2_19 悪役令嬢 お子様の進学先のお話
「は? どういうことだ!?」
ウロウ・リーズワーズ子爵の屋敷でレムは叫ぶ。
「わからん。これはライネイ・フロール侯爵から直接言われたことだ。」
「マジか。」
レムは頭を抱える。
「ベルクートアブルの関係者が外に存在することは絶対にない。どこで名前を知ったのか知らないが二度と口に出すな。危険だからこれは預かっておく。の3点セットだったそうだぞ。手紙は目の前で燃やされたそうだ。」
「無茶苦茶切り捨てられてるじゃねえか。おかしくないか?」
「ああ。おかしい。強硬すぎる。」
「ああー、ヴィルヘルミーナ様になんて言えば‥‥。」
レムは頭を抱えてうずくまる。
「其の儘伝えるしかあるまい。いずれにしても伝えることがあるだろう。」
「ああ、エプラスの事か。あれどういうことなんだよ。」
「鎖国か。急な話だが‥‥。わからん。何かの実験をする予定みたいな噂とはライネイ様からは聞いてはいるが‥‥。ライネイ様も困惑されていたぞ。」
「見たことないが、フェンガルの人って感じ悪そうだな。」
「口が裂けても言うなよ。マジで殺されるぞ。」
「わーってるよ。反省してるからな。」
「ほんとかよ‥‥。」
ウロウは胡散臭そうにレムを見る。
「だが、そのエプラスってあれだろ、アステアラカ王がいま亡命しているかもしれないってさっき情報が届いたぞ。」
「マジか? え、どういうことなんだ?」
レムは首をひねる。
「わからんが、3大大国で安定していたが‥‥、その安定を壊すつもりなのかもしれん。」
「ウロウ。それはさすがに‥‥、だが何のために?」
「何も思いつかない。またライネイ様に相談してみよう。ライネイ様もお忙しいからあまりこういうことで煩わせるわけにもいかないが‥‥。」
「まあ、究極言うと人間の話だからなぁ‥‥。」
どうも危機感が薄いのはやむを得ない。以前の自分でもそう思っていただろうとレムは思っている。
現在ヴィルヘルミーナ様が居る時点で超危険区域となっている。
魔力もそうだが、レムの第六感がそれどころではない何かを感じていた。
「実際フェンガルの方って見たことあるのか?」
「一度だけライネイ様の後ろの方から見たことはある。白い羽が生えている以外は俺らとそんなに変わらないぞ。ただ力は此方に来られたフェンガルの方の時点でライネイ様の10倍は魔力があった。」
「ライネイ様って知らないんだけど、どんな強さ?」
「お前の10倍は強いぞ。」
「ならヴィルヘルミーナ様とどっちが強いかはわからんな‥‥。」
「そんなにか。」
「そんなにだ。お前、ただの魔力を乗せた威圧だけで動けなくなるのにどれだけ魔力の差が必要だと思ってるんだよ。」
「シーリカも一目で勝てないって分かったって言ってたからなぁ。」
「あの狂犬が手を出さずに敗北宣言したのか。まあ、そりゃそうか。」
「そこまで来ると一度見てみたい気もあるが、君子危うきにというやつだな。」
「まあなあ。ユーズゥもしばらく挙動不審だったからな。」
「半殺しにされる目にあったらだれでもそうなるよ。」
一方そのころアステアラカにて
「はあー。疲れた。」
お子様たちはぐったりされております。
「子供の相手は疲れるよ‥‥。」
ヤーズは髪の毛をかきあげて、フゥとため息をつかれております。
ご本人もお子様なのですがというツッコミは居れるべきか悩ましいところですわね。
「スイとバイクはカルバー様に絡まれてて大変だったんだよ。」
レンツ様は首をすくめてため息をつかれます。
それを聞いた保護者が顔面蒼白になっておられます。
「あれはチゾノ君への当てつけ半分だな。」
「お子様の世界もいろいろでございますわね。」
複雑な何角関係というやつでございましょうか。
「とはいえ、ヴィルさんに鍛えらえてた人外4人組に勝てるわけもなく、まあ、手加減はしてくれてたみたいだけれど、カルバー様は歯ぎしりしてたね。」
