2_25 悪役令嬢一味 調査中
「とりあえず牽制で撃ってみます。」
レンツ様は前に出て、ボウリングの球程度の火球を生み出されます。
「せい!」
一番手前の魔獣?にあたると、パシュンという気の抜けた音とともにかき消えました。
「なにあれ?」
「魔力を吸収する体質なのでしょうか。」
付けているぼろぼろの衣類は軽くコゲておりましたが、本体は全くの無傷のようでございます。
「いや、それ以外にもこの場所自体もほぼ魔力がないから霧散しているのも多分あるな。」
ハノイ様は周りを見回してそう仰います。
「ほぼほぼ0の魔力の中で生きていけるように適応した可能性もあるか‥‥。」
エシオン様は剣を構えられます。
「いずれにしても直接叩き込めば問題なかろう。」
「だよねー!」
ハルカ様の刀がまばゆく輝くと、周囲の魔物をまとめて吹き飛ばされました。
「ううむ。まだリハビリ中で7割程度かな。」
「相変わらず無茶苦茶だな。」
エシオン様はひきつっていらっしゃいます。
「いうても元勇者だからね。うーん、あんまり効いてない?」
吹っ飛んだ魔獣?はのそのそ起き上がってきております。
深く入ってる傷も青紫の煙とともにゆっくりと修復されているようです。
「周囲の魔力を吸ってるねアレ。」
アイオイ様が嫌そうな顔をされております。
「ということは不死ってこと?」
レンツ様もげっそりされております。
「いや、二度と復活しないまで木っ端みじんにすれば行けると思う。対大型魔獣用の力はハルカより私のほうが得意だからね。試してみる。」
「私切るだけだからねぇ。」
ハルカ様はへの字口で後ろに下がられます。
「ほいじゃ行くよ。」
アイオイ様は、亜魔人形態になられます。以前より角がやや伸びているような気もしないでもございません。
「くらえ! メトスレ様直伝の正拳突き!」
アイオイ様の右手が輝き、魔獣の鳩尾にめり込んだ瞬間、魔獣は木っ端みじんに吹き飛びました。
「うええ‥‥。」
なんだかよくわからない液体でびしゃびしゃになるアイオイ様と、ドン引きする残りの面々でございます。
「これ残り全部やるのイヤなんだけど‥‥。」
「いや、アイオイ殿、あちらを。」
「ん?」
見ると、魔獣?達は此方に興味をなくしたかのようにまた中心に戻っていかれました。
「なんだろう。一匹倒したら諦めたのかな?」
「うーん。まあ、襲ってこないならまあいいや。取りあえず水晶を取ろうか。触って大丈夫なのかな。」
ハノイ様は棒切れで水晶をつんつんされます。
「‥‥、いや、触らない方がいい。」
急にシリアスなトーンになるハルカ様。
「あそこの黒こげの服きてる魔獣だけど、あの服、多分エプラスの暗部の奴だよ。ゲーキで見た記憶がある。焦げ残ってるホルダーに多分ナイフが入ってる。」
奥の方でのそのそされている魔獣?の服を指してそう仰います。
たしかに黒こげではありますが、他の魔獣?と異なり、比較的新しそうにも見えます。
「ん? つまりどういうこと?」
「あ、まさか‥‥。」
アイオイ様は真っ青になられます。
「ヴィルさん、前に髪の毛くれたときに、一歩間違えたら知能のない魔獣になるって言ってなかった?」
「申した記憶がございますわね。なるほど。膨大な魔力を含有する水晶に触れて、強制的に亜魔人のようになったなれの果ての方々なのですね。あの時はアイオイ様が制御されたので皆さまご無事でしたが、無制御状態だとこうなるのですね。」
ふんふんと納得していると、3人は目と顎を開いたまま固まっていらっしゃいます。
「あったかもしれない未来の姿なのか‥‥。ん? ということ我々を仲間だと思っているのか?」
エシオン様はとても嫌そうな顔をされております。
「‥‥あれ? てことは俺が今これに触るとこうなるの?」
「ハノイ様なら間違いなくそうなるでしょうね。」
「危険物じゃん!!」
ハノイ様は後ずさりされます。
地面に水晶が落ちてないかきょろきょろされております。
「恐らく光っているのが魔力が一定以上集まったもので、それが魔獣?のエサになっているのでしょう。吸収した後は光が失われてまた周りの魔力を集めるという繰り返しなのですね。ふむ、おじい様世代の入ったものは帰ってこないとか魔獣になったとかはコレに触ってしまった成れの果てだったのでしょう。」
「え、てことはテレジアに渡した水晶もそのうちそんな危険物になるの?」
ハノイ様は青ざめていらっしゃいます。
「稼働しているようであればでございますが。とりあえず急ぎ注意に戻りましょう。とはいえ水晶の数と魔物の数、食事の頻度を見る限りそうそう溜まることはなさそうでございますが。ただ濃度が高いと分かりませんわね。」
「まあ、いずれにしてもサンプルは幾つか持って帰ろう。」
エシオン様は剣で器用に地面の水晶を掘り返して、持ってきた箱に入れられます。
「ちなみに他に何か変なものなどありませんか?」
エシオン様はアイオイ様に聞かれます。
「うーん、吹っ飛んだ遺跡って感じだね、ほっとんど何も残ってないけれど。たまに柱の残骸みたいなのがちらほらある程度かなー。うーん、魔封じの枷の残骸っぽいのが落ちてるくらいだね。」
「何やら懐かしい思い出でございますわね。」
私がアステアラカで付けていたやつよりかなり古いタイプに見えます。
「なんとか魔獣?をどうにかしようとした形跡なのかな?」
「古すぎて何ともでございますわね。」
「さて、めぼしいものも何もなさそうだから取りあえず帰るか。あとここはやっぱり立ち入り禁止だ。普通の村人が入れねえ。魔力万が一もってたら食い殺されるし、そもそも何もねえ。」
ハノイ様の言葉に全員頷かれます。
「まあ、大概のルールには何か理由があったということだな。」
「さようでございますわね。」
「あー、おなかすいた。早く帰ろ。」
ハルカ様はいの一番に登って行かれます。
「そういやコレいまから帰るのか‥‥、帰りは辛そうだな‥‥。」
「最近運動不足と仰っておりましたと聞いております。頑張りましょう。」
「ヴィルさん元気だねぇ‥‥。」
「正直今回私何もしておりませんもので。」
「そういや珍しくそうだね。」




