2_21 悪役令嬢とイツメン
そんなこんなでナーラックにやってまいりました。
グランヴィディアではこれ以上情報収集は難しそうという判断でございます。
ただ1つだけ不思議なことがございました。
「アイオイ。お主一緒にナーラックまで送って差し上げよ。」
「えぇ!?」
メトスレ様はアイオイ様に仰いました。
いつも通りの無茶ぶりにビックリされるアイオイ様。
「いや、此方の魔獣被害もまあひと段落しましたが‥‥。」
「うむ。お主らの働きでここら辺は当分安全じゃろう。というか仕事し過ぎで、デフォルトの防御を担う者らがちょっと慢心しているので、お主らが居ない間に鍛えなおそうかと思ってのぅ。」
「あぁー。」
アステアラカに行く前とは段違いに強力になった浄化の力と、エシオンの防御で今まで悩んでいたしつこい魔獣達が居なくなったとのことでございました。ただ、それと引き換えに自分らの存在意義が薄れて腐る人間が居るとのことでございました。
「結局だれか1人で回るシステムなんて不健全なんじゃよ。わしはあまりそういうのは好まんな。」
「まあ、最近休暇も取ってなかったので良いんですが、エシオン様は‥‥。」
アイオイ様は護衛のエシオン様を見上げる。
「私も丁度良いですね。あまり武勲を立てすぎると継承問題でややこしくなるもので。」
「ふむ、決まりじゃな。ナーラックの皆も良いか?」
「モチロンデストモー。」
ハノイ様は声が裏返ってらっしゃいました。
「いやまあ実際ありがたいよ。なんか変な呪いがあっても聖女の力があれば弾き返せるらしいし。エシオン様がおられるなら下手な国外のアホもちょっかいはかけてこないだろうしねぇ。」
白目をむいているテレジア様に説明するハノイ様。
「最近私、自分が男爵領なの忘れそうだわ。社交界で生きて行けるかしら。」
「俺もだ。なるべく影を薄く平穏に生きていこう。」
二人でうんうん頷いていらっしゃいます。
「まあ、夢の話はそれくらいにして現実的な話をしましょう。」
レンツ様がぶった切られます。
「ちょっとくらい夢を見させてくれよ。俺自体は魔力もない普通の平民上がりの貴族なんだからさぁ。」
「ハイハイ。取りあえず今執事長がアイオイ様とエシオン様の相手をしている間に方針を決めますよ。どこまで開示するかどうかという点です。」
「と申しますと?」
「メトスレ様の雰囲気を見る限り、あまりナーラックの祠は大っぴらにするものでは無さそうです。一応あの二人はセントロメアとアステアラカの籍です。エシオン様はともかく、アイオイ様は一応国防の話になるのでは?」
「今更感が強すぎて何も思ってなかったが、逆に言うとエシオン様が居る時点でセントロメアの許可が取れているという判断に出来るんじゃないか?」
「まあ、それをエシオン様が気づいてるかどうかですが。まあ、後で聞いてみましょうか。ちなみに不審者って最近見かけるの?」
上を見上げると、天窓付近にはりついているハルカ様が見えます。
「ハイハーイ。最近みないねー。2~3人コヅいたからかな。」
「いつの間に‥‥!?」
ハノイ様は驚いていらっしゃいます。
「口を割らそうと思ったんですけど、大声で騒がれちゃって。ほら、ナーラックって平和だからみんなビックリしちゃって。その間に逃げられちゃいました。」
「そうか。」
ハノイ様はふうむと悩まれています。
じっとハルカ様を見ると、軽くウインクをして口に人差し指を当てておられます。
つまりはそういうことなのでしょう。
「エプラスに繋がる証拠はありました?」
「残念ながら、欠片1つ無かったね。なかなか玄人だね。」
「なるほど。」
「ただ、幾つか機械の欠片みたいなの持ってたよ。テレジア様にはもう渡してあるけど。」
「ああ、あのなにかよくわからない金属と水晶みたいなやつね。一応解析に回してるけどさっぱりって今のところ言われてるわ。」
「だが、何か本当にあったのか‥‥?」
ハノイ様は首をひねられます。
「元々の手持ちなのか拾ったものかはわからないけどねー。」
「取りあえずは準備をして明日祠まで行くか。盆地なので行きは楽だが、帰りはぼちぼちしんどいから余裕を見た予定で行こう。」
「往復どの程度でございましょうか?」
「徒歩になるからなぁ。これが昔の地図なんだけど、馬車で行けるところまで行って、多分往復3~4日位かなぁ。」
ハノイ様は地図を見せてくださいます。
山脈のど真ん中にクレーターが出来ていて、∮のような感じになっております。
「奥の方は比較的急斜面らしいので、登山に近い準備が居ると思う。」
「私が気が付いたときは普通の林と申しますか、避暑地のような感じでございました。」
懐かしい思い出でございます。
「小川もございましたし、比較的長閑な印象でございました。」
「なるほど。まあ、そこまで気負わずに行こう。最近は別に何もないんだし。」
「ハノイ様、それってフラグー。」
ハルカ様が嫌そうな顔をされております。
「良いんだよ。どうせ何か起こるんだから。」