「「ヒィィ」」
「まあ、お前ら落ち着け。」
セントロメアの震える保護者にハノイ様が落ち着いて声をかけられます。
「覆水盆に返らずだ。」
「何の慰めにもならんぞ!?」
ヒマキ・マロカシュ様は悲鳴を上げる。
「まあ、当分関わることもないだろうし、学園に入れば保護者の目もいずれにしても届かん。最悪転校すればいい。ソレイユからならどこへでも行けるさ。」
「お主は楽観的過ぎんか?」
「そうしないと胃に穴が開く。」
「‥‥そう‥‥か‥‥。」
ヒマキ様は何とも言えない顔でハノイ様を見ていらっしゃいました。
「カルネイル様からも、仲良くしてやってくれと言われているが、貴族社会的に地方男爵が大国家王子・侯爵と仲良くやっても軋轢しか無さそうだからなぁ、悩ましいところだ。」
ハノイ様は悩んでいらっしゃいます。
「あ、でしたらば留学などいかがでしょうか?」
「は?」
シーリカ様のお言葉に全員絶句されております。
「え? どこへ?」
「ゲーキでございますが。今までも鍛錬のために此方の人員を本国で鍛えることはよくございましたので、留学という形にするのも恐らく可能かと。」
ニコリと笑うシーリカ様と、完全にフリーズするその他の面々。
「皆様もこちらの貴族との付き合いもありますでしょうし、ほとぼりが冷める間の数年でございます。言葉を選ばずに申しますと、ソレイユよりはランクが高いですよ。」
「チョットカンガエサセテネー‥‥。」
ハノイ様はオーバーフローされてしまったようでございます。
「実際私も実家に帰れるならベルクートアブルの学園をご紹介できるのですが。」
「うちの子を魔王かなんかにするつもりなの?」
「まあ、セントロメアで暮らすのに不要すぎるスキルな気がするが、知識はあって損はないか‥‥。」
ナルクル・テューダーローズ様は悩まれております。
「案外悪くない話に聞こえてしまうのは俺が疲れ切っているせいなのか?」
ハノイ様は悩まれております。
「まあ、もう少し時間はございます。ご本人ら踏まえて相談いたしましょう。」
「いきたい!!!!!」
リア様は目玉キラッキラでございました。
「なかなか行けないんでしょ!? しかもそっちの方が色々あるんでしょ!?}
「おおぅ!?」
リア様の思った以上の食いつきにハノイはビックリする。
「なんでそんなに?」
「え、だって見てる限りソレイユ学園に行っても‥‥。」
「えぇ‥‥。」
言葉を濁されておりますが、少しレベルが低いということでございましょうか。
確かに絶対合格を取るために他のお子様も含めてゴリゴリにお勉強致しましたが、あれと比較するとスローテンポに感じるのもやむなしではございましょうか‥‥。
「他のみんなはどう?」
ナルクル様は残りのお子様3人に聞いてみます。
「うーん、正直アステアラカもゲーキもあんまり差が分からないかも。」
バイク様は首をひねられています。
「将来的に領地を守るのに力が無くて悔しい思いはしたくないから私は行きたいです。」
スイ様ははまっすぐジル様の顔をみてそう仰います。
「スイ‥‥。」
ジル様はうるうるされておりますね。
「ヤーズ。お前はどうする?」
「みんなが行くなら行こうかな。私はまだコレといった自分の未来像が無くて。」
ヒマキ様はそれをきいてため息をつかれます。
ヤーズ様はなんでもそつなくこなされますが、逆にコレといった興味がないのが悩みどころとのことでした。
「とりあえず入学の資料をまた手に入れておきますね。」
シーリカ様はニコニコでございます。子供が好きなのか、強い子が生まれるのが好きなのか。
恐らく両方でございましょうね。
「私もこちらがひと段落するとゲーキに戻る予定でございます。また向こうでもお話しする機会があるでしょう。何かあればお申しつけ下さい。」
「なんかもう決まってない?」




