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2_21 悪役令嬢達とメトスレの思惑1

「ほっほっほ。お嬢ちゃんやるのう。」

「ぬううう!」

「ほれほれ、甘い甘い。」

ズガンボガンと大地を揺らして遊んで?おられるのはナーラックの至宝リア様と、やや胡散臭い大司教メトスレ様でございます。


現在ナーラックの面々は事後報告も兼ねてセントロメアの方々とはお別れしてグランヴィディアに立ち寄っております。テレジア様とハルカ様は流石に領地をそこまで空けておけないということで一足先に涙の帰国となりました。

現在リア様はフルパワーで力を制御する方法を学んでいるところでございます。


というのも元々、メトスレ様が最近運動不足だからあそんでやろうとの申し出で、レンツ様やエシオン・ドラッド・セントロメア様などが転がされて死屍累々になっておられました。そこに参加したがっておられたのがリア様でございます。


「流石に老獪だねぇ。出力自体はそんなにないのに当たりゃしない。」

レンツ様は倒れながらそう漏らされます。

リア様の掠っただけでちぎれ飛びそうな勢いの攻撃を安々と捌いております。

「ほい上。」

「え?」

「うそ、足じゃよ。」

視線を上に上げた瞬間、足をかけて転ばされて悶えるリア様。んんんおかわゆい。

「あー! おじいさん凄いね! 全然当たらない!」

元王族をおじいさんよばわりしている娘に正気が保てなくなってそうなハノイ様でございます。

リア様はふだんとても礼儀正しいのですが、どうしても体を動かすと野生といいますか、本能が表に出てしまうようでございます。

「ほっほっほ。当たったら死にそうじゃからのう。しかしフェイント全部かかっておったぞ。」

「うううくやしい。」

「魔力で楽しようとするからじゃな。普段は99%くらいで抑えておくほうが良かろう。」

「うーん。」

リア様はカチカチと魔力を抑えるスイッチをいじられます。

「よし! もう一本!」

「げんきじゃのー。」

魔力を抑えた状態で組手をして、動きを覚えようとされております。


「あの子何者なの?」

アイオイ様が半目でこちらを見てこられます。

「私の宝でございましょうか。」

「うちの娘な。一地方領主の普通の娘だ。」

ハノイ様はそうボソボソつぶやかれます。

「なんか勇者に近い力持ってるように見えるんだけど。キラキラ光ってなかった?」

アイオイ様が目を細めてリア様を眺めていらっしゃいます。

この前の魔獣ワンパン事件の時もそうですが、リア様の攻撃は普通みんなの見えないキラキラが出ているようでございます。となると聖女に属した力でございましょうか。

「私の能力を下地にしているからで御座いましょうか。」

「かも。また最終兵器みたいなの作り出して‥‥。量産できないよね? 私もなれるまでなかなか大変だったからねぇ。」

「流石に量産は不可能かと。そういえば皆様お体は大丈夫ですか? レンツ様はすこぶる元気のようでございますが。」

「おかげさまでね。」

レンツ様は首をすくめて苦笑されます。

エシオン様はまだうつ伏せでピクリとも動かれていません。なかなかしごかれておりましたのでその影響でございましょうか。息はしているようでございます。

「私もいまはなんともないよ。むしろ力が上がりすぎて微調整に悩んでいるところ。」

ほい、っと、アイオイ様が癒しをかけると、がばっとエシオン様が目を覚まされます。

「おおっ!? いつの間に意識が‥‥。」

「綺麗な回し蹴りがはいってたからねぇ。」

レンツ様はポンポンと肩をたたかれます。

「ぬう、叔父上は人間をやめているのではないか‥‥??」

「うわああ!!」

そこにリア様がすっとんで来られました。

「よいしょ。」

エシオン様はリア様をだっこされます。

「お帰り。」

リア様を撫でてハノイ様に渡されます。

「うーん、全然勝てなかった。」

「むしろ勝てると思ってるのがすごいよ。」

ハノイ様はリアさまのホコリをパンパンと払って髪の毛を直されます。

「おお、お主ら元気そうじゃな。」

「癒しで元気になっただけですよ。綺麗に意識すっ飛んでました。」

「後半戦やるかの?」

「いえ、もう日も遅いですからこれくらいにしておきましょう。」

はんぶんこっくりこっくりと寝かけているリア様に視線を送るエシオン様

「そうじゃの。湯あみの用意をしておるから、さっぱりして夕食にしようか。」

ハノイ様はリア様を使用人に預けて送られます。

「何から何まで、ご厚意に感謝いたします。」

ハノイ様はメトスレ様に頭を下げられます。

「なあに、身内が世話になった延長上の話じゃ。きにせんでいいぞ。」

バシンとエシオン様のお尻を叩かれるメトスレ様。

「イタッ!」

「それで、お主ら娘を見せに来ただけではあるまい。」

ふっと真面目な顔をされます。

「実はエプラスについて教えていただきたいのですが。メトスレ様は古い知識にも堪能と聞いております。」

ハノイ様の

「エプラス皇国か。」

ふうむ、と顎をなでて考えられておられます。

「何が知りたい?」

「今のところ知っているのは、三大大国の一つ、教皇が国王のような存在、比較的他の国とはかかわりが薄い、始原の聖女と呼ばれる人間が居た、ということくらいでしょうか。」

