2_23 悪役令嬢一味と悪だくミーズ
その頃 エプラスにて。
「全滅しただと!? たかが小国のクソド田舎領地でだ!?」
ワイングラスを従者にぶつけて激昂するのは、なにやら綺羅びやかな衣服をまとう老人。
「‥‥第三部隊以降は寄ることすら不可能でした。草のものからは第二部隊は自爆して果てているようとのこと。」
「Aランクは下らない猛者と言っていたのは貴様ではないか!」
「現在ナーラック領地には人化した魔物がうろついているようでございます。鼻が利くようで、近づくことすら今は出来ないとのこと。」
「希少なテイマーが何でクソド田舎に居るんだ! 地獄かその地は! ふざけてるのか!?」
怒り狂うが、ある意味真っ当な意見を言う老人。
「しかしやはり第一部隊の持ち帰った遺物からは間違いないかと。少し派手に動きすぎたのが原因かもしれません。あの地は立ち入り禁止区域とのこと。人の出入りが少しでもあれば目立つ様子です。」
「クソド田舎のローカルルールなんぞ知るか。これだから田舎はイヤなんだ‥‥。試料は足りるのか?」
「やや不足ではありますが時間がかかれば埋めることは可能とは聞いております。それがいつまでかかるかはわからないとのことですが。」
「何れにしてもアタリか。それで急に警戒レベルをあげたということか‥‥。ならば向こうも同じ研究をしている可能性があるな。」
単にたまたまハルカが居るだけの話ではあったのだが。
たまたまアステアラカ最強伝説がド田舎でスローライフしているとは欠片も思わない面々であった。
「ならば猶予はないな。急がせよ。多少の被害はやむを得ぬ。時間がないのだ。これは救世のための戦いだ。」
「はっ。」
そして此方は例の小国のクソド田舎の立ち入り禁止区域。
「ふわあああ。すげぇよく寝た。むしろ体調がいいくらいだぜ。」
ハノイ様は朝日を眺めながら朝の体操をされております。
「たまにはこういうのんびりもいいな。最近なんでか殺伐とした貴族社会に放り込まれてたからなぁ‥‥。」
ほろりと頬を伝うのは汗か涙か。
「しばらくはのんびり暮らそう。そうしよう。」
「朝からフラグ量産するの辞めてくださいよ。」
レンツ様は嫌そうにされております。
「バカを言うな。言おうが言うまいがどうせ何か起こるんだ。言っておいたほうが心の健康に良い。」
「そういうものでございましょうか。」
「うむ。ジンクスなんぞクソ食らえだ。」
後ろの方でヒソヒソされるのはハルカ様、エシオン様、アイオイ様
「かなり疲れてるよねー。」
「大半お主らのせいではないのか?」
「まあヴィルさん関係で正気を保つのってなかなか難しいわよね。」
「どちらかと申しますと私は被害者なきがするのですが‥‥。」
「加害とか被害というか災害だよね。台風みたいな。」
「まあ干ばつのときは有り難いから良し悪しかなぁ。」
「判断の困るたとえでございますわね。」
そんなこんなで少し進んだ先で馬車を川沿いに繋ぎ、数日分の食料を置いて、徒歩でこれから出発で御座います。
「でっかい盆地みたいになってるねこれ。」
レンツ様は遠くを見られております。
「うーん、私のワンダフル視力でもこの先は不毛の地しかなさそうだねぇ。中央にむけて川が何本かあるけど池は無さそうだから途中で乾いてるのかも? 流砂とかあるかもだから注意していこう。」
ハルカ様はそう言って念のためにとロープを渡されます。
「最初はぼちぼち急だから落ちないようにお互い結んどこう。」
「手際が良いな。」
エシオン様は感心されております。
「これ出来ないと死ぬ環境で鍛えられてたからねぇ‥‥。」
死んだ目をされるハルカ様。
エシオン様はコメントに苦慮されてモゴモゴされております。
「さて、下りだから体力そんな使わないけど膝と落石に注意しておりるよー。」
「「おー。」」
「うーん、見渡す限り不毛の地って感じだねぇ‥‥。」
ハルカ様は周りを見ながらひょいひょいと下りていかれます。
地崩れしないことを確認してからそのあと我々が続くというような感じになっております。
なお、この中で一番普通?のハノイ様は杖を突きながら下りていくという形でございます。
アイオイ様もハルカ様に負けず劣らずひょいひょいと下りられており、中々の身のこなしでございます。
「なんかアイオイ様、すごい動き良くなってない?」
レンツ様がエシオン様にささやかれます。
「いや、私は右手が吹っ飛ばされて、そこが生えただろう? かなり前より強力になっててな。アイオイ様も恐らく足が強化されているのだろう。レンツはどうだ?」
「うーん、大半内臓だからよくわからないけど、全体的に底上げされてる感じはあるね。二人と違ってなくなってる組織って無いから若干違うのかも。」
「ふうむ。不思議な感じだな。あとは元々アイオイ様は動きがよいぞ。以前の状態でも全速力だと私だと追いつけなかった。」
「そういやそんな感じだったね。」
もはや遥か昔な気がするなぁとつぶやかれております。
「あー、右前3km先にウルフ数匹。うーん、通常個体かな。アステアラカのウェアウルフと比べたらザコザコだね。」
ハルカ様は目を細めて遠くを見ていらっしゃいます。
「近づいてきそうなのか?」
ハノイ様はぜーはー言いながら尋ねられます。
「いやー、逃げて行ったね。ってことは多少野生生物はいるのかな。」
「普通の野生生物か。魔獣は居なさそう?」
「うーん、レンツ君も何となくわかると思うけど、中心にいくにつれて魔力濃度がさらに落ちてるから、魔獣は居ないんじゃないかなー。」
「中央では魔力を減らす何かがあるということか?」
ハノイ様はびっくりされております。
「かもかも。エプラスの目的がそれかもね。」
「うーむ、ということは世界的な魔力上昇の解決のカギを探している良い国‥‥? いや、そもそもなんでうちの領にそんなのがあるって知ってるんだ??」
ハノイ様は首をひねられます。
「そういえば、祠が残存していたころの資料とかあったのでしょうか?」
「あるっちゃあったんだが、半分殴り書きみたいな感じでよくわからないんだよな。前に言ったとおりに帰らずの祠って感じだったな。祠が吹っ飛ぶ前に出会った変なジジイの言うとおりにしたら宝が見つかって、それを献上したら男爵位をもらったみたいな、まあ、おとぎ話っぽい感じの話だな。」
「まあ、貴族の初代の話は盛られることが多いから‥‥。」
エシオン様は渋い顔をされております。
「よくある物語っちゃ物語ですねー。」
ハルカ様は興味を早々になくして周りを警戒されております。
「まあ、経緯はどうか知らんが、宝を見つけて男爵になったのはマジみたいなので、そこから話が広がったんだろう。」
「ふうむ。つまりまだ宝が眠っている可能性があると‥‥。」
「!?」
はっとハルカ様が目を見開かれます。
「よし、気合入れて怪しいところさがそ!」
「現金だなぁ。」




