様は悩まれております。
「レンツ。大変だと思うがついて行ってあげてほしい。」
「ハノイ様‥‥。」
「保護者が多いに越したことはない。国が亡びるのは見たくないからな。」
ハノイ様は首をすくめられます。
「了解しました。」
レンツ様は力強くうなずかれます。
「私も道中ご一緒させてもらいます。」
シーリカ様も頷かれます。
「私の部下はしばらくナーラックに潜伏させておきますね。細かい連絡はハルカ様にお任せいたします。」
「うけたまわりー。」
「最近町の人口が結構増えて建築バブルとか言われてるんだが、まさか‥‥。」
ハノイ様はシーリカ様の方をちらっと見られます。
「ご迷惑はおかけしませんよ。」
シーリカ様はにこりと笑われております。
下手したら中~大隊位の人数が来ているのではないでしょうか。
「最重要案件でございますので。」
シーリカ様はにこりと笑われます。
「冬の備蓄もまた念のため計算しなおしておきましょう。」
テレジア様はうーんと悩んでおられます。
「グランヴィディアの商人に伝手がございます。安くで回すようまた伝えておきましょう。」
「流石シーリカさん!」
テレジア様は笑顔でございます。
「その代わりテレジア様と一度手合わせを‥‥!」
「時間のある時にね。」
この前の大捕り物でテレジア様の実力もばれてしまっているようでございます。
「まあ、じゃあ、取りあえずは準備だな。ヴィルも何か気になることがあるなら今のうちにな。」
ハノイ様はそう仰います。
「了解いたしました。」