アステアラカで聞いた話を思い出しながら伝えます。

「ふむ、大体そんな感じじゃな。ただわしも何が知りたいかわからんと答えようがないぞ?」

「最近魔道具や奴隷で動きがいつもより激しいという噂を耳にしておりますが、エプラスにおける魔道具や奴隷の扱いとはどういったものなのでしょうか?」

「ううむ、アステアラカ圏では奴隷っぽいものは存在せんからのう。二等市民が関の山といたところか。 魔道具は創造神様の英知によってもたらされたものということで国を挙げて研究されておるな。創造神様の御心を深く理解することにつながるそうじゃ。奴隷にかんしては、エプラスに生まれた者以外で、神職についていないその他全員は奴隷じゃな。一定の貢献があれば神官扱いになって平民となる。まあ、此方で言う一等市民みたいなもんじゃな。ただ向こうはもうすこし奴隷の扱いが、まあ、あー、あまり人間とは思ってない感じではあるが‥‥。」

「ふうむ。なかなか区別がはっきりされているのですね。」

「やんわりいうとそういうことじゃな。」

「ちなみになのですが、ナーラックとの関わりって何かありますか?」

ハノイ様は一応尋ねられます。

どうやらエプラスの者が出入りしているっぽいので気になっているのでございましょう。

「無い。」

「ふうむ、そうですか。祠に興味がある人間が出入りしているようでして。」

「ああ。例の。何ももう無かろう。」

「そうですね。」

ハノイ様はうんうんと頷いていらっしゃいます。

「さて、夏とはいえ夜は冷える。皆汗を流して飯にしよう。わしもうおなかペコペコじゃ。」

メトスレ様はスキップしながら湯あみに消えていかれました。

「相変わらずとらえどころのない叔父上だ。」

はぁーとため息をつくエシオン様。

「自由よねぇ。うらやましいわ。」

アイオイ様も首をすくめられております。

「ハノイ様? どうしました?」

レンツ様がハノイ様に話しかけられます。

ハノイ様は眉間にしわを寄せてへの字口です。

「メトスレ様は何かを隠している。そして何か知っているな。」

「え?」

「祠跡地は立ち入り禁止のはずだ。部外者が何もないということを何故知っている。」

「まあ、百年以上前に吹っ飛んでいると聞いているならそう思う可能性もあるのではないか? それにどこかのタイミングで調査はしていよう。その資料を知っていたのかもしれぬ。」

エシオン様は疑問顔でございます。

「ただまあ、まあウソをついてはいらっしゃるでしょうね。」

「え、ヴィルさんもそう思うの?」

「あからさまでございます。知らない方がいいと判断してあえて話を切るというポーズをされているのか、思った以上に動揺されていたかのどちらかでございましょう。」

「ううむ。」

「ナーラックは何か不思議な土地なのかも致しませんわね。私が此方に来たのもナーラックでございますので‥‥。」

「そういわれたらまあそうか。深く考えたことはなかったが‥‥。まさかヴィルのような存在を呼ぼうとしている‥‥!?」

ハノイ様の言葉に全員ざわつかれます。

「転移装置等があるかもしれんということか?」

「どうでございましょう。」

転移というよりは転生ではあるのですが。

「あのぉ、ちなみになんだけどぉ。」

おずおずアイオイ様が尋ねてこられます。

「ヴィルさんって、母国で何番目に強い感じなの‥‥?」

全員の視線を感じますわね。

「攻撃魔法が当時は使えませんでしたので、そんなに強くはございませんでしたが、組み手含めて怪我をした記憶はございませんわね。魔力量でいうなら、恐らく2番目でございましょうか。」

「まだ上が居るの‥‥!?」

ハノイ様は顎が外れそうになっておられます。

「王女様は私より魔力量も強く、使える魔法も歴代最多最強と言われている方でございましたわね。」

「えぇ‥‥。メトスレ様より強い王女様なの?」

アイオイ様は渋い顔をされております。

「目が合った時にはチリになっている可能性がございますわね。」

「そんなの召喚されたら世界が終わるわ。」

ヒイイと悲鳴を上げられます。

「マジで1回祠調査した方が良さそうだなぁ。大丈夫かなぁ、近寄った人間が帰ってこないって言われてたんだけど。」

「さようでございますわね。まあ、私はそちらから参りましたので、恐らく正気を失うことはないかと。」

「調査する気満々だね。」

「ルーツを見るのは大事かと思われます。」

「祠生まれだっけ。」


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