7 悪役令嬢は手持無沙汰
「ということで、デビュタントの時期と気をつけておいたほうが良い派閥、仲良い派閥、機会があれば潰しておきたい派閥などお教えいただければとおもいます。」
どうもこんにちは。皆様お元気でしょうかりヴィルヘルミーナことヴィルで御座います。
そして目の前で半分白目をむいているのがご当主様ことハノイ・ナーラック様ですね。こちらに戻ってきていただきたいのですが。
2分ほどで正気を取り戻した様子でゆっくり口を開く。
「あー、お前の故郷が魔窟なのかもしれないが、こっちの、特に田舎の貴族なんて平和なもんだ。小競り合いしてるとこもあるが、特にうちみたいな魔力なしだとそもそもかけるプライドってのもあんまりでな‥‥。あとデビュタントはみんな一緒に春にやる。魔物が増えて財政が厳しいので一括で田舎はやるようにとのお達しだ。」
「私の手腕を見せる場はあまりなさそうですわね。少し残念ですがリア様が平和なのが一番ですわね。」
「お前ほんと何者だよ。」
「記憶喪失の原始人ですわ。石の槍似合っていたでしょう?」
「バイオリンが堪能な原始人とかみたことねぇよ。音楽の先生が鼻血吹いてたぞ。」
「エボル先生ですわね。あの方のピアノは独特で私好きですわよ。」
「これ以上使用人をたらし込むのはやめて?」
「人聞きが悪うございます。人当たりが良いとおっしゃってくださいまし。」
「まあそれは否定しないが‥‥」
「まあ!私初めて言われましたわ!」
前世では人当たりが良い悪い以前に対等に会話できる相手などほとんど存在しなかった。王子ですら気を抜いたら敬語で話しかけてくる始末。使用人に至ってはほとんど視界にすら入ってこない。まあ一般的には階級社会とはそういうものではあるのですけれども。
ほう、とため息をついて、思わず笑顔が漏れ出ます。
「‥‥‥この村はとても良い村ですわね。私とても気に入りました。」
「魔王みたいな言い方やめて。」